天井が高く広大な室内空間と、両側スライドドアによる利便性を軽自動車という限られたサイズで実現。
スーパーハイトワゴンは、ダウンサイジングの波やファーストカー需要の高まりとともにグングン市場を拡大し、気がつけば軽自動車の中で最も売れるカテゴリーに成長を遂げた。
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2017年9月の登場以来、ずっと販売台数首位をゆく王者・ホンダ N-BOX。3タイプのキャラクターとコスパの良さで人気上昇中のスズキ スペーシア。
2019年度中にフルモデルチェンジが噂されるデイズルークスなど、スーパーハイトワゴンクラスは超激戦が続いている。
そんななか、そもそも2003年の初代誕生とともにこのカテゴリーを開拓した先駆者であり、ここまで拡大させた立役者でもあるタントが、ついにフルモデルチェンジ。
王者N-BOXからの首位奪還を目指し、世界初や軽初の技術をテンコ盛りにした贅沢すぎる内容での4代目登場となった。
果たして、絶対王者にないタントの強みはあるのか? そして、新型タントは家族が安心して使えるファミリーカーなのか? 自動車ジャーナリスト、まるも亜希子氏が子育てママ目線で解説!
文:まるも亜希子
写真:奥隅圭之
N-BOXやスペーシアにはないタントの「強み」は?
ピラーレスで大開口を実現する「ミラクルオープンドア」。従来型を継承しつつ、新型では運転席のロングスライド機構を追加し、室内での利便性をさらに向上させた
大きな見どころはまず、タントならではの強みを活かした、飛躍的な使い勝手の向上だ。
2007年登場の2代目から採用している、助手席側のピラーをスライドドア内蔵とした「ミラクルオープンドア」を継承しつつ、運転席が最大54cm、助手席が38cmと大きくスライドする世界初の運転席ロングスライド機構を採用した「ミラクルウォークスルーパッケージ」が目玉となる。
実際に使ってみると、インパネにある運転席スライドボタンを押してロックを解除すると、ガーッとシートが後方に下がり、後席にぴったりつく位置まで移動できることにビックリ。
同時に助手席を最前端にしておけば、余裕のあるウォークスルー動線が生まれ、これならミラクルオープンドアから子供と一緒に乗り込んで、子供を座らせたらそのまま運転席に移動するのもスムーズだ。
【画像ギャラリー】新型タント&タントカスタムの内外装をチェック
後席と寄り添うような位置に座れるので、荷物を取ったり子供のお世話もしやすくてかなり便利。
ミラクルオープンドアでベビーカーを畳まずにそのまま乗せられるのがタントの強みだが、これがあれば運転席に座ったまま子供のお世話ができ、急な雨や暑い日の待ち時間など、車内で過ごす時間がもっと快適になると感じた。
運転席ロングスライドは、シフトレバーが「P」に入っている状態でなくては操作できないようになっており、安全面でも心配無用。
さらに、パワースライドドアのロック待ちをなくす「タッチ&ゴーロック機能」や、近づくだけでドアが開く「ウェルカムオープンスライド機能」など、上級ミニバン並みの機能も装備する。
こうした使い勝手はピラーのあるN-BOX、スペーシアにはどうやっても真似できない、新型タントだけの強みと言える。
見た目は先代踏襲! 新型タントの中身はどれほど変わった?
写真はカスタムの走行シーン。ムーヴではなくタントに、17年ぶりとなる新プラットフォームを初採用。ここからもタントの重要度が見てとれる
そして、もうひとつ大きな見どころとして、外から見ただけではわからないのが基本性能の大幅な進化だ。
新型タントはダイハツの新時代のクルマづくり「DNGA」第一弾として、アンダーボディ、足まわり、ユニット等のプラットフォーム部分を一新している。
なんと17年ぶりとなった新プラットフォームは、サスペンションアレンジを最優先で設計し、足まわり部品の配置や角度などをゼロから再構築したことで、ボディ骨格の最適配置、衝突安全性、NV(騒音・振動)性能、ボディ強度までを飛躍的に向上。
イメージ通りの車両の動きとフラットで心地よい乗り心地を両立したほか、ブレーキブースターの最適チューニングにより、女性や高齢者など踏力が少なくても安心して操作できるブレーキ性能にもこだわった。
パワートレーンでは、大幅改良を施したエンジンに日本初となる複数回点火(マルチスパーク)を採用し、トランスミッションには世界初となるスプリットギアを用いた新技術による新CVT、「D-CVT」を採用。
これによって伝達効率が約8%向上し、自然吸気エンジンで加速度が約15%アップ。ターボエンジンでは全回転域でのトルクアップが実現している。
試乗してみると、発進から滑らかでリニアな加速フィールはもちろんのこと、とくに感心したのがブレーキング時の姿勢変化が少なく安心して減速できるところ。
カーブでのシッカリとした安定感と、一筆書きに弧を描くようなしなやかな足まわりも気持ちよく、これが自然吸気とターボの違い、14インチと15インチのタイヤサイズの違いに関わらず、どのグレードでも同じように感じられたのが素晴らしい。
また、運転席に座ると、56mmにまで細くしたAピラーや、上下の視野角を10.2°と大きくとったフロントガラス、見やすさにこだわったメーターなどによって、従来よりさらに視界が広がりリラックス感が高まったと感じる。
新型タントは安心・安全でもN-BOXに勝るのか
新型タントのリアスタイル。派手さはないが、操縦安定性含めて基本性能を磨き、背が高い車のネックになりがちなコーナーでの安定感も向上
N-BOXのように乗用車感覚の豪華さや、スペーシアの旅行トランクをモチーフとした遊び心のようなデザインはないが、新型タントには初心者から高齢ドライバーまで、誰もが安心して運転できる空間と要素が備わっているのが強みだ。
そして、安全性や運転支援技術に関しても、オプションではあるが全車速で先行車に追従するACC(アダプティブクルーズコントロール)を、スーパーハイトワゴンとして初搭載。
また、「次世代スマートアシスト」と「スマートアシストプラス」を合わせると全15機能と、この充実度は軽自動車トップとなっている。
全車速追従機能は近いうちにN-BOXも搭載すると思われるが、音声と画面ガイドで並列駐車・縦列駐車のステアリング操作をアシストする駐車支援システム、「スマートパノラマパーキングアシスト」は、本当に使える駐車支援システムが安価で欲しい、というユーザーの声に応えた新型タントならではの機能。
先進装備を搭載するばかりではなく、運転が苦手・不慣れなユーザーのことも考え、手を差し伸べる車作りはダイハツの持ち味だ。
また今回は、普通車と福祉車両の間を埋めるような、軽福祉車両をラインアップしたこともトピック。
これは乗降用グリップやオートステップなどを装着することで、要介護者が自身で乗り降りできるようになるなどの効果が実証されたという。
こうして新型タントを見てみると、想像以上に幅広いユーザーをカバーすることがわかる。
毎日の買い物や送り迎え、休日のレジャーに安心して使えるのはもちろん、小さな子供のいる子育て世代や介護世代など、よりサポートが必要な家族にとっても頼もしいパートナーになってくれると実感したのだった。
■新型 タント&ライバル車 主要諸元
■新型 タント 価格表
新型タントと、まるも亜希子氏。新型タントに関しては自身の経験から、特に子供やお年寄りに配慮した「ミラクルウォークスルーパッケージ」を高く評価
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