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【ヒットの法則36】フェラーリはF430スパイダーの販売比率を55%と予想していた

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【ヒットの法則36】フェラーリはF430スパイダーの販売比率を55%と予想していた

2004年9月のパリサロンでデビューしたばかりのフェラーリF430に、2005年、早くもスパイダーが追加されている。正式デビューは2005年3月のジュネーブショーだから、わずか半年後の登場ということになる。この異例な早さにはどういう意味があったのか。欧州での試乗をとおして、このモデルの狙いを考察している。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年6月号より)

Cピラーがなくなり、スタイリングはよりダイナミックに
フェラーリはF1グランプリにおける成績と同様、常に世界のトップに立つ最新の性能を持ったスポーツカーを世に送り出してきた。エンツォなどのフラッグシップモデルばかりでなく、V8エンジンを搭載したエントリーモデルにおいても同じ思想が貫かれているのが実感できる。

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F360モデナは世界的な大ヒットとなり、フェラーリ史上最高の売り上げを記録した。「もはやF360モデナ以上のV8モデルは登場しない」とまで言われたが、2004年にデビューしたF430はさらに大幅な進化を果たして世界を驚かせた。F1グランプリのノウハウを使った数多くの電子制御システムを搭載したF430は「走るコンピュータ」と言われている。

そんなF430に早くもスパイダーが登場した。デビューは3月のジュネーブショー。F430の発表は昨年2004年9月のパリサロンであったから、わずか半年後の登場ということになる。当然のことながら、このF430スパイダーも、多彩なドライブロジックを内包したコンピュータを装備したモデルとなっている。

F430スパイダーのメカニズムはルーフ以外はF430と同じと考えていい。4512×1923mmという全長と全幅も、2600mmというホイールベースも同じ。全高だけが20mm大きくなっている。軽量アルミニウムボディ構造もそのまま使っている。サスペンションの設定も、タイヤサイズも同じだ。違うのは車両重量。オープントップとその電動システムにより、クーペの1450kgに対し、70kg増の1520kgと発表されている。

デザインは重く見えるCピラーがなくなったことで、リアフェンダーの盛り上がりが目立つようになり、よりダイナミックになった。F430よりも、さらにカッコよく見える。

車両重量は増えているが、それを体感することはないだろう。490psというパワーはそんな重量増など問題にしないし、F430で車体底面の大幅な剛性強化が施されたことが効いているようで、リアのねじれからくる走りの雑味もまったくない。

F430スパイダーは、これまでどのオープンモデルにもなかった駆動系における複雑な電子制御システムを搭載しているのが特徴だ。ABSはもちろんのこと、CST(コントロール・フォー・スタビリティ・アンド・トラクション)と名付けられたドライビングダイナミクス制御システム、セミオートマチック6速トランスミッション、そして最新の排出ガス規制EU4をクリアするためのボッシュ製最新エンジンマネージメントシステムなど、枚挙に暇がない。

さらにクーペモデルでオンロードマシンとして世界初の搭載となった、エレクトロニック・コントロール・デファレンシャルも装備されている。

このシステムは後輪へのエンジンパワーを、油圧制御により状況に応じて無段階にコントロールするというもの。フェラーリのエンジニアによれば、この働きは4WDにも相当するもので、これもF1技術からのフィードバックと言う。「ドライバーはこのシステムの作動状況を感じることはないが、左右のミューが異なる状態の路面、あるいはコーナー脱出における、加速時のリアアクスルの驚異的なスタビリティを体感することができる」と自信たっぷりだ。

エレクトロニック・コントロール・デファレンシャルのシステムを堪能するにはあり余るほどのパワーが必要になるが、4.3L V8エンジンが8500rpm時に発生する490psというパワーはそれに十分なものだ。あとはそのパワーを目一杯引き出してやらなければならないが、この時のサウンドは迫力に満ちたもので、面白いことにクーペのキャビンで囲まれていた時とは、まったく違う響きを持っている。

スパイダーはクーペよりも人気になると予想
実際に乗り込んでみる。ステアリングパッド左のエンジンスターターボタンを押してエンジンをかける。スタート直後にエンジンから発生するサウンドは、まるで蜂の大軍が騒いでいるように低いが、ボリュームを感じさせるものだ。

ここでドライバーはどのようにドライブするかを選択しなければならない。もしクルージングを楽しみたいのならば、センターコンソールにあるAUTOボタンを押し、ステアリングパッド右の小さなダイヤル(マネッティーノ)をICEに合わせる。こうすれば、スムーズなスタートとともに快適なドライブが始まる。トランスミッションはオートマチックで早めにシフトアップし、サスペンションは柔らかく動く。

スロットルに対するエンジンの反応も緩やかだ。マネッティーノは文字通り氷の上のように滑らかな走りを教え込み、F430スパイダーをクルーザーに仕立て上げる。

マネッティーノは魔法のボタンだ。ダイヤルはICE/LOW GRIP/SPORT/RACE/CST OFFの5段階。3種のダンパーセッティング、ASR(トラクションコントロール)とCSTの4種類の介入特性、さらにエレクトロニックデファレンシャルのプログラム、F1トランスミッションのシフトスピードなどを統合的に制御する。スタンダードモードがSPORTということになる。

ただし、CST OFFでは、CSTをはじめとする全ての電子制御から解放されて、F430スパイダーは自由な力学的動きを見せるので注意したい。この選択はドライバーにはかなりの緊張を強いることだろう。この状態でドライブする権利があるのは、レーシングドライバーだけかもしれない。

もちろん、ドライビングを楽しむためには、トップを下ろすべきである。わずか20秒で事足りる。スピードを上げるにつれ、エキゾーストは高まり、風圧を感じるが、左右のロールバーの間に装着されたディフレクターにより、室内への風の巻き込みは意外なほど少ない。

F430スパイダーにはアクティブドライブの楽しみもある。ステアリングの動きとドライバーのスロットルワークに対する絶対的な追従性は他に類を見ない。オープンエアの開放感とともに、高い回転域での加速フィールはまさにドライバーとマシンが一体となったフィーリングが味わえる。

F430スパイダーにはローンチコントロールまで用意されている。これを利用すれば、490psを使い切った完璧なスタートが可能となる。そのためにはまずセンターコンソールのLC(ローンチコントロール)ボタンをを押す。パドルシフトを引いたまま、フルスロットルを与え、回転が上がったところでパドルを離せばいい。エレクトロニック・パワーディストリビューションにより、劇的なダッシュが開始される。

F360スパイダーからの劇的な進化のひとつに、空力特性の向上があられる。F430スパイダーのアンダーボディは完全にカバーされ、この結果、ダウンフォースは40%も増加したという。

フェラーリによれば、F430スパイダーの販売台数はF430全体の55%を占めると予想している。フェラーリがソフトなオープンモデルにまでF1並みの高性能エレクトロニックコントロールを装備した理由、異例なほどの早さで投入された理由は、こんなところにあるのだろう。

価格はドイツで16万8500ユーロ(6速マニュアルは7300ユーロ安い)。F430を買うなら、私はスパイダーのF1トランスミッションを選択する。(文:木村好宏/Motor Magazine 2005年6月号より)

ヒットの法則のバックナンバー

フェラーリ F430 スパイダー(2005年) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4512×1923×1234mm
●ホイールベース:2600mm
●車両重量:1520kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4308cc
●最高出力:490ps/8500rpm
●最大トルク:765Nm/5250rpm
●トランスミッション:6速AMT(セミAT・F1ギア)
●駆動方式:MR
●最高速:310km/h
●0-100km/h加速:4.1秒
※欧州仕様

[ アルバム : フェラーリ F430 スパイダー(2005年) はオリジナルサイトでご覧ください ]

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