アイルトン・セナが磨いた初代のシャシー
素晴らしい完成度のスーパーカーが、間もなく最後を迎える。もっと筆者も称賛すればよかったと、どこからともなく罪悪感が湧いてくる。こんな結果を招くとは、予想していなかった。
【画像】ラストは600psで350台 アキュラ(ホンダ)NSX タイプS 競合ミドシップと比較 全190枚
2代目となるNC1型のホンダNSXは、このタイプSの350台をもって生産を終える。太平洋から日が昇る日本ではなく、トウモロコシ畑から日が昇る、アメリカ・オハイオ州の工場で。
初代NSXの後継モデルとして、新たに生まれ変わったNSXは期待に応える内容を備えていた。注目すべき特徴もふんだんに盛り込まれていた。だが、それともお別れだ。
1990年に発売されたオリジナルのホンダNSXは、イタリアン・スーパーカーの維持に数千ドルを費やしていた時代に誕生した、革命児的な存在だった。オーバーヒートの心配はなく、定期的に起きるメカニズムの故障とも無縁だった。
フェラーリにとってのF40と同じくらいのインパクトが、ホンダのNSXにはあった。本田宗一郎氏によって推し進められた、意欲的なプロジェクトだった。
黄金期にあった同社の精鋭によって素晴らしい設計が施され、伝説的F1ドライバーのアイルトン・セナ氏によってシャシーは磨き上げられた。ホンダらしく、われわれに親しみやすいスーパーカーだった。
レーシングカー・デザイナーのゴードン・マレー氏も、1台初有していた。マクラーレンF1の開発時には、毎日のように乗っていたという。
大型ターボなどで最高出力は600psへ
2代目NSXがデビューしたのは2015年。ところが、ホンダはNSXへの羨望を集めることに苦労した。フォードが同じタイミングで新型スーパーカーのGTを発表したことも、多少は影響しただろう。
NSXの価格は、マクラーレン級に高くなっていた。生産された北米では、見慣れたベージュ色のサルーン、LTと同じアキュラのエンブレムが付いていた。ホンダではなく。エンジンも、基本的にはLTと同じ75度のバンク角を持つ3.5L V6ユニットだった。
結果的に売れ行きが向上することはなく、2代目NSXは2022年で最後を迎える。アウディも、ランボルギーニ由来のV10エンジンを上品なボディにミドシップした、R8の生産を終える。
モダン・スーパーカーの多くは信頼性が向上し、日常的に乗れるモデルは珍しくない。公道で乗れるレーシングカーなら、ポルシェが911 ターボと911 GT3を提供している。明確な何かが、NSXには必要といえた。
ラストとなるNSX タイプSでは、ハイブリッド・パワートレインの最高出力が581psから600psへ向上している。レーシングカーのNSX GT3エボ譲りとなる大型ターボと、ハイフロー燃料インジェクター、インタークーラーなどにより実現したという。
V6ツインターボ・エンジンのレッドラインは7500rpmで変わらないが、駆動用バッテリーの容量は20%増えている。駆動用モーターへ供給できる電流は、10%高められた。システム総合での最大トルクは67.8kg-mだ。
ホンダらしい見た目 感動の薄いインテリア
リア側に1基、フロント側に2基の駆動用モーターが搭載される四輪駆動という構成は変わらないが、トルクベクタリング機能と9速デュアルクラッチATは改良を受けている。特にトランスミッションは、変速スピードを2倍に速めたそうだ。
とはいえ、2代目NSXの本質的な個性に変化はないようだった。特に通常のドライブモード時は。
NSXは、タイプSでも、後ろから近づくとホンダ車らしいベーシックな雰囲気がスタイリングに香る。長いドアの開き方は、一般的な縦ヒンジだ。
運転席へ座ると、オリジナルのNSXには及ばないものの視界は良好。フロントガラス左右のAピラーは、現代のモデルとしては運転の邪魔になりにくい。
タイトなコクピットは丁寧に仕立てられているものの、この価格帯で期待されるような感動は薄い。イタリア・ブランドのライバルとは比べない方が良いだろう。10年くらいは、トラブルフリーだと思うけれど。
インテリアのデザインや素材の質感は、上級に思えるが、ハイグレードのホンダ・アコードのそれに近い。タッチモニターは、シビックのモノと同じに見える。
華やかな内装と友人に自慢できるエンブレムが欲しいなら、NSXは考えない方が良いだろう。このコクピットは、シリアスに運転するための特等席だ。彫りの深いスポーツシートは、ドライバーの身体を固定するための道具といえる。
この続きは後編にて。
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何故NSXはフェラーリやランボルギーニのようにカリスマ性が無いんだろう。