バクー市街地サーキットで開催されたF1アゼルバイジャンGP。決勝を9位で終えたメルセデスのルイス・ハミルトンは、マシンのバランス問題に対応するため、走行中にステアリングを「ぐいっと引っ張る」ように切る必要があったと語った。
メルセデスは予選で7番手に終わったハミルトンに対して、パワーユニット(PU)のコンポーネントのうちICEとTC、MGU-H、MGU-Kを5基目に換装した。加えてサスペンションを変更したため、ハミルトンはピットレーンからのスタートとなった。
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決勝終盤には上位を争っていたレッドブルのセルジオ・ペレスとフェラーリのカルロス・サインツJr.のクラッシュが発生し、ハミルトンは混乱に乗じてハースのニコ・ヒュルケンベルグを交わしたことで、9位でチェッカーを受けた。
ピットレーンからの入賞という復活劇を見せたハミルトンだが、バクーの90度コーナーではステアリングをねじ伏せて走らなければならないというフラストレーションのたまるレースを経験したようだ。
ハミルトンはチームに無線で、自身の異例のドライビングスタイルについてこう口にした。
「僕がどうやってドライブしているか分かる?」
これはメルセデスW15のハンドリングに大きな問題を抱えていたことを示しており、ポジティブな初日を終えてマシンに小さな変更を加えたことで発生した。
「おそらく、これまでで最悪のバランスだった」とハミルトンは言う。
「フロントエンド(のグリップ)が強すぎて、リヤがなかった」
「フロントのトラクションを切るためにステアリングをぐいっと引っ張るように切って、全てのコーナーでスライドさせる必要があった。最も奇妙なドライブ方法だった」
「今回はオーバーテイクできないと思っていた。そういうサーキットのひとつだ。なぜ土曜日から僕らのペースがあんなに悪かったのか分からないよ」
オーストラリアGPでトラブルによりPUを1基失っていたハミルトンは、今シーズンのどこかで規定数超過のグリッド降格ペナルティを受けることになっていた。
メルセデスのトト・ウルフ代表は、続くシンガポールGPはさらに追い抜きが難しく、アメリカGPに大きな期待を寄せているため、アゼルバイジャンGPでグリッド降格ペナルティを受けることにしたと説明した。
「我々はここでPU交換を行なうことを決めた。バクーではオーバーテイクが難しいから、惨めなレースになると分かっていた」とウルフ代表は言う。
「それが現実だった。(前車に)接近した瞬間にタイヤがオーバーヒートして、そのまま後退してしまう」
「ふたつの異なるフィロソフィーがあり、我々はじっくりと話し合った。7番手からのスタートでどこへ行くか分からなかったから、ここで潔くペナルティを受けるか、オースティンでやるか。でも、オースティンはチャンスだと思っていたから、そう(今回投入すると)決めた。正しいか間違っているかは分からない。危なかったよ」
メルセデスはアメリカGPで投入予定の新フロアに望みを託している。アゼルバイジャンGPでは旧仕様に戻したものの、まだ決定的な結果は出ていない。
「このサーキットは例外的なコースだけど、それでも昼と夜ほど違うわけではない。しかし新フロアの時と同じバランス性能に苦しんでいる。シンガポールには同じモノを持ち込む予定なので、それでレースをする必要がある」
「しかしオースティン以降は、おそらく新しい仕様になるだろう」
メルセデスの不可解なスイートスポットは、アゼルバイジャンGPでのジョージ・ラッセルのペース推移でも説明ができる。
ラッセルは第1スティントではミディアムタイヤで苦戦したが、ハードタイヤでの第2スティントでは競争力を発揮。上位勢の脱落もあり3位表彰台を獲得した。
「序盤はドライブが難しかった。(DRS)トレイン内でポジション争いをしている時はトリッキーだった、明らかにマシンは十分ではなかった」とウルフ代表は説明した。
「バランスが悪く、ついていくことができなかった。我々はそれで苦しんでいた」
「第2スティントは本当に素晴らしかった。序盤こそ苦戦したが、ジョージがマシンを正しい形で走らせたおかげで、マシンがバランスを取り戻した後は、我々が最も速いマシンになったこともあった」
そしてウルフ代表はこう続けた。
「実のところ、これはどのチームがバランスを可能な限り良くできているのか、どのチームがタイヤを適切なウィンドウに入れられているのか、そしてどの空力コンセプトがそのサーキットで上手く機能するかということなんだ」
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