ボディ前後をさらに差別化、GT-500も登場
コンパクトカーであるファルコンのシャシーを利用し、1964年に登場したスタイリッシュな2ドア・スペシャリティカー、フォード・マスタング。その要諦は、本物のスポーツカーではないのにスポーツカー風の装いであるということだが、販売促進につながるイメージ・アップを目的に、フォードはマスタングのレース投入を早々に決意する。このためSCCAのホモロゲーションに合致させ生産されたのが、シェルビーGT-350である。
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【画像18枚】スゴ味の利いたルックスが魅力のGT-350とそのディテールを見る!
1965年型で登場したシェルビーGT-350だが、フォードは開発から製造・販売までをシェルビー・アメリカンに委託した。こうして生まれた同車は、通常のマスタングとは全く別物のスパルタンなモデルである。搭載されるエンジンはマスタングに元々オプション設定されていた289-cid(4.7L)のV8であるが、様々なチューニングにより、通常の最強版より30hp以上強力な306hpを発揮した。
ホモロゲ取得に必要な製造・販売台数は100台以上であったが、1965年型は計562台を製造。しかしあまりにハードなその仕上がりに、高価なトップモデルという認識で購入したオーナーからは、苦情の声が少なくなかった。そのため、シェルビー・マスタングは翌年からラグジュアリー度を向上させていくこととなる。登場3年目のモデルである1967年型は、フロントグリルのパターンだけでなく、ボディの前後パネルそのものから異なる専用のデザインを与えられ、通常のマスタングとの差異を強化していた。
この年からベースのマスタングはボディを若干大柄にしており、それに伴う重量増を嫌ったシェルビーは、この前後パネルにファイバーグラスを使用。フロントはマスタングよりも鋭く薄く前方に伸び、このため全長もマスタングより長くなっている。リアエンドはダックテール状に持ち上がった形が特徴で、テールレンズもマスタングの小さな縦3連型のものから横長のものに変更されていたが、これは同年型マーキュリー・クーガーからの流用であった。
スパルタンな部分は前年型ですでにいくつか姿を消していたが、この年にはリアシートやパワーステアリング、パワーブレーキが標準装備(レスオプションもあり)となり、エアコンも用意。その一方で、ロールバーが標準装備となるなどの変化もみられる。エンジンは289-cidで、306hpの最高出力は変わらない。なお、オプションとしてパクストン製のスーパーチャージャーがひっそりと用意されていた。これによって約400hpまでのパワーアップが見込まれたが、表立ってのアナウンスはされていなかった。
またこの年は、428-cid(7L)を搭載したGT-500も新たに登場。こちらの最高出力は355hpとされているが、実際にはそれ以上のパワーを発揮していたとも言われる。外観からのGT-350との識別点は、サイドストライプのロゴのみだ。こちらにも、400hp以上を発揮する427-cidがオプションとして密かに用意され、数台が生産されたという。
フロントマスクはちょっとだけアレンジしてレアな仕様に変更
1967年型シェルビーGT-350はAMTから1995年に1/25スケール・プラモデル化されている(No.6633)。このキットは、ほぼ同じ頃に発売されたマスタングGT(No.6631)とボディシェル、エンジン、シャシー等共通のものであるが、GT350のキットのほうがGT版に比べ、手のかかる内容となっている。
ボディは肉厚ではあるが、目立ったヒケもなく扱いやすいものだ。マスタングGTとの共用であるため、エンブレム類はモールドされておらず、デカール表現となっている。通常のマスタングGTとの相違点であるフロントパネルとリアパネルおよびトランクは合いが悪く、このキットの制作工程の中で最も手間のかかる箇所だ。チリが合わないだけでなく幅も違っているので、通常の調整だけではすまない。
作例では流し込みタイプの接着剤で強引に溶着させ、完全に固まってから表面を整えたうえで、デザインナイフによりパネルラインを入れ直している。このキットのようにパーツの接合部がパネルラインの場合、Pカッター等でラインを入れ直すと、仕上がりが汚くなる場合があるので注意が必要だ。
このクルマはエアスクープが多いが、それらのスクープを開口してエッジをシャープにしてやると、モデルの仕上がり具合が格段に良くなる。特にボンネット上のところは、慎重な作業を必要とするがぜひトライして欲しいところだ。他にフロントパネルのパーキングライト部分の表現が曖昧なので、作例ではライト部をドリルで開口、3.2mm径のプラパイプを埋め込んで整形している。バンパーは今回は手を加えなかったが、フロントは幅が広くボディ側と合っていない。メッキパーツゆえその修正には決断が必要だ。
この作例では、グリルをキットの仕様と違うタイプのものにしている。パッケージの実車写真に見られるように、ハイビームをグリル中央に寄せて装着し、グリル右側に車名ロゴのバッジが付くのが標準のスタイルだった。しかし州によってはこれが不可であったようで(ヘッドライト2灯の間の寸法が定められている場合)、その場合はハイビームをグリル両端に寄せていたようだ。これにあたるのがどの州なのかまでは確認していないので、ライセンスプレートのウェストバージニアとは齟齬があるかもしれない。
インテリアは、マスタングGTと違うステアリングホイールやロールバーの追加など、ディテールがキチンと押さえられていてなかなか良い。修正点としては、GT用のセンターコンソールのガイド穴を塞ぐことと、ステアリングホイールがダッシュからすこし離れすぎのようなのでコラムの取り付け部を1.5mmほど削ること、この2点が挙げられる。
シャシーおよび足周りは特に問題となるところは無いが、フロントのトレッドが少し広いので、インナーホイールのブレーキと接するところを削り狭めてあげるとよい。車高はキットのままで問題ないだろう。ボディカラーはコードIの「LIME GOLD」を選んでみた。このカラーは1967~1969年型に設定されている。調合は、クレオスのMr.カラーC6グリーンに、C4イエローとC8シルバーを加えている。サイドストライプはキットのデカールを使用したのだが長さが短く、作例ではマスタングGT用のデカールを継ぎ足して対処している。
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