参加者目線を大切にクラシックカーラリーを提案
チェックポイント認証による公道走行と、1000分の1秒単位で計測するPC競技で順位をつけているクラシックカーラリー。運転がうまい人が勝つといわけではなく、いかに正確にクルマを操れるか、ということを競っている。つねに冷静さが求められる点が魅力だ。
優雅だがシビアという謎の競技! 若手編集部員が旧車のアルファロメオで「クラシックカーラリー」に参加してみた
知的なモータースポーツであるクラシックカーラリーの魅力やPC競技の難しさをお伝えすることで、愉しそうだな、挑戦してみようかな、と思うクルマ好きがひとりでも多く増えたらいい……。そのような想いのもとでスタートした、筆者&愛機(24年前に購入した1974年式アルファロメオGT1600ジュニア)による参戦レポートは2017年から展開している。AMWでは2021年からレポートしているが、じつは5年間も参加しているのだ。
これまでも、さまざまなラリーを取材してきたが、もっともたくさん取材しているのが「クラシックジャパンラリー」だ。一般社団法人 クラシックジャパンラリーが主催している同ラリーは、 2017年6月3日~4日に開催された「クラシックジャパンラリー2017 in 箱根」からスタートした。
2022年5月20日~22日に実施された「クラシックジャパンラリー2022 横浜 Y163」が10回目で、11月24日~27日に11回目となる「クラシックジャパンラリー2022 門司」が開催されることになっている。11回目に向けた試走を終え、九州から戻ってきた一般社団法人クラシックジャパンラリーの代表である岡野正道さんに、クラシックジャパンラリーの開催の経緯やコンセプトを伺う機会に得たので紹介しよう。
「気軽に参加できるようなトレーニングラリーを開催したい」がきっかけ
「2008年に開催されたLa Festa Mille Miglia(ラ・フェスタ ミッレミリア)の元町ゴールを見る機会があり、クラシックカーラリーに参戦したいと思いました。初参戦は2009年6月に開催されたグランプレミオ・アウトストリケ駒ヶ根で、このときのクルマは1955年式のオースチン・ヒーリー 100/4 BN2でした。
私たちがPC競技に慣れ、愉しくなってきた時期に競技全体のレベルがとても高くなり、練習をしないと上位にいけない状況になってきました。初心者の方でもクラシックカーラリーの運営やマナー、競技方法を理解し、PC競技の技術向上やラリーの流れを理解して、ほかのイベントにも気軽に参加できるようなトレーニングラリーがあってもいいのでは? と考え、プライベートな練習会からラリーイベントとして作り上げたのがスタートした経緯です。そのような想いもあって、クラシックジャパンラリーでは現在でも必ずビギナーズブリーフィングを実施しています。
ラリーでは私がドライバー、5歳年上の兄の大介がコ・ドライバーで参戦していますが、兄は終日ルートブックを見て、ルート、給油ポイント、競技設定など、ラリーの組み立てに追われ、素敵な景色などを見る機会がありませんでした。そこで、コ・ドライバーも愉しめるラリーを作っていこうと思ったわけです。
主催者としての経験が無かったため、兄弟船で実際に開催してみたら、ほかのイベントでは普通に準備されているようなことができていないなど、経験とノウハウの蓄積がないと理想のラリーは作れないことに気づかされました。そこで参加者の皆さんからの声を聞き、次回につなげられるよう、スタッフと情報を共有し、彼らと一緒に、ドライバー目線、コ・ドライバー目線の両面で愉しめる理想のラリーを目指していきたいと思っています」
クラシックカーの愉しさを次の世代へ受け継ぎたい
難易度が高いPC競技、素晴らしい景色を堪能できる走行ルート、ハイクラスの宿、美味しい食事などを愉しめるホスピタリティ超充実型ラリーの開催には、どのような運営の苦労などがあったのだろうか?
「沿道の方々への周知や、PC会場、ランチ会場、宿泊先の選考、ルートの組み立てなどのほか、開催地の自治体や協力施設、警察の支援が不可欠です。何度も行う試走、説明資料の作成、自治体協議、申請手続きといった事前準備が予想以上に大変なのです。そういったこともあり、成功の手応えはまだありません。開催を発表するたびに不安です。ただ、準備にしっかり時間をかけて、丁寧に作りあげていくことが大切だと考えています。
クラシックジャパンラリーはクラシックカー乗りが作るイベントですので、参加者目線を大切にしてきました。今後もドライバーとコ・ドライバーが一緒に愉しめるクラシックカーラリーを提案していきたいと思っています。そして、クラシックカーを走らせることの愉しさを次の世代に継承してもらえるよう、多くの方々にカッコいいクルマとカッコいい大人を見ていただくため、地域の方たちやメカニックの方々とのつながりも大切にしていきたいと思います」
岡野さんが言う次の世代とは子どもたちのことで、運営スタッフに恵まれ、若い人にもその愉しさを感じてもらえるように設定されているクラシックジャパンラリーは、クラシックカーを歴史的に重要な文化遺産として捉え、次世代を担う子どもたちに、見て、触れてもらうことを重要視している。
子どもたちがクラシックカーを実際に目の当たりにすることで、完調を維持するために必要な匠の技術に興味を持ち、職人への尊敬心を育む機会となることを期待している。
次回の「クラシックジャパンラリー2022 門司」でも小学校を訪問する予定とのこと。著者も微力ながら子どもたちに、なにかのきっかけを与えられることができればと思い、エントリーの準備を始めている。
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