自動車雑誌ドライバーが過去に取り上げた記事が今に蘇る「DRアーカイブ」。今回は1989年1-5号の「マキシマvsレジェンド」に
スポットを当ててみた。
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「マキシマ vs レジェンド」
V6エンジンを搭載する、新感覚のFFパーソナル・サルーン。3Lのマキシマと2.7Lのレジェンドが繰り広げるナチュラルアスピレーション(NA=自然吸気)エンジン同士の優劣は? また、話題のウイングターボを装着するレジェンドの2Lターボは、この両車とどんなフィーリングの違いを見せるか——定地テストを含めて実力をチェックしてみた。
■3ナンバーカーの多様化時代
ビッグカーの時代といわれる1989年。リーディングメーカーの日産は、早くもそのバリエーション展開を始めた。単なる高級車やハイパフォーマンスカーとは異なる、国産車としては新たな価値を持つマキシマを投入。
そもそもマキシマは、北米市場をねらって開発されたクルマだ。北米ではミドル・サルーン・クラスと呼ばれるゾーンに属し、国内でいうところの上級ファミリーカーと考えられている。3ナンバー車というと、どうしてもステイタス性を重視するあまり、見方によっては威圧的になりやすく、乗る側に抵抗を感じさせる場合がある。ところが、マキシマにはそれがない。3ナンバー車のゆとりを求める人なら、だれにでも薦められる。
マキシマのライバルは、キャラクターで分けると、正直いって今の国産車には存在しない。駆動方式によって分けるならば、レジェンドやデボネアがそれにあたる。今回は、レジェンドがマイナーチェンジされ、2Lに新エンジンを投入したためもあり、それをマキシマと対決させた。
マキシマは、VG30E型3L・V6エンジンを搭載。最高出力160ps/5200rpm、最大トルク25.3kgm/3,200rpmを発揮。一方のレジェンドは、ウイングターボ付きのC20A型2L V6が最高出力190ps/6000rpm、最大トルク24.6kgm/3500rpm、C27A型2.7L V6は最高出力180ps/6000rpm、最大トルク23.0kgm/4500rpmを絞り出す。
■マキシマは実用域で実力発揮
まずは、走りの性能チェックから始めよう。マキシマはパワーこそ160馬力と控えめだが、低中回転域では実情に見合った力強さを得ている。クセルをグィッと踏み込んでやると、それこそタイヤをきしませる勢いでダッシュ。その後も、景気よく速度を稼いでくれる。
もちろん、滑らかなスタートは思いのままだ。アクセルに足を軽く乗せるだけで、スルスルと加速していく。出足の加減は、アクセル操作ひとつでどうにでもなるのだ。
190馬力を発揮する2Lのレジェンドは、ホンダ車の常で出足が小気味よい。ただし、この傾向はスロットル開度とあまりかかわりがないため、逆にソロソロ走り出そうとしてもうまくいかないことがある。
しかも、たとえフル加速しても、スイッとスタートした後にそのままの勢いで加速が続くわけではない。F1で得たテクノロジーをフィードバックしたというウイングターボを持ってしても、低回転域の力強さは自然吸気式(NA)大排気量エンジンを搭載するマキシマが勝る。
2.7Lのレジェンドは、2Lとは異なるエンジン特性を備える。一気に加速しようとする場合の出足の力強さは、180馬力ながら2Lモデルをしのぎマキシマに迫る。通常のスタートはDレンジでも2速から加速するため、さすがは高級車と納得できる滑らかな身のこなしを示す。
再びアクセルを踏み込むと、レジェンドはフィーンと軽快に加速。2.7Lエンジンにしてはそのフィーリングがやや薄味で、いい意味の重厚感に欠けるが、速度の稼ぎっぷりは見事。エンジンを回すほどに勢いがつき、6000回転台まで難なく引っ張れる。
低回転域で元気がなかった2Lモデルも、中回転域以上で活気づく。ターボの過給効果はごく低回転域から少しずつ表れるが、それが力強さとなって体に伝わるのは3000回転あたりからだ。
4000回転にかけて力強さはさらに盛り上がる。しかも、5000回転台でもう一度グイーっと伸びるような加速を見せる。このあたりの高回転域になると、エンジン回転でパワーを稼いでいるという実感も味わえる。そして、そのまま引っ張ると、タコメーターの針は一気に6000回転台に突き刺さるのだ。
そのあたりの回転域でマキシマは影が薄い。中回転域でも力強さを保つが、5000回転を超えたあたりから勢いがなくなる。エンジンの吹き上がり自体にストレスを感じないため、レッドゾーンが始まる6,000回転まで気兼ねなく使えるが、高回転域が得意なほうではない。
■全開加速でさえるレジェンド
3車の走りの特性が見えてきたところで、マキシマと2Lのレジェンドを谷田部テストコースに持ち込み、さらに検討を加えてみた。
エンジンの限界性能の試すゼロ発進加速では、レジェンドがリード。とはいうものの、1000m地点でこそ1秒近い差がつくが、110km/h前後で通過する200m地点の差は、わずか100分の6秒でしかない。全開加速をしても、実用域の差はないと考えてもいいだろう。
エンジンの過渡特性を試す追い越し加速では、速域によって両車の立場が変わってくる。一般路の走行パターンにあたる50km/h前後は、20→60km/h、40→80km/hともにマキシマがリード。この速域では、Dレンジで加速態勢に入ると2速の中回転域特性がポイントになる。そのため、マキシマのゆとりある力強さが、存分に発揮されたわけだ。
逆に90km/h前後の高速域では、レジェンドが立場を逆転。マキシマに大きく差はつけられなかったが、2速の高回転域から3速にかけての伸びのある加速が生かせた。
アクセルを踏み込んだ瞬間のレスポンスは、やはりNAのマキシマのほうが鋭い。レジェンドのウイングターボも、過給機付きの2Lエンジンにしては、もっとも素直な力強さのノリを示すものの、NAにはかなわない。もしマキシマなみのレスポンスを身につけていれば、高速域の加速でさらに差をつけたはずだ。
■快速な走りが魅力のマキシマ
最後に、マキシマとレジェンドの操作性と快適性を比較してみよう。ハンドリングについては、レジェンドのほうが2L、2.7Lともに正確。微速でやたらと軽いステアリングには何度乗っても違和感を覚えるが、走り始めた後はいささか人工的ながらしっかりとした手ごたえが伝わる。
マキシマは、試乗車となったタイプIIに標準装着されるDUET-SSのモードにかかわらず、小舵角時の手ごたえが頼りない。ステアリングフィールが伝わりにくく、クルマ自体のスタビリティには問題がないのに、なんとなく不安を感じる。とくにこの傾向は、高速域で強くなる。
静粛性については、申し分ない。Dレンジ4速で100km/h時の騒音レベルは、マキシマが66ホン、2Lのレジェンドは65ホンだ。この数値でもわかるとおり、レジェンドはとにかく静か。クルージング中のエンジン音はまったく気にならないし、加速時のタービン音も最小限だ。
乗り心地は、マキシマのほうがしなやかだ。DUET-SSをコンフォートにセットすると、低速でも洗練された走りが得られる。
レジェンドは、高速域ではマキシマと変わらないしなやかさを見せるが、低速で荒れた舗装路を走ると、それなりの硬さを感じることがある。エンジン特性を含め、高速ツアラー的な性格が強いクルマだ。
〈文=萩原秀輝〉
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