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フェラーリ458イタリアはまるでF1マシンを運転しているようだった【10年ひと昔の新車】

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フェラーリ458イタリアはまるでF1マシンを運転しているようだった【10年ひと昔の新車】

2009年のフランクフルトショーでフェラーリ430の後継車「458イタリア」がデビューした。1999年発表の360モデナ以来、10年ぶりにフルモデルチェンジされたフェラーリのV8ミッドシップモデルには最新のテクノロジーがぎっしりと詰まっていた。ここでは2009年秋にイタリア・マラネロで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年2月号より)

F430からの変身ぶりは大胆で、違和感を覚えるほど
イタリア・マラネロにあるフェラーリ本社ショールームで初めて目にした458イタリアの第一印象は「意外とかっこいいな」というものだった。F430からの変身ぶりはあまりに大胆で、写真で見る限りでは、少々違和感を覚えていたからだ。新世代のV8フェラーリに世界が注目するが、「そのスタイリングは手放しに美しいと形容できるものではない」と感じていたのだ。

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そのデザイン変更の理由は空力の追求。フェラーリ自身が同じV8モデルのカリフォルニアとの個性の違いを強調し、カリフォルニアは快適性重視のGTカー、458イタリアはハイパフォーマンス・スポーツカーと位置づけていることからわかるように、458イタリアは純粋に走りの性能を追求したモデルとした。その結果がこうした形を生み出したということだろう。

サイドにあるはずの大きなエアインテークが姿を消し、ボディに小さなダクトがあるだけ。これはボディ下部に積極的に空気を流し込みつつ、下から空気を取り入れ、空気抵抗を生み出すことなく大きなダウンフォースを得る最新テクノロジーによるもの。

0→100km/h加速3.4秒、最高速325km/hという458イタリアにとって空力は極めて重要であり、ウイングなしで強烈なダウンフォースを生み出す空力ボディは是が非でも必要だったということだろうが、現在のF1がそうであるように、最新の空力デザインは少々奇異に映るのかもしれない。

エンジンは新設計の4499cc、V8ダイレクトインジェクション。基本設計はF430用ユニットと同じだが、ストロークが94mmに伸ばされて排気量は191cc拡大。さらに直噴化によって12.5という高圧縮比が可能となり、最高出力570ps/最大トルク540Nmに達している。F430と比べて80ps/75Nmアップと言えば、その進化ぶりがわかるだろう。

もうひとつ、プラットフォームも新設計だ。アルミの押し出し材、シート、ダイキャストを使い分けるアルミスペースフレームとしているのは従来通りだが、その内容はさらに進化し、大幅な軽量化を実現しながらF430比で約20%の剛性アップを果たしているという。

フレキシブルなV8とスムーズなDCTの相乗効果
少々緊張しながら室内に乗り込むと、まるでF1マシンのような複雑なスイッチ類と計器が目に飛び込んでくる。それでもキーを捻りエンジンスタートボタンを押すと、あっけなくエンジンは始動する。そして、ことさらに爆音を轟かせるでもなく、静かにアイドリングに入る。

右側のパドルを手前に引くとギアが1速につながりスムーズに走り出す。空力ボディ、エンジンと並んで、458イタリアのもうひとつの大きな特徴がトランスミッションだ。カリフォルニアで初めて搭載された7速デュアルクラッチ式F1ギアボックスが採用されているのだ。

マラネロの街を抜けて、しばらく交通量の多い一般道を走ることになったが、458イタリアはまったく快適。内部フリクションを徹底的に排除したという新しいV8エンジンは最高出力を9000rpmで発揮するという高回転型でありながら、実は3250rpmから最大トルクの80%を発生するフレキシビリティを持っているし、デュアルクラッチ式F1ギアボックスはわずかな空走感もなくシームレスな変速を見せるので、スムーズで快適な走りが実現されているというわけだ。そのシフトスピードはF430スクーデリアの0.06秒よりも速い0.05秒と言われている。ステアリングフィールは俊敏で、エキゾーストノートはエンジン回転数によって様々に音色を変え、ドライバーをけっして飽きさせることはない。

フロント/ダブルウイッシュボーン、リア/マルチリンクとなるサスペンションは従来からの発展形だが、とくにリアのロアアームを大型化して剛性を上げるなどの改良が加えられている。デルファイと共同開発される磁性体ダンパーもさらに進化し、これまで以上の追従性を発揮しているという。

マラネロ郊外で見せた458イタリアの意外なほどの快適さは、「2+2ではない」「オープントップではない」ということを除けば、カリフォルニアの存在を脅かすものであるのでは、とも感じた。

一度味わってしまったらきっと病みつきになる
交通の流れがまばらになったところでペースを上げていく。すると458イタリアの快適さは気持ちよさへと変化する。目の覚めるような加速、ハイトーンなエンジンの音色、流れるようなシフトチェンジ、きっちりと追従してくるサスペンションが、機敏なステアリングフィールと相まってドライバーに操る歓びをもたらしてくれる。アクセル開度により吸気系のバタフライやエキゾーストパイプバルブの開き方を調整、これにより最適なトルク特性を獲得しているが、それが気持ちのいいサウンドにも貢献しているようだ。

フィオラノ・サーキットではその性能を思いっきり試すことができたが、次々と音色を変えながら、レブリミット付近まで衰えることを知らない加速力は恐ろしくなるほど。ただ多少リアが滑ってもその挙動は唐突ではないので、安心してコーナーを攻めることができた。この7000~9000rpmの加速力とサウンドを一度でも味わってしまったならば、誰もがきっと病みつきになってしまうことだろう。直噴化によりサウンドや加速感が損なわれるのでは、という心配などまったく必要なかった。

もちろんワインディングでの走りも気持ちいいものだ。フロントタイヤの強大なグリップ力もさることながら、そのグリップが安定していて、ステアリングにインフォーメーションをはっきりと伝えてくれるので安心して楽しめる。スプリングは25

%ほど硬くなっているが、サスストロークをフロントで10mm、リアで15mmほど拡大しているのが効いているのだろうか、少々荒れた路面でもグリップを失うことはない。

それでも心配ならばマネッティーノを「低ミュー路」モードに設定しておけば、ドライバーの操作ミスで挙動が乱れるという事態にはならない。「スポーツ」モードや「レース」モードにセットすれば電子制御の介入は遅くなるので、それを確認しながらアクセルを踏み込んでいくといいだろう。マネッティーノの制御も進化していて、従来は「スポーツ」モード、「レース」モードとしていくと自動的にダンパーレートも硬くなっていたが、F430スクーデリアからダンパーの硬さを個別に選ぶことができるようになっている。

ブレーキもまったく安心できるものだ。標準装備されるブレンボと共同開発のカーボンセラミックブレーキの制動力はとてつもなく強力で、どんな事態に陥ろうとも即座に対処できるのではないかと思わせる。過信は禁物だが、安全に対するアドバンテージは大きそうだ。

もしこのクルマに弱点があるとすれば、その性能を使い切る機会がそう多くないということだろうか。しかし、どんな速度域、どんな状況でも操る愉しさをもたらしてくれるのもこのクルマの魅力。458イタリアは新世代V8モデルとして、従来のものとは別格と言えるほど全方位で進化を遂げているのだから。

当初は奇異に映ったそのスタイリングも、きっと美しいデザインとなっていくのだろう。(文:Motor Magazine編集部 松本雅弘)

フェラーリ458イタリア 主要諸元
●全長×全幅×全高:4527×1937×1213mm
●ホイールベース:2650mm
●車両重量:1380kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4499cc
●最高出力:425kW(570ps)/9000rpm
●最大トルク:540Nm/6000rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:MR
●最高速:325km/h
●0→100km/h加速:3.4秒
●100km/h→0:32.5m
※EU準拠

[ アルバム : フェラーリ458イタリア はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

1件
  • まるでF1のようだという事はF1を操縦した事あるんですね。凄いわ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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