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超名門レガシィが風前の灯!? スバルの宝が日本クルマ界に遺した軌跡

掲載 更新 6
超名門レガシィが風前の灯!? スバルの宝が日本クルマ界に遺した軌跡

 スバルを、いや日本を代表する名門車が岐路に立たされている。

 2020年4月、東京スバルは公式サイトで「レガシィB4」の注文受付を、2020年6月22日をもって終了すると公表。その後、スバル広報部に確認したところ、レガシィB4の国内受注を終了することを認めた。

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 そうなると「レガシィ」の名前を冠したモデルは(国内市場では)「レガシィアウトバック」のみとなるが、しかしこちらも次期型(米国で発表済み)は「アウトバック」という車名に切り替わる可能性も取りざたされている。

「レガシィ」という、かつて一時代を築き上げたブランドが、いまはもはや風前の灯なのである。ここであらためて、レガシィとはどんなクルマだったのか。どのように日本市場で活躍したかを、あらためて振り返ってみたい。

●関連記事→【速報】レガシィB4の国内販売終了が決定 BRZは7月受注終了で新型登場へ

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文:片岡英明/写真:SUBARU

■初代レガシィ(1972-1979年)…誕生 そこへ至る系譜

 今から50年以上も前に、まだ「富士重工業」と名乗っていたスバルは、水平対向エンジンに注目し、スバル1000を送り出した。

スバル1000(1965年)

 水平対向エンジンの利点は、全長と全高を抑えることができ、重心を低く下げられることである。軽快なハンドリングのクルマにしやすいし、安全性に対するメリットも少なくない。

 そしてスバル1000の後継となるレオーネでは、今につながる乗用4WDの分野を切り開いている。

スバル レオーネ(1971年)

 そんなスバルは、1980年代半ばにはシンメトリカルAWDの未来をかけ、新しい発想のセダンとツーリングワゴンの開発を行った。

 この意欲作は「LEGACY」と命名され、年号が平成に変わった1989年1月23日にベールを脱いでいる。車名の「レガシィ」は「大いなる伝承物」という意味だ。

 レガシィはデザインもメカニズムも一新して登場した、新世代のスバルを象徴するミディアムクラスのファミリーカーである。

 その心臓は2019年までスバルを牽引し続けたEJ20系の水平対向4気筒DOHC4バルブだ。RSとツーリングワゴンGTはパワフルなEJ20型水平対向4気筒DOHCにターボを組み合わせ、刺激的な走りを見せた。

 FF車もあるが、主役はシンメトリカルAWDと呼ぶ進歩的なフルタイム4WDである。

■2代目(1979-1983年)-5ナンバーサイズの保持

 初代レガシィは、4輪駆動のツーリングワゴンを中心となり、新たな市場を開拓することに成功した。DOHCターボに4WDの「GTシリーズ」は、スポーツワゴンの分野までもメジャーな存在に押し上げている。

 ワゴンに引っ張られる形でセダンも息を吹き返した。

 1993年10月に初めてのモデルチェンジを断行し、デザインもメカニズムも正常進化の形をとっている。

 5ナンバーの小型車枠にこだわったが、商品性と動的性能はライバルを寄せつけなかった。フラッグシップのGT系はターボをツインターボ、2ステージ化している。

ツーリングワゴンGT(1993年)

 4WDシステムも3種類を揃えた。GTの4速AT車は、走行状況に応じて前後のトルク配分を変え、安定性や旋回性能を高める不等&可変トルク配分電子制御4WDのVTD-4WDだ。

 スカイラインGT-Rと同様の高度なメカニズムとパワフルなターボパワーを、ほぼ半額で提供したのだから売れないはずはなかった。

 カルディナやアベニールが追いすがったが、バン出身のワゴンと専用設計のレガシィとの差は明らかだ。

■安全性能へのこだわり

 当時は今と違って安全性に対する認識が薄く、日本車の多くはボディがヤワだった。また、衝突安全性能と危険回避性能もヨーロッパ車に大きく後れをとっている。

 だが、航空機メーカーを母体とするスバルは、走りの実力だけでなく「安全」に対するこだわりも強い。

 だから強大なトルクのターボエンジンに負けない強固なシャシーを開発した。

 路面や天候に関わらず安全に、愉しく運転できるシンメトリカルAWDにも磨きをかけている。この真摯な姿勢は今のスバル車にも見られるDNAだ。

 2代目レガシィは積極的にバリエーションを拡大し、1995年夏に「グランドワゴン」を投入した。

2代目レガシィ グランドワゴン(1995年)

 これは「ランカスター」と改名し、現在は「アウトバック」を名乗っている。今につながるクロスオーバーカーの先駆車で、流行に火をつけた。

 また、名門ビルシュタイン製のダンパーを採用し、走りの実力を一気に引き上げたことも特筆できるポイントのひとつだ。

■3代目~4代目(1998-2009)…ツーリングワゴン/B4体制の確立と充実

 1998年6月に3代目のツーリングワゴンがベールを脱ぎ、セダンは半年後に「B4」と名を変えて登場する。時代に先んじて車両挙動安定制御のVDCを標準装備したグレードを設定したのも、この3代目だ。

 スバルは早くからステレオカメラやレーダーに関する研究を始めていたが、ランカスターに採用したADAも注目の安全装備である。

 この運転支援装備は2003年にステレオカメラにミリ波レーダーを組み合わせたシステムに進化。4代目では「アイサイト」に発展させ、5代目で普及させている。これもレガシィの偉業と言えるだろう。

 2003年に登場した4代目レガシィは初めて3ナンバーのワイドボディを採用し、運動性能を飛躍的に高めた。

 この年、レガシィは日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝き、12月には国内販売累計100万台の偉業も達成している。

 もちろん、北米を中心に海外でも売れに売れた。2006年に新しいドライバーアシスト装備のSIドライブを、2008年にはアイサイトを投入と、攻めの姿勢を貫いている。

■5代目(2009-2014)…アウトバックの台頭と北米への進出

 劇的な変身を遂げるのは2009年に登場した5代目レガシィだ。

 北米で人気の高いアウトバックを主役に据え、エンジンを2Lから2.5Lに拡大するとともにCVTのリニアトロニックを主役にしている。

 ボディもひと回り大きくした。快適性を高めた第5世代のレガシィは北米で大ヒットした。だが、日本では4代目ほどの人気を得られず失速する。

 一世を風靡したツーリングワゴンも販売を落ち込ませ、セダンのB4より販売台数が少ない月が増えてきた。

■6代目(2014年-)…スバルが決して失ってはならないレガシィの遺産とは

 レガシィは2014年秋に6代目にバトンを託している。世界基準の大柄なボディをまとい、ドル箱だったツーリングワゴンは整理(廃止)した。また、自然吸気エンジンだけに絞り、ターボ搭載車は消滅させている。

 レガシィらしさ安心感のある走りは受け継がれた。だが、魅力のひとつだった水平対向エンジンの個性は薄れている。

 レガシィの魅力は、メカニズムに対するエンジニアの強いこだわりだ。エンジンも駆動方式も個性的で、運転支援システムのアイサイトやSIドライブも時代に先駆けて採用した。

 レガシィを熱狂的に愛するスバリストは、運転するのが楽しいスバル車のメカニズムに、畏敬の念を払うとともに惚れ込んでいたのだ。

 が、5代目からレガシィは軸足を北米に置いた。

 ボディを大きくし、メカニズムや素材のコストダウンも目立つようになっている。ターボを搭載したスポーツモデルがなくなったのも痛手だ。

 環境性能において一級の実力を持つハイブリッド車でもあれば、そのハンディをはねのけることができただろう。

 だが、その回答は先送りされ、ファンを失望させた。また、デザインから若さが消えたこともユーザーのレガシィ離れを引き起こしたと言えるだろう。

 リーマンショック以降、レガシィはコストダウンに走り、日本の熱狂的なファンを大事にしなくなっていたといえるのではないか。

 だからインプレッサとレヴォーグにスバルの代名詞としてのポジションを奪われ、影の薄い存在となった。

 ワゴンブームが去ったと言われるが、BMWやメルセデス・ベンツ、アウディなどのワゴンは日本でも売れている。スバルは自らの手でフタを閉めてしまったのだ。

 たゆまぬ努力によって、神話を作り、多くの人に感動と喜びを与えてきたレガシィ(アウトバックではない)の戦う姿勢を、今一度スバルの首脳陣とエンジニアは思い出してほしい。

●【画像ギャラリー】スバルの、日本の至宝!!! 歴代レガシィをギャラリーでチェック!!!

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みんなのコメント

6件
  • ステーションワゴンを流行させたビッグネームも、ステーションワゴンの流行がじり貧になり、セダン不振と合わせて名前が消えそうなんて、時代の流れとは恐ろしいもんだな・・・
  • 最後のレガシィツーリングワゴンGTのMTに乗ってます。
    当時、レヴォーグが発売されたばかりですが、実車の車内が余りにも狭く、また、
    事実上のインプレッサWRXワゴンの後継に見えたので、MTのあるレガシィを購入しました。
    結果は、未だに大満足です。
    やはり、スバルは水平対向エンジン、AWDの他に、
    「レガシィ」「ターボ」「マニュアルミッション」もあるべき姿だと思います。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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