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なぜダイハツは軽商用車「ハイゼット&アトレー」に力を入れる?「軽販売1位」を守りたい事情とは

掲載 24
なぜダイハツは軽商用車「ハイゼット&アトレー」に力を入れる?「軽販売1位」を守りたい事情とは

■軽自動車販売の半分以上は「軽商用車」が占めている

 2022年に、国内で新車として売られたクルマの39%が軽自動車でした。特に軽自動車の比率が高いのは商用車で、登録車・軽自動車を含めた商用車全体では、軽自動車の新車販売比率は55%に達します。
 
 軽自動車は、乗用車よりも商用車で普及しているのです。
 
 軽商用車には、エンジンをボディの前側に搭載する「ボンネットバン」、前席や荷室の下に搭載する「キャブオーバーバン」、「トラック」の3種類があります。

【画像】車中泊で爆睡できるフルフラットの床がスゴい!「アトレー」の車内の画像を見る(46枚)

 2022年の販売比率では、キャブオーバーバンがもっとも多く50%を占めて、次はトラックの41%、ボンネットバンの9%でした。

 そんな軽商用車ですが、キャブオーバーバンの販売台数はダイハツが圧倒的に多いです。

 2022年には「ハイゼットカーゴ」とその上級シリーズの「アトレー」を合計9万5078台販売。同カテゴリーの2位はスズキで、2022年の販売台数は「エブリイ」の6万1673台と、3万台以上の差があるという状況です。

 2021年12月にダイハツは、ハイゼットカーゴ/アトレーを17年ぶりにフルモデルチェンジ。CVT(無段変速AT)や電子制御式4WDの採用、ボディ剛性の向上、安全装備の進化などを図りました。

 またアトレーは、従来は5ナンバーの軽乗用車として届け出されましたが、実質的に乗用モデルのままでありながらも、届出上は4ナンバーの軽商用車に変更しています。

 ダイハツは軽自動車の販売1位メーカーですから、キャブオーバーバンを含めて軽商用車が多いのは当然に思えますが、軽乗用車に限ると2位のスズキよりも少なく、2022年の軽乗用車販売台数は、ダイハツが35万3753台と、スズキの37万7605台を下まわっています。

 つまりダイハツの軽自動車販売は、軽乗用車ではなく、軽商用車によって支えられているといえるのです。

 ダイハツとスズキの近年の販売台数を振り返ると、2019年までは、軽乗用車でもダイハツが上まわっており、軽乗用車と軽商用車の両方で、販売台数はスズキよりも多く1位でした。

 ところが2020年以降は軽乗用車がスズキを下まわり、ダイハツは軽商用車を大量に販売して軽自動車の総合販売1位を守っています。

 ダイハツが2020年以降、軽乗用車の販売で劣勢に転じた一番の理由は、2019年7月に発売された現行「タント」の販売不振です。

 タントはダイハツの中心車種ですから、新型になった翌年の2020年には絶好調に売れなければなりません。しかし、2020年の対前年比は74%と、フルモデルチェンジしたにも関わらず、前年に比べて26%減ったのです。

 主力車種のタントが伸び悩むと、ダイハツの軽乗用車全体の売れ行きに影響を与えます。その結果、ダイハツの2020年における軽乗用車の販売台数は、前年に比べて15%減り、前述の通りスズキを下まわったというわけです。

※ ※ ※

 タントの販売不振は、2019年の発売直後に判明しました。2019年7月以降の対前年比は前年を上まわったものの、20~30%の上乗せに留まったからです。

 そこでタントは、通常であればモデル末期に設定するような格安の特別仕様車を2019年後半に追加。異例の措置でしたが売れ行きを伸ばせませんでした。

■軽自動車の販売1位という称号が重要なわけ

 タントの売れ行きが下がり、軽乗用車販売の全体に影響を与えても、ダイハツは軽自動車の販売1位を譲れません。

 ダイハツの販売店スタッフは次のようにいいます。

「軽自動車の販売1位は重要です。例えばタントとホンダ『N-BOX』、あるいはスズキ『スペーシア』でお客さまが迷われた時、軽自動車の販売1位という位置付けが選択を決めることもあるからです。販売1位になると、商談にも勢いが付きます」

 軽自動車は、ライバル同士で比べると、ボディサイズ、エンジン排気量、さらに価格まで似ています。N-BOX、タント、スペーシアであれば、全車にエアロパーツを装着するカスタム(シリーズ名も共通です)が用意され、外観は見分けが付かないほど似ています。

 その一方、軽自動車は生活のツールですから、クルマに詳しくないユーザーも多いです。似ていれば選択に迷うことになり、この時に軽自動車の販売1位メーカーであることが選択の決め手になります。

 販売促進のためにも軽自動車の販売1位は譲れないというわけです。

 そこでダイハツは、タントを含む軽乗用車の販売不振を補うため、ハイゼット・アトレーを筆頭とする軽商用車に力を入れるのです。

 注目すべきは2021年です。この年の軽商用車の販売総数は、コロナ禍の影響もあって2020年に比べて3%減りましたが、ダイハツは8%増えています。特にキャブオーバーバンは12%のプラスになりました。

 前述のハイゼットカーゴ/アトレーのフルモデルチェンジもあって、ダイハツの軽商用車は2022年には売れ行きをさらに伸ばし、キャブオーバーバンは30%増加。同時にマイナーチェンジを図った「ハイゼットトラック」も14%の増加が見られました。

 2022年のダイハツの軽乗用車は依然として対前年比が7%のマイナスでしたが、乗用・商用を含めた軽自動車全体の販売総数では、軽商用車の健闘によって1%ですがプラスになりました。

 このようにダイハツは、タントのフルモデルチェンジでは失敗しながら、軽商用車の販売強化と効果的な改良でカバーされ、軽自動車の販売1位を守っているというわけです。

※ ※ ※

 2022年10月にはタントが比較的規模の大きな改良を行い、SUV風の「ファンクロス」を加えたほか、評判がいまひとつだった「カスタム」のフロントマスクもデザインを変えています。

 この改良でタントは売れ行きを伸ばし、ライバルのスペーシアを抜いて軽自動車の販売2位になりました。

 今のダイハツは、軽商用車のハイゼットとアトレーを着実に販売して、改良を行ったタントや、フルモデルチェンジを間近に控える「ムーヴ」などにより、軽自動車が好調に売れそうです。

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みんなのコメント

24件
  • 他メーカーが作らないから(スズキ以外)
  • 荷物を満載にして車中泊に使おうとすれば結局このタイプじゃないと無理ですよね。タントや一代限りで終了したウェイクでは不足だからだと思います。もっとも現行型のハイゼットカーゴとアトレーはスライドドアのウィンドウがポップアップ式の開閉に変更されたので換気する時にちょっと大変みたいです。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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