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特別の中の特別 4世代のBMW M3を振り返る  スポーツ・エボ/GT/CSL/GTS 前編

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特別の中の特別 4世代のBMW M3を振り返る  スポーツ・エボ/GT/CSL/GTS 前編

クルマ好きの心をしっかり掴んだM3

レースの参戦規定に合致させるため特別に作られる、少量のホモロゲーション・モデル。さほど規模の大きくなかった1980年代のBMWにとっては、決して小さな出費で済む仕事ではなかった。

【画像】歴代M3の特別仕様 スポーツ・エボリューション/GT/CSL/GTS 最新のM3とM4も 全78枚

もちろんそれは、車両価格へも反映はしていた。1987年当時、E30型BMW 325iスポーツの英国価格は1万6685ポンドだったが、4気筒だった最初のM3には、2万2750ポンドという値段が付けられていた。

その2年後には、左ハンドル・モデルのみの設定でM3 スポーツ・エボリューションが登場。英国価格は3万4500ポンドへ跳ね上がった。

とはいえ、初期からM3はモータースポーツで疑いようのない成功を収めてきた。ブランドの認知度を高め、量産モデルの魅力度を強め、販売を後押ししてきた。ホモロゲーション・モデルに予算を割く価値は、間違いなくあったといえる。

くさび形のシルエットを持つスーパーカーとは一味違う高性能モデルとして、クルマ好きの心をM3はしっかり掴んだ。秀でたパフォーマンスを実用的なパッケージングで実現し、他とは一線を画す仕上りといえた。

まだ誕生から日の浅かったBMWモータースポーツ社、現在のM社が、E30型の2代目3シリーズをベースに、クラスAへ準拠するレーシングカー開発に着手したのは1981年。その頃既に、スーパーカーのBMW M1とF1エンジンの開発で実績は残していた。

レースに向けて多くがサーキットへ最適化

最初のM3がお披露目されたのは、1985年のフランクフルト・モーターショー。英国や日本のディーラーへ到着したのは1987年だった。同じ年、イタリア・モンツァ・サーキットで初戦が開かれた世界ツーリングカー選手権で、レースデビューも果たしている。

初代M3では、モノコック構造とサスペンション・レイアウトは通常のE30型のものが維持されたが、多くの部品がレギュレーションの範囲内でサーキットへ最適化された。ボディパネルは、ボンネットのみが通常のクーペと同一だった。

幅の太いホイールを収めるべく、前後のフェンダーはブリスター化。トランクリッドは空力特性を改善するため、40mmも持ち上げられた。

BMWが開発したM10と呼ばれる4気筒ユニットは、シリンダーの内径、ボアを93.4mmへ広げ排気量を2.3Lに拡大。E28型M5のものから派生したツインカムヘッドが載せられ、S14ユニットへと進化した。

燃料供給は、最先端だったボッシュ・モトロニック燃料インジェクション。気筒毎にスロットルボディが組まれ、最高出力195psを発生した。ゲトラグ社製の5速MTとリアのリミテッドスリップ・デフが、そのパワーを受け止めた。

クラスAの規定に準拠し、5000台のM3を販売したBMWは、500台の特別モデルの製作が可能になった。そこでレースを有利に運ぶべく、1987年にM3 エボリューションが登場。エンジンへ手が加えられ、215psへパワーアップを果たした。

シエラや190へ挑むため究極のE30型

翌1988年には、エボリューションIIが続いた。最高出力は220psに向上し、サスペンションとブレーキを改良。合計10kgの軽量化も図られていた。

これらの進化は、すべて熾烈を極めるサーキットでの競争に勝つため。フォード・シエラとメルセデス・ベンツ190クラスによるライバル関係を、制することが目的だった。

ちなみにE30型M3は、ラリーでも活躍。フランス・コルシカ島で開かれるツール・ド・コルスでは、1987年に優勝している。

そして1989年、M3 スポーツ・エボリューションが発売される。ターボで武装したシエラ RSコスワースと、過激なエアロボディの190 E2.5-16へ挑むために生まれた、BMWモータースポーツ社による究極のE30型といえる。

自然吸気の4気筒エンジンはさらにボアアップされ、ストロークも延ばされ、165ccを追加。S14B25に進化し、最高出力は238ps/7000rpmへ増強された。最大トルクも、24.4kg-m/4750rpmを獲得している。

吸気系統とカムシャフトは新設計となり、熱効率に優れるナトリウム封入のエグゾースト・バルブを採用。ピストンの激しい上下動に対応するため、潤滑系も強化されていた。

マニアのなかには、2.3Lの方が甘美に回ると評する人もいる。それは確かかもしれないが、2.5Lのスポーツ・エボリューションをベストBMWの1台として讃えるのに、まったく不足はない。今回用意した4台では、真っ赤なクルマがそれだ。

四角い見た目とは裏腹の鋭い加速

ややぼやけたエンジン・サウンドは、回転数の上昇とともに輝き出す。ステアリングは、現代基準でいえばややスロー。車高はエボリューションIIより10mm低いものの、荒れた公道でも驚くほど柔軟にいなしてくれる。

5速MTのシフトレバーも、ステアリングと合致するようにストロークは長め。アクセルペダルとブレーキペダルの反応は、レーザー級に鋭いわけではない。適度になだめやすい特性といえる。

ドアを開くと、大きくえぐられたバケットシートが2脚。このクルマの場合、ACシュニッツァー社製のスエード巻ステアリングホイールがセットになっている。角度を調整できるフロントとリアのスポイラーの雰囲気と、よく合っている。

アクセルペダルを傾けると、E30の小さく四角い見た目とは裏腹に、勢いよくスピードが高まる。5000rpmから7000rpmにかけては特に、エンジンが爽快に反応する。3速から2速へ、ブリッピングしながらシフトダウン。滑らかに、勢いよく吹け上がる。

ステアリングホイールやシフトレバーの感触も、速度が高まるにつれ直感的なものに変わっていく。タイヤ幅は225と控えめながら、車重1200kgと軽いボディをしっかり受け止め、グリップ力は期待以上に優れる。

調整式スポイラーの効果を試すことは、公道では難しい。ダウンフォースが生む過激な特性がないかわりに、限界領域には迫りやすい。

この続きは中編にて。

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