町を走るタクシーの車種は、近年多様化を見せている。その背景にはワンボックスやミニバンを使ったワゴンタクシーといったサービスの多様化や、個性や上質さを売りとしたレクサスをベース車にしたタクシーの登場などもある。
またプリウスやリーフなどの環境に配慮した車種の導入もある。
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そんな中2017年にJPN(ジャパン)タクシーが登場すると、国から補助金が出ることもあって普及が進み、特に都心部では多く見かけるようになった。
しかしそんなJPNタクシーの牙城を脅かす車種が、同じトヨタから登場した。それがシエンタベースのタクシーだ。
今回はシエンタ人気の背景に迫る。
文:小林敦志/写真:ベストカー編集部、TOYOTA
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■他社ライバル車と比較したシエンタの盛衰はタクシー仕様の影響?
近年多く見かけるようになったJPNタクシー。そのベース車両となっているのがシエンタだ
“カローラvsサニー”といった、ボディサイズやコンセプトが被り、まさに“ガチンコ”で販売台数を競うといったライバル関係を構築する車種は、大昔に比べればその数はかなり減っているが、軽自動車やコンパクトカー、ミニバンなどをメインにいまでも存在する。
そのひとつがトヨタ シエンタとホンダ フリードとなるだろう。
自販連(日本自動車販売協会連合会)統計を整理し、両車が現行モデルとなりフルカウントとなった2017年から2019年までの暦年締めでの年間販売台数を比較すると(図1参照)、2017年はフリードが勝っているのだが、2018年はシエンタがフリードに逆転、2019年ではさらに販売台数で大差をつけるようになった。
図1 シエンタとフリードの暦年締め年間販売台数推移
2019年に大差でシエンタがフリードに勝つこととなった一因としては、2列シート仕様の追加設定と、それに伴うシエンタをベースとしたタクシー車両としてのニーズの増加があるものと考えられる。
2020年1月~6月までの月別販売台数をみると(図2参照)、1月こそ僅差ではあったが、5月までは一定の台数差をある意味維持しながら、シエンタがフリードに勝っていた。
4月、5月になると新型コロナウイルス感染拡大による販売台数の落ち込みも同じペースを見せていた両車だが、6月になるとフリードは5月に対し目に見えて復調傾向を見せたのだが、シエンタはそのままさらに販売台数を落とした。
図2 2020年上半期販売台数の推移
このような結果となったことについては、シエンタはタクシーニーズも加わり販売台数の上積みを行ってきたのだが、新型コロナウイルス感染拡大により、タクシー事業者の多くが緊急事態宣言発出中をメインに、稼働台数を押さえて営業運行を続けたことにより、収益が圧迫したことにより新車への入れ換えを見送る動きが顕著となり、これがシエンタの6月の販売台数に影響を与えたものと考えられる。
■脇腹に輝く東京2020ロゴ ご存知JPNタクシー登場!
大きく開くスライドドアとハイルーフで乗降がしやすいJPNタクシー。もはや見かけない日はないといっても過言ではない
しかし、トヨタにはタクシー専用車といってもいい、“JPNタクシー”がラインナップされている。LPガス ハイブリッドエンジンを搭載し、クラウンコンフォート比では飛躍的に燃費性能が改善され、MPVスタイルの採用により車いすを使ったままで乗降を可能とするユニバーサルデザインにもなっている。
しかし、車両価格がクラウンコンフォート比で100万円ほど高くなっており、とくに地方の事業者では新車での入れ換えに難色を示す動きも目立った(地方はクラウンコンフォートの時代から新車では負担が重く、東京などの都市部で使ったコンフォートやクラウンセダンのタクシーを中古で購入し車両の入れ換えを行うことが多かった)。
販売現場もこのような事業者の反応はキャッチしているようで、タクシー車両としては破格ともいえる、お手ごろなリースプランを設定し、タクシー事業者へのリース販売を積極化しているとの話も聞いている。
トヨタは消極姿勢を見せていたとされているが、タクシー業界の強い要望でLPガスハイブリッドエンジンが開発され、それが搭載されたJPNタクシーがデビューしている。
■高価なわりに使い勝手は「?」 JPNタクシーの意外な評価
乗務員からの評判は決してよいとはいえないJPNタクシー。ラゲッジスペースや最大乗者人数が物足りないという
しかし、“和製ロンドンタクシー”とも呼ばれたJPNタクシーであったが、ラゲッジスペースの積載性能はMPVスタイルの割にはクラウンコンフォート並みにとどまり、ロンドンタクシーは最大6名まで乗車できるのに、JPNタクシーは助手席と合わせて4名となるなどMPVスタイルの恩恵が少ないとの声も出ていた。
また、車いすのままでの車内乗り入れも、“ロンドンスタイル”とも呼ばれる、ボディサイドからの乗り入れを採用しているが、タクシー乗務員の間からは、“日本の道路事情を考えればリアラゲッジドアから乗り入れができるほうがよい”との声もある。
そして、価格も高いということもあり、一部地域では不買運動のようなものが起きたり、クラウンコンフォートの新車を生産終了間際に大量に仕入れ、ナンバープレートをつけずに自社でストックする事業者まで出てきた。
業界の要望もあって開発されたJPNタクシーだが、運行現場の声を十分すくい上げることはできなかったようである。
■現場の不満はこれで解決? シエンタに2列シート仕様が追加設定!
現場の不満を払拭するように登場した2列シート仕様のシエンタ。JPNタクシーにかわる乗務員の救世主となるか
事業者の間ではJPNタクシーの正式発売前から、JPNタクシーがシエンタベースということで、ハイブリッドで3列シートのシエンタを購入し、サンプルとして営業運行に使う事業者もいた。
そしてシエンタに2列シート仕様が追加設定された。2列シート仕様のハイブリッドモデルを購入し、LPガスも燃料として使えるように改造し、ガソリンも使えるバイフューエル仕様に改造しても、JPNタクシーを導入するより安くあがるということで、シエンタタクシーはある意味順調に街なかに増えていった。
皮肉な話だが、燃費性能に優れるJPNタクシーの登場により、LPガススタンドのニーズが激減。東京23区内ですら、LPガススタンド空白地帯が生まれることとなった。
地方部におけるLPガススタンドの廃業はさらに深刻な状況にあり、いまではガソリンハイブリッド車がタクシー車両のメインとなっている地域もある。そのため地域によってはLPガスが使えるようにする改造を必要としない地域もあるので、ますますシエンタタクシーの魅力が高まっている。
■本当に便利なのはベース車両のほう? 高まるシエンタへのニーズ
ゆったりした2列シートに広いラゲッジスペースを備える。「シエンタにそのままタクシー仕様を設ければよかった」という現場の声も
都市部でも東京都内大手の事業者が、シエンタタクシーを一気に100台増やす(入れ換え)といった動きもあり、シエンタタクシー人気はまだまだ拡大していきそうである。
タクシー業界に近いある事情通は、
「ユニバーサルデザインを採用し、車いすに乗ったまま乗降できるJPNタクシーは、車いすを使われているひととの間での乗車拒否などのクレーム(乗務員が車いす乗降のためのスロープ設置を面倒くさがったり、その設置に時間がかかるなどが理由)が多く、時おりメディアでもその様子が取り上げられることがあります」
と語る。さらに、
「しかしユニバーサルデザイン対応していないシエンタでは、そのようなクレームを心配する必要がないとの理由でシエンタタクシーを積極採用するといった動きもあるようです」
と語ってくれた。
「シエンタにそのままタクシー仕様を設ければよかった」、このような声もタクシー業界内では聞かれるようになっている。
いまは新型コロナウイルスの感染拡大が収束を見せないこともあり、一時的にタクシー車両自体の入れ換えを手控える動きが出ているものの、シエンタタクシーを導入する動きは今後もまだまだ盛り上がりを見せていきそうである。
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みんなのコメント
タクシー会社も介護支援車両としてJPNタクシー登場よりも前にシエンタを使っているのを見てますし、東京オリンピックから離れた地域を筆頭に、使い勝手が良ければタクシー会社が選ぶのも当然でしょう。