南米ラウンドを終え、欧州に戻ってきたフォーミュラEは5シーズンぶりにロンドンで開催された。しかも史上初のインドアとアウトドアを組み合わせたコースで、「エクセル エキシビジョンセンター」という展示会場の1階と2階部分を使った特設コースで行なわれた。さらに建物のアクセススロープを使って駐車場から進入するという前代未聞のコースレイアウトで開催された。
そのため、コースコンディションもバラバラで非常に難しく、外のコンディションと建屋内の路面は全く異なり、さらに予選前のFPは雨というコンディションだった。一方で、フォーミュラEはパーマネントサーキットにとらわれない、どんな場所でもレースすることが可能で、排気ガスもエンジン音もないため、屋内でも住宅地でも開催できる可能性を示したレースでもあった。
レースの予選では雨は上がったものの、水たまりの残るコンディションで始まり、いつも通り4グループ各6台に分かれてタイムアタックをする。ラインキング上位順でグループ1からアタックするが、こうしたコンディションのため、後半グループのほうがドライ路面へと変わりタイムが出るというコンディションになっていた。
インドアからのスタート。ライティングの演出など新たなモータースポーツの可能性を示したグループ1、つまりランキング上位6位までの選手が最初に予選アタックをするが、タイムは1分25秒198でヴェンチューリのモルタラがFPよりタイムを2秒縮めてトップに立つ。しかし、グループ2ではあっさり24秒564でアウディのルーカス・ディ・グラッシが抜き返す。
さらにグループ3ではアンドレ・ロッテラーが23秒900で最初にアタックしたモルタラより2秒近くも速いという予選結果になった。 目まぐるしく変わる天気と路面コンディションによって、予選アタックは遅いほうが有利という予想どおりの結果になり、つづく上位6台によるスーパーポールでポールポジションが競われた。
そして、今季初となるアレックス・リン(マヒンドラ)がポールポジションを獲得。2番手にジェイク・デニス(BMW)、3位にセバスチャン・ブエミ(日産)、4位セッテ・カマラ(ドラゴン・ペンスキー)、5位アンドレ・ロッテラー(タグホイヤーポルシェ)、6位ノーマン・ナト(ヴェンチューリ)という順になった。
決勝
決勝では、異常に狭いコース設定のためかスタート直後の第1コーナーへの進入も各マシンとも慎重にアプローチ。軽い接触はあるものの大きな混乱はなかった。がしかし、オープニングラップではサム・バード(ジャガー)とアレキサンダー・シムス(マヒンドラ)が接触し、マシンは損傷、2台ともにリタイヤしている。
また今回のレースでは45分プラス1周のレース距離は変わらないものの、アタックモードの使える時間が2倍の8分間に変更されている。これは狭いコースで抜きどころの難しいコースレイアウトを考慮したのかどうか。1周2.25kmの周回コースで24台のマシンがひしめく争いだけに、アタックモードがどの程度順位争いに影響するのか興味深いものがあった。
しかしながら、レースはそれほど大きな混乱はなくアタックモードも各チームとも早い段階で2回使用の義務を消化していた。
スタートからリンとデニスはトップ争いをし、3位のブエミが後続に蓋をするよな形でレースは進行。15分を経過した時点で、リン、デニス、ブエミ、ロッテラー、デ・フリースという順は変わらない。 中盤から後半になるとトップのリンのペースが上がらず、アクティベートゾーンへ飛び込む隙きにデニスがトップを奪う。デニスはアタックモードのリンの追撃を交わしトップを堅持。30分経過した時点でデニスはリンに約4秒のリードを保ち安定したトップ走行をしている。
後続ではブエミをデ・フリースが交わし3位浮上。その後タイムの上がらない2位リンにも迫り、残り5分となったところで2番手のリンをデ・フリースが第10ターンのダブル・ヘアピンの飛び込みで抜き去った。
シーズン7で活動を終了するBMWだが、完璧な展開で今季2勝目をジェイク・デニスがあげたレースはそのままデニスの独走でチェッカー、2位デ・フリース、3位リン、4位ブエミ、5位ロッテラー、6位ラストという順だったが、なんと日産勢はレース後、ローランドとともにブエミはオーバーパワーユースで失格となる波乱があった。
シーズン大詰めを迎えつつある中でポイントリーダーは混迷を極め、12戦終了した時点でのトップはサム・バード81点でトップ。つづいてジェイク・デニス79点、アントニオ・ダ・コスタ78点、ニック・デ・フリース77点、ロビン・フラインス76点となっている。
チームポイントではDSテチータとエンヴィジョン・ヴァージンが146点で並び、優勝回数の多いDSテチータがリーダーだ。続く3位にジャガー141点、メルセデスEQ135点、BMW133点と続いている。日産は92点で10チーム中8位と低迷している。
第13戦のスタート
そしてレースは翌日第13戦が同じロンドンの特設コースで開催された。
このコースで前日第12戦が行なわれたため、コースにはラバーがのりグリップの上がっている状況で予選が始まった。最初に走るグループ1ではメルセデスのデ・フリースがトップタイプを出すが、グループ2ではチームメイトのヴァンドーンが上回りメルセデスのワンツー。そしてグループ3では前日もトップを快走していたアレックス・リンが全体トップタイムを出して暫定ポールを獲得した。
迎えたスーパーポールには、リン、エヴァンス、ヴァンドーン、ローランド、ギュンター、デ・フリースが進出。ここではヴァンドーンがトップを奪い返しポールポジションを獲得。2番手にローランド、3番手リン、以下デ・フリース、エヴァンス、ギュンターと続いた。
ヴァンドーンはポールからスタートするものの、レース中盤追突されてリタイヤしてしまう決勝ではポールからスタートのヴァンドーンが首位をキープし、大きな混乱もなくオープニングラップを終える。デ・フリースは得意のダブルヘアピンの入り口でリンを交わして3位に浮上。ローランドも2位をキープする。
レース中盤になると少し順位が動き、狭いコースのためあちらこちらで接触があり、コース上にデブリが散らばることも多かった。デ・フリースは乗れているのだろう、ローランドも交わしてメルセデスのワンツー体制をこの時点で築いた。
またダ・コスタが前を走るロッテラーのインを刺すもマシンを寄せてダ・コスタはコースアウトしクラッシュ。これでロッテラーはペナルティを受け戦線離脱してしまう。またランキング上位のヴェルニューとモルタラも接触しお互いにポイントを失う展開に。
そしてSCが先導しているときに、ディ・グラッシはピットインをし、その直後に再スタートをしてSCの直後に入るというトリックを使ってトップに出たことになるが、審議対象となりドライブペナルティを受ける。だが、ペナルティを消化せず2周以上走行したため、途中で失格を意味するブラックフラッグを受けてしまう。
これはディグラッシの判断ではなく、チーム戦略であったようでアウディ代表のアラン・マクニッシュはレギュレーションどおりにピットイン、ストップ、リスタートをしていると主張していたが、結果は失格のまま変更されていない。
ロンドンでは英国人ドライバー7名が参戦。ジャガー・レーシングのミッチ・エヴァンス(豪州)は3位に入ったレースはディ・グラッシがトップを走り、デ・フリースとリンの3台でトップ争いを演じるが、事実上は2台でのトップ争いになる。少し間隔を開けてエヴァンス、ギュンター、フラインス、ヴェアラインで3位争いを展開。
そしてトップ争いではリンがファンブーストを使ってデ・フリースを交わし2位に浮上。事実上トップになり、そのままチェッカーを受けた。
アレックス・リン(マヒンドラ)はフォーミュラE初優勝を飾ることとなり、総合でも6位にま で浮上した。
フォーミュラE初優勝となった地元アレックス・リン。右はマヒンドラ代表のギルCEO2戦続けて2位に入ったニック・デ・フリース(メルセデスEQ)第13戦の結果は前日3位のリンが優勝、2位は前日に続いてニック・デ・フリース(メルセデスEQ)、3位ミッチ・エヴァンス(ジャガー)が表彰台を獲得。以下ロビン・フラインス(エンヴィジョン・ヴァージン)、パスカル・ヴェアライン(タグホイヤーポルシェ)、マキシミリアン・ギュンター(BMW)が6位だった。
フォーミュラEシーズン7も残すところあと2レース。8月14日、15日に行われるベルリンでシリーズチャンピオンが決まる。今季は10人の優勝者が出ており、混迷を極めている。もちろん、チームランキングも大混戦が続いている。
ドライバーズランキング
13戦終了時点でのシリーズランキングは以下のようになっている。
1位ニック・デ・フリース(メルセデスEQ)95点
2位ロビン・フラインス(エンヴィジョン・ヴァージン)89点
3位サム・バード(ジャガー)81点
4位ジェイク・デニス(BMWiアンドレッティ)81点
5位アントニオ・ダ・コスタ(DSテチータ)80点
6位アレックス・リン(マヒンドラ)78点
7位ニック・キャシディ(エンヴィジョン・ヴァージン)76点
8位ミッチ・エヴァンス(ジャガー)75点
9位エドアルド・モルタラ(ロキット・ヴェンチューリ)74点
10位レネ・ラスト(アウディスポーツ・アプト・シェフラー)72点
となっているものの、優勝は25点入るので、計算上は11位のパスカル・ヴェアライン(タグホイヤーポルシェ)までがチャンピオンの可能性はある。
チームスタンディング
一方、チームランキングは
1位;エンヴィジョン・ヴァージン・レーシング 165点(アウディのPU)
2位:メルセデスEQフォーミュラチーム 158点
3位:ジャガー・レーシング 156点
4位:DSテチータ 148点
5位:BMWiアンドレッティモータースポーツ 143点
6位:アウディスポーツ・アプト・シェフラー134点
7位:マヒンドラレーシング 122点
8位:タグホイヤーポルシェフォーミュラチーム 116点
9位:ロキット・ヴェンチューリ 91点
10位:日産eダムス 79点
11位:ドラゴンペンスキーオートスポーツ 47点
12位:NIO333FEチーム 18点
同じく優勝チームには25点が加算されるので、5位のBMWまでがシリーズチャンピオンの可能性を残している。
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