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三菱のディーゼル車が絶滅の危機? 「エクリプスクロス」がPHEVに特化する狙いとは

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三菱のディーゼル車が絶滅の危機? 「エクリプスクロス」がPHEVに特化する狙いとは

■ビッグマイチェンで「エクリプスクロス」にPHEV追加

 2020年12月4日に三菱は、クロスオーバーSUV「エクリプスクロス」の比較的規模の大きいマイナーチェンジを実施して、PHEV(プラグインハイブリッド)を加えました。

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 PHEVはいまの三菱を代表する技術で、以前から搭載される「アウトランダー」では高い人気を得ています。

 従ってエクリプスクロスにPHEVを加えることは理解できますが、意外だったのは、クリーンディーゼルターボを廃止したことです。

 エクリプスクロスのディーゼル車は追加グレードで、2019年6月13日に発売されました。それを2020年12月に廃止したのですから、設定されていた期間はわずか1年半です。

 せっかく用意したディーゼル車を、なぜ短期間で廃止したのでしょうか。

 三菱に尋ねると、次のような回答でした。

「エクリプスクロスのディーゼル車は、販売比率が少なかったです。そこでPHEVと入れ替えに、ディーゼル車を廃止しました。パワートレーンの種類を増やさず、PHEVと1.5リッターガソリンターボに集中させる意図もあります」

 ちなみに2019年にディーゼル車が登場した直後は、エクリプスクロス全体に占める販売比率は約35%でした。それが最近は20%程度まで下がっていました。

 ディーゼルは排出ガス規制もあって、欧州における人気も低下しています。

 以前は欧州のディーゼル比率が高く、フランスでは乗用車全体の約70%を占めていましたが、いまは状況が変わったのです。

 エクリプスクロスの欧州仕様も1.5リッターガソリンターボで、この流れを受けて日本仕様でもディーゼル車を廃止した事情があります。

 また、三菱のPHEVに関する市場戦略も影響しています。

 PHEVはすべて4WDですが、車両の前側にエンジンとモーターを搭載して、後輪にはプロペラシャフトで駆動力を伝える一般的な4WDではありません。

 アウトランダーも含めて、PHEVは前後にそれぞれ別個にモーターを搭載。前後輪の駆動力も、2個のモーターによって別々に制御でき、前輪の駆動力を抑えて後輪を増やすなど、後輪駆動車のような駆動力配分にすることも可能です。

 4輪のブレーキを独立制御して、安定性を高めたり、車両の向きを積極的に変えるシステムも備えており、これらの相乗効果で、PHEVは車両の挙動を自由にコントロールしやすいです。

 さらにPHEVは、充電された電気で走行できるハイブリッドなので、優れた環境技術でもあります。

 PHEVであれば、走行性能や運転の楽しさと、環境性能を高いレベルで両立できます。車両のカテゴリーという意味でも、三菱が得意なSUVは車高が高く、床下にリチウムイオン電池を搭載しやすいのです。

※ ※ ※

 三菱は、PHEVをSUVに搭載して、ブランドイメージの再構築を図っています。現在の人気だけでなく、将来に向けたブランド戦略においてPHEVは重要です。

 同時に生産効率も考えると、三菱のコメントにあった通り、パワートレーンの種類は増やしたくないという事情もあるのでしょう。

■同じディーゼルエンジンを搭載する「デリカD:5」はどうなる?

 エクリプスクロスの国内登録台数は、コロナ禍の影響を受けていない2019年の時点で、1か月平均が652台でした。

 同社のミニバン「デリカD:5」の1674台に比べると40%以下ですから、多額のコストを費やしにくい事情もあります。そこでディーゼル車を廃止して、PHEVと価格の割安な1.5リッターターボに整理するというわけです。

 エクリプスクロスのディーゼル車廃止について、販売店は以下のようにコメントしています。

「エクリプスクロスは、最初はガソリンターボのみで発売されました。そのために追加されたディーゼル車は、お客さまにあまり認知されていませんでした。そのため売れ行きが伸びず、PHEVと入れ替えに廃止されています。

 それでも三菱には、パジェロの時代から、ディーゼルのSUVを好むお客さまがいます。いまはパジェロも廃止され、ディーゼルのSUVはエクリプスクロスのみだったので、廃止は残念です。

 そうなると、エクリプスクロスが廃止したのと同型の2.2リッターディーゼルを搭載するデリカ:5も心配です。デリカD:5は人気車なので、大切に造り続けて欲しいです」

 三菱によると、デリカD:5のディーゼルは、今後も安定的にラインナップを続けるそうです。

 それにしても三菱では、既に新しいディーゼルエンジンを開発していません。

 ディーゼルはターボを組み合わせることで実用回転域の駆動力が高く、燃費効率も優れているので、車両重量の重いSUVにはピッタリです。

 排出ガスに関して課題を抱えていますが、廃止するのは惜しいエンジン技術です。さらに価格の違いもあります。

 新型エクリプスクロスは安全装備なども進化しているので、従来型のディーゼル車と単純には比較できませんが、もっとも価格差の少ないベーシックなM同士で比べても、ディーゼル車が311万8500円だったのに対し、PHEVは384万8900円と、ディーゼル車に比べて約73万円高いです。

 ディーゼル車は、高い動力性能と低燃費を両立させながら価格を割安に抑え、中級のGは約330万円でした。

 この価格は、2リッターのノーマルガソリンエンジンを搭載するトヨタ「RAV4 アドベンチャー(4WD)」や日産「エクストレイル 20Xi Vセレクション(4WD)」などとほぼ同じ。

 つまりエクリプスクロスであれば、ライバル車の2リッターノーマルガソリンエンジンと同じ価格帯で、ディーゼル車を購入できたのです。

 効果的な訴求をおこなえば、販売比率が35%だった発売当初の人気を維持できたと思われます。

※ ※ ※

 PHEVは魅力的なパワーユニットですが、これほど幅広いパワートレーンを選べる国産車はほかに存在しません。

 クルマ好きとしては、クリーンディーゼルターボとガソリンターボ、PHEVを選べるエクリプスクロスであって欲しかったです。

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みんなのコメント

7件
  • 昨年、発売するやいなやクリーンディーゼル購入。トルクフルな走りに満足。トルクフルと言う面ではPHEVとキャラ被りするが、賃貸マンションなどで、自宅に充電設備を付けられない環境や高速での長距離移動を考えるとディーゼルの方が向いている。何れにせよ、今後、ディーゼルは減って行く中、せめて現モデル中は販売し続けて欲しかった。
  • 実際に売れなければ廃止もやむを得ない。欲しい人は既に持っているはず、将来の見込みが薄いと判断した会社の判断は正しい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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