往年のビッグサルーンと重なるシルエット
かつてのフランスの高速道路は自由だった。スピード違反を捕まえる警察のバイク部隊もいなかった。素晴らしい自動車が誕生する環境が整っていた。
【画像】新時代シトロエン C5 XとC4 欧州で競合するスタイリッシュなワゴンと比較 全112枚
そんな土壌で生まれたのが、ビッグ・シトロエン。ドイツや英国の上級サルーンとはまったく異なるスタイリングの、エレガントなクルマだった。時速160km/h以上での走行もいとわず、ライバルよりしなやかで安定していた。
ビッグ・シトロエンの系譜は、DSからCX、XM、C6へと代を重ねてきた。60年間に渡って、独自の技術とドライブフィールを提供してくれた。だが悲しいことに、C6の後継モデルは生まれなかった。これまでに10年ほどの空白があった。
シトロエンは、拡大しない輸出市場と膨らむ開発コストに悩んでいた。減価償却の早さにも。シトロエンのマーケティング部門は、その問題を認知していた。
優れない信頼性が価値を低め、ブランドの評判も悪くした。ビッグ・シトロエンという伝統を絶やし、売れるクルマを作らざるを得なかったのだろう。
しかし、2022年に再起を果たした。新しいシトロエンC5 Xの全長は4805mmもある。5ドアのファストバック・サルーンで、滑らかなシルエットは従来のモデルと重なって見える。
現代のステーションワゴンとSUVの強みを融合させたと、シトロエンは主張する。優れた空力特性を維持し効率性を高めつつ、ゆとりある車内空間を実現させている。
入念に設定されたグレード構成と価格
C5 Xがベースとするプラットフォームは、ステランティス・グループのEMP2。新しいプジョー308も採用している、多能なものだ。
過去の開発コストへの反省を活かしてか、コンポーネントも実績があるグループ内の既存品を積極的に利用している。見た目は個性的でありながら、従来のシトロエンとは姿勢が異なる。
さらに、Dセグメント市場に受け入れられるよう、入念にグレード構成や価格が設定されている。近年はこのクラスのサルーン人気が低調で、手を引くブランドもあるけれど。
C5 Xの英国価格は、ガソリンエンジンのベーシックグレードなら2万8000ポンド(約467万円)を切る。プラグイン・ハイブリッド(PHEV)のトップグレードでも、4万ポンド(約668万円)は超えない。
さらに英国の場合は、C5 Xは完全に受注生産。過剰に市場へ投入されることはない。減価償却を早めてしまう、リース販売は検討されていないという。
トリムグレードには、センス・プラス、シャイン、シャイン・プラスという3段階が用意された。シャイン・プラスが最上級だが、どのグレードを選んでも装備は驚くほど充実しており、不満はないだろう。
インテリアはスタイリッシュに仕上がっており、製造品質も高い。ダッシュボードには、インフォテインメント用の大きなタッチモニターが据えられている。
上級グランドツアラーな雰囲気が懐かしい
パワートレインは、180psを発揮する1.6Lのガソリンターボ・エンジンに110psの駆動用モーターが組み合わされた、PHEVが一番パワフル。システム総合では225psとなり、8速ATが組み合わされ、前輪駆動のみとなる。
駆動用バッテリーの容量は12.4kWhあり、満充電なら最長59kmを駆動用モーターだけで走行可能。CO2の排出量はカタログ上では30g/kmと低く、英国では税金面でも有利だ。このほかに130psの1.2L 3気筒ターボと、180psの1.6L 4気筒ターボも存在する。
今回、英国の一般道で試乗したのはPHEV 225。ステアリングホイールを握ってみると、以前の懐かしいビッグ・シトロエンに通じる、ラグジュアリーなグランドツアラー的雰囲気を感じて、うれしくなった。
PHEVのパワートレインは基本的に上質で、静かにクルマを動かしてくれる。ほぼ無音の駆動用モーターでの走行後に内燃エンジンが始動すると、稀にその介入が気になる程度だ。
センターコンソールのスイッチを動かすと、スポーツ、ノーマル、コンフォートからドライブモードを選択できる。PHEV 225にはアダプティブダンパーが備わり、限界領域ではモードに関わらず、しっかりボディを制御してくれる。
結局、柔らかいコンフォート・モードが筆者のお気に入りだった。
しなやかな乗り心地とクルージングの快適性
公道を走っていると、ボディはひと回り小さく感じられてくる。ステアリングホイールの重み付けが程よく、レシオは適度にクイック。乗り心地はフラットで落ち着いている。ロードノイズも小さい。
アクセルペダルを踏み込めば、0-100km/h加速7.9秒という、不足ない加速力を引き出せる。最高速度は233km/h。滑らかで低いシルエットが生む、Cd値0.29という小さな空気抵抗のおかげだ。
試乗では、最も謙虚な1.2L 3気筒ターボのシャイン・プラスにも乗ってみた。パワーは控えめだが、8速ATが巧みに変速することで最大トルクを活用でき、走りに不満は感じられなかった。
シトロエン自らも、新しいC5 Xと往年のビッグサルーンとの関係性を主張する。筆者が運転した限り、その結びつきは本物といって良さそうだ。
従来のモデルと比べれは、C5 Xは一般的な内容ではある。だが、しなやかな乗り心地や長距離クルージングの快適性などには、シトロエンらしさが満ちている。Dセグメント市場に、一石を投じる新モデルであることは間違いないだろう。
シトロエンC5 X PHEV 225 シャイン・プラス(英国仕様)のスペック
英国価格:3万9960ポンド(約667万円/試乗車)
全長:4805mm
全幅:1865mm
全高:1485mm
最高速度:233km/h
0-100km/h加速:7.9秒
燃費:65.9-82.2km/L
CO2排出量:30g/km
車両重量:1826kg
パワートレイン:直列4気筒1598ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:12.4kWh
最高出力:225ps(システム総合)
最大トルク:−
ギアボックス:8速オートマティック
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