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ポルシェ・タイカン 4S クロスツーリスモ vs アルピナB3 ツーリング ワゴン直接比較 前編

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ポルシェ・タイカン 4S クロスツーリスモ vs アルピナB3 ツーリング ワゴン直接比較 前編

近くて対照的なステーションワゴン

ステアリングホイールの応答性、リバウンド時の減衰力特性、ペダルの重み付け。近似するライバルを評価する時、尺度の1つとなってくる項目だ。実際、自動車メーカーは少しでも優れた評価を得るため、細部まで気を抜くことはない。

【画像】アルピナB3 ツーリングとポルシェ・タイカン 4S クロスツーリスモ 写真で比較 全61枚

もちろんそれは、ポルシェとアルピナというブランドの比較にも当てはまる。純EVのタイカン・クロスツーリスモや、内燃エンジンのB3 ツーリングという高性能モデルでも。

この2台はハードウエアが大きく異なるものの、価格やスペック表に並ぶ数字は近いところにある。何より、クルマとして目指すベクトルが共通している。AUTOCARに、比較試乗をして欲しいと訴えているかのようだ。

それでいて、伝統対革新、フルコース・ディナー対ヴィーガン・ディナー、つまり、ガソリン対エレクトリックという対局比較という側面も持っている。それぞれの、ベスト同士の。

AUTOCARの詳細テストでは、B3 ツーリングとタイカン・クロスツーリスモは満点の評価を掴んでいる。極めて高水準な対決になることは、いうまでもない。

2022年が始まろうかという今、大枚をはたいて愛車を選ぼうという自動車ファンは、電気自動車を選ぶべきか内燃エンジン車を選ぶべきか。そんな悩ましい疑問の答えも、見えてくるかもしれない。

万能選手的な内燃エンジン・チームの代表

アルピナB3 ツーリングは、G21型3シリーズをベースとした最新型。BMW M謹製の直列6気筒エンジンを搭載した、唯一のアルピナとなる。

動力性能や快適性、操縦性、効率性、実用性などでレーダーチャートを付けると、大きくきれいな多角形を描くはず。ステーションワゴン最速の1台であり、M3よりしなやかで親しみやすい。

英国価格は、6万7950ポンド(約1032万円)。この内容に、通常の3シリーズとは一線を画す見た目を踏まえれば、高すぎるとはいえないだろう。

車内は広く、舗装の古い道でも疲れ知らず。豪華な車内に身を委ね、安定性に優れたシャシーを活かし、スポーツカーのように楽しめる。内燃エンジン・チームの代表として、これ以上に万能選手的なモデルはなかなか思い当たらない。

対する相手は、タイカン 4S クロスツーリスモ。当初は4を想定していた。英国価格8万1500ポンド(約1238万円)で、B3 ツーリングに適切なオプションを載せた金額と並ぶためだ。

手配できたのは4S。英国価格8万8270ポンド(約1341万円)、最高出力571psで、4より高く速いが、AUTOCARが一目置くベスト純EVであることに変わりはない。バランスや感触に優れ、角が取れた秀逸な高性能モデルでもある。

クロスツーリスモがまとう、シューティングブレーク風のルーフラインに、オフロード感を演出するホイールアーチが、魅力を一層強めている。アイス・グレーという色も良い。

B3 ツーリングはトレードマークのスポイラーに20インチ・クラシック・ホイール、4本出しマフラー、アルピナ・ブルーの塗装で仕立てられている。だが、クロスツーリスモの存在感には及ばない。ガレージに停まっていたら、幸せな気分になるはずだけれど。

理想的な運転姿勢に落ち着いた乗り味

タイカンに乗って感心するのが、まず最初にポルシェだと思わせること。純EVだという印象は、その次に続く。

ドライビングポジションは低く、いうことなし。タイヤハウスに足もとが侵食されることなく、ペダル配置も完璧。電動パワーステアリングは、重み付けや感触の一貫性、路面やグリップの状況など手のひらへの情報量も秀抜。まさにポルシェだ。

ひと呼吸おいて車内を眺める。デジタル技術が主張し、造形は質実的。温かみには欠けるが、人間工学に優れスポーティ。アルカンターラ巻きのステアリングホイール越しに見える視界も広い。すべてが正しいと思える。

タイカンには3チャンバーのエアサスペンションが組まれている。軽くない駆動用バッテリーが搭載されているにも関わらず、その事実を巧みに包み込んでいる。しなやかな乗り心地と、タイトな姿勢制御を両立させている。

走りは常に落ち着いている。そのかわり、カーブの続く道を積極的に走らせると、流暢さで及ばないと感じる場面がある。半径が大きめのカーブを得意としている。

今回の試乗車には、オプションで装備できるポルシェ最新のシャシー技術が付いていない。後輪操舵システムにトルクベクタリング、アクティブ・アンチロールバーが。

直接乗り比べれば、その違いは明確だろう。トルクベクタリングは、コーナーでの俊敏性を5%ほど上乗せしてくれるはず。しかしタイカン・クロスツーリスモは標準のアンチロールバーのままでも、ほぼロールしない。低い重心高を、常に感じ取れる。

ポルシェ水準のシリアスさ

対するアルピナは、インテリアの設えに魅了される。ドライビングポジションは、より高く背もたれが起き気味で、ポルシェの完璧さには届いていない。最初から特別に設計されたモデルではなく、一般的なモデルを特別な水準へ高めた印象がある。

とはいえ、B3 ツーリングの昇格ぶりは目覚ましい。ベースはG21型のM 340i ツーリングだ。S58と呼ばれる3.0L 直列6気筒ツインターボのトルクを増強し、冷却系を強化。リアのドライブシャフトもアップグレードしてある。

電子制御LSDにもチューニングが施され、前後アスクル間でのトルク分配率は、より50:50へ近づけてあるという。タイヤもピレリ社製の専用品。サスペンションの設計も見直され、ステアリングフィールや直進性を高めている。

変更部分は、書き出すときりがない。ポルシェ水準のシリアスさが、エンジンやシャシーにもたらされていることは間違いない。加えて、電気モーターとバッテリーで走るタイカンより、メカニズムから感じるモノが大きい。

ツインターボ・エンジンは、聴き応えたっぷりの6気筒ハーモニーで迫力も充分。切れ味抜群のレスポンスだが、どこか完璧なMとは違う印象を受けることも確か。

アイドリング時には、肉付きの良いステアリングホイールへ振動が伝わる。静止加速からでも3速での中間加速でも、クランクから8速ATを介し、ヒステリックなほど太いトルクがワイドなタイヤへ伝達される。

ちなみに、リアタイヤの幅は265。4S クロスツーリスモの285より控えめだが、充分に広い。

この続きは後編にて。

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