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【現役デザイナーの眼:トヨタ・クラウン】策士なトヨタの『攻め』のデザイン

掲載 12
【現役デザイナーの眼:トヨタ・クラウン】策士なトヨタの『攻め』のデザイン

デザインテーマの引き出しの多さは世界一

カーデザイナーが日毎どのようなことを考えながらデザインしているかを感じていただくべく、今回、クラウン・シリーズのうち、特に印象的な『スポーツ』と『セダン』を中心に解説します。

【画像】4車種それぞれ異なる立体構成 画像はこちら 全26枚

クラウン・シリーズのデザインが同業デザイナーから評価が高い理由、それは、日本車の常識や高級車のセオリーから外れたデザインが挑戦的だからです。

クラウンは現在4車種が発表されています。デザイン的に注目すべきは、この4車種でそれぞれ『狙いが異なる立体構成』をしている事です。

ここで言う立体構成とは、ドア面を含めた一般部の立体と、前後フェンダーとの立体の構成などですね。実はここが、デザイナーが最初に考えるところなのです。

クラウンは、セダンが最も常識的な構成をしています。

まず前後に貫く大きな基本立体があり、そこに前後フェンダーがくっついているという構成です。これはカーデザインの基本的な構成で、ドア面のリフレクションが揺れないのでしっかり芯が通った印象が出ます。

それに対し、クロスオーバーとスポーツは、大きく2つのボリュームを際立たせる狙いで構成されています。

前端からリアドアの半分付近までをひとつのボリューム、その後ろにもうひとつのボリュームという感じです。この効果としては、上面で見た時の『くびれ』が強く見えるので、よりダイナミックな印象になる事です。

また、エステートの狙いは、ドア面がほぼ見えなくなるくらい前後フェンダーのボリュームを強調する事です。

これはダイナミックな印象になる反面、ドア面のリフレクションがかなり揺れるので芯が通って見えづらいのですが、このクルマを見ると、これも正解かなと納得させる質感があります。

トヨタは、デザインの引き出しの多さが世界一だと思います。

クラウンだけでもこのように数多くの基本テーマにトライしているので、プロのデザイナーは、一般の方以上にトヨタ・デザインに尊敬の念を持っています。

日本車離れしたプロポーション

特にクラウン・スポーツからは、皆さんもどこか欧州車的な情感を感じるのではないでしょうか?

それに最も寄与しているのが、スポーティな『プロポーション』です。

分かりやすい所で言うと、サイドから見た際のキャビンとロアボディの比率、それとタイヤの位置や大きさのバランスです。

通常、キャビンが小さくタイヤが大きい車ほどスポーティに見えるものですが、クラウン・シリーズは4車種全てスポーティに見えるような比率になっています。

これはパッケージ(ボディサイズと人やパワーユニットの位置、タイヤの位置や大きさ、その他補器類含めた基本的な構造の総称)でおおよそ決まるのですが、クラウンのパッケージがスポーティなデザインにすごく良い素性なのです。

人間に例えると、パッケージは『体型』なのに対し、デザインは『衣服』のような関係といえば、わかりやすいかもしれません。

多くの日本車は、不利な体型を衣服でカバーするようなデザインなのに対し、クラウンは元の体型が良いので、どんな衣服を着ても似合うんですね。

このようなパッケージにしたのは、グローバル展開に主眼を置いているからに他なりません。機能重視の、日本市場専用車であったこれまでのクラウンでは出来なかった事です。

気になる点を挙げるとすると、『しまい込み』の弱さ。ボディ下部はしまい込むことでタイヤをより強調出来るのですが、例えばポルシェのSUVやランドローバー系に比べるとしまい込みが弱いです。

この辺りは考え方の違いや様々な設計要件があるので、バランスを取ったと言う事だと思います。

これからの高級車像を表現した顔まわり

高級車の顔といえば、伝統的に大きなグリルを中心とした構成ですよね。

メルセデスのデザインはその典型で、デザインにおいてグリルという存在は、車格を表現するのにとても便利なものです。

しかし、EVがカーデザインのトレンドを牽引している現在において、グリルの再定義が進んでいます。グリルに頼らなくてどう高級に見せるかという事が業界の課題ですね。

その点、クラウンのデザインは本当によく出来ています。

例えばクラウン・セダンは、グリルが通常の高級車より下部に設置していますが、通常このバランスだと高級車にふさわしい『車格』が出づらいのです。Cセグまでのデザイン文法です。

でも、クラウンはちゃんと高級に見えます。一番の理由は、『厚さ』にあります。

通常の位置にグリルが無い分、ボンネット前端が低くなっているのですが、ボンネットに折れを作り、大きな落差をボリュームとしてフロントビューでもしっかり見せている事で、高級車にふさわしい『厚さ』を感じさせているからなのですね。

グリルやランプなど『グラフィック』に頼らない手法ともいえます。

またこの造形は、プロポーション全体の勢いやオリジナリティにも寄与しています。

このようなデザインはトレンドのひとつでもありますが、クラウンほど大胆に表現しているクルマも無いですね。

このようにクラウン・シリーズは、これまでの日本製高級車にはない『攻めのデザイン』をしています。

また、そのようなデザインを最も保守的な『クラウン』で展開するという決断は、ブランディングも含め、トヨタは相当な策士だなとあらためて思い知らされたクルマでした。

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みんなのコメント

12件
  • fxnhe501
    とりあえず、おなじみ交通タイムス社の自称「デザインのプロ」の記事よりははるかにまとも。それだけは事実。
  • ********
    正直に言えよ。
    数ある芸術的な高級外車の中からプロサングエのデザインモチーフをパクったんだろ(笑)
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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