この記事をまとめると
■フォルクスワーゲン・ビートルの量産車としてのスタートは1945年以降
ワーゲンバスがEVになって帰ってきた! フォルクスワーゲンID.BUZZを初公開
■1978年にドイツでの生産が終了するが2003年までメキシコで生産が続けられた
■「ビートル」という正式な車名の歴史はじつは短く1998年の「ニュービートル」から
量産モデルとしての生産期間は60年弱?
フォルクスワーゲンといえば「ビートル」という可愛らしいモデルがアイコンとなっている。全長4mちょっと、全幅1.6m足らずのコンパクトなボディながら見事なパッケージで4人が座るだけのスペースを確保、さらに比較的ローコストで作れることもあって世界中でヒットした。累計生産台数は2100万台を超えるといわれ、乗用車の単一車種における最多生産モデルとなっている。
その生産スタートは1938年で、戦前のドイツで進められた国民車構想に基づいて設計された……というのは概ね事実といえるが、初期の生産というのはプロトタイプをカウントしているものであって、本格的に量産が始まったのは第二次世界大戦後の1945年以降と理解すべきだろう。
それでも1974年にフォルクスワーゲン・ゴルフ(初代)を出すまでは、長きにわたり「ビートル」が同社における主力モデルとなっていた。
基本的なメカニズムはバックボーンフレームのリヤに空冷の水平対向4気筒エンジンを積むというもの。バタバタとしたエンジンサウンドと、リヤエンジン・リヤ駆動ならではの走りやスタイルがビートルの特徴といえる。
特徴的なスタイリングのボディはセミモノコックタイプ。長い歴史の中で、電装系のグレードアップ(6Vから12V)、フロントサスペンションのストラット化、エンジンの改良などが続けられてきた。最終的にエンジンはインジェクションになるまで進化した。
インジェクションエンジンのビートルが作られていたのはメキシコだ。ドイツでの生産が1978年に終了した後もメキシコでの生産は続けられ、最終的には2003年まで作られた。
1970年代になって「ビートル」の車名が登場した
さて、このカタチを見ると、クルマ好きでなくとも「ビートルだ!」とわかるが、その名前は最初からつけられていたものではない。そもそもの車名は「Volkswagen 1200」のような排気量を示す数字がつけられていた。マニアやファンは、このビートルを「タイプ1」を呼んだりもするが、それも正式な車名かというと微妙だ。
あくまで愛称だった「ビートル」という名称が車名として使われるようになったのは1970年以降だったりする。
そんな「ビートル」のイメージを受け継いだのが1998年に登場した「ニュービートル」だ。初代ビートルよりも丸みを帯びたスタイリングは、デフォルメ感も強く、パイクカー的な商品企画ではあったが、中身はアウディと共通のFFモデルということもあって、走りのクオリティは十分以上。メキシコ工場で生産されるということもあって、しっかりと初代ビートルの歴史を受け継ぐモデルという見方もできる。現実的に”ビートル”で中古車を探そうと思うと、このニュービートル以降が無難といえるだろう。
ニュービートルをフルモデルチェンジし、初代ビートルのフォルムに近づけたのが2011年に誕生した「ザ・ビートル」だ。こちらはフォルクスワーゲン・ジェッタと共通のFF系プラットフォームが使われたこともあって、同じ時代のゴルフにも勝るハンドリングを実現するなど、スタイリングだけのクルマと判断してしまうには惜しいパフォーマンスを持っていた。気持ちよい走りの味わえるクルマだ。ただし、ボディ幅は1.8mを超え、コンパクトカーとはとても言えないサイズに成長はしていた。
また、ニュービートル、ザ・ビートルのいずれもカブリオレを設定。時代的にはハードトップを格納するタイプが流行していたが、あえて初代ビートルのカブリオレ同様に幌を畳む方式で、なおかつ格納した幌をあえて隠さないスタイルとしていたのはヘリテージを感じさせた。
そしてメキシコで作られていたザ・ビートルの生産が終了したのが2019年7月。これがビートル80年の歴史のピリオドを打ったと報道されたことで、”80年”という数字が印象づけられたが、こうして振り返ると厳密にいうとビートルの歴史は80年には達していないかもしれない。もっとも、そんな些細なことはその魅力を前にすればどうでいいことだ。
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