アフターブランドのホイールと純正ホイールを比較
クルマの定番カスタマイズといえば「ホイールのドレスアップ」。だが、巷間さまざまなアフターパーツブランドが、あらゆる用途、豊富なデザインで星の数ほどホイールは売られている。
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では実際に走行性能という面では、交換するとどのようなメリット、変化があるのだろうか? 今回、日本を代表するホイールメーカー「RAYS」が、大阪府・泉大津フェニックスの特設コースで実際に比較テストを行った。その模様をお伝えしよう。
タイヤ銘柄を揃え、人気のSUVでホイールの比較テスト
今回テストしたのは今人気のヘビーデューティSUV2台。トヨタ・ランドクルーザープラドと、スズキ・ジムニーだ。タイヤ銘柄を揃え、純正ホイールと「RAYS」製ホイールを履き比べる。
テスト項目は加速、制動、旋回の3種類。ひとつ目の加速は、静止状態から100km/hまで加速し、そのタイムを計測する。ふたつ目の「制動」は同じくゼロ発進で約100m先の目印でフルブレーキし、その制動距離を計測。最後の「旋回」は、約10m間隔に4つパイロンを置き、官能評価を行う。 テストドライバーを担当するのは、SUPER GTをはじめとしたレースに数多くの参戦経歴をもつベテラン、井入宏之選手。テスト前には「まったく忖度しませんからね(笑)」とコメントしてくれた。
装着ホイールは、ランドクルーザープラドには「VOLK RACING TE37 XT」をチョイス(以下TE37 XT)。サイズは17×8J、インセット20。1本あたりの重量は8.3kgだ。
純正サイズは17×7.5J、インセット25、重量は13.45kg/本。1本あたりの重量は5.15kgも異なる。
一方のジムニーは「VOLK RACING TE37 XT for J」をチョイス(以下TE37 XT for J)。ランドクルーザーと銘柄は同じだが、ジムニー専用設計モデルとなる。サイズは16×5.5J、インセット20。1本あたりの重量は6.25kg(※ブロンズの場合。今回撮影の関係上助手席側にブラックを装着。ブラックの重量は6.35kg/本)。
純正サイズは16×5.5J、インセット22で、1本あたりの重量は6.58kgである。TE37 XT for Jは純正ホイールより僅かに軽い。
装着タイヤはランドクルーザープラドはTE37 XT、純正ともに「TOYO Open Country A/T plus」で統一(サイズは265/7-R17)。
ジムニーはTOYO OPEN COUNTRY A/T EXを履くことにした(サイズは215/70R16)。 テスト日は11月上旬にしては暖かく、泉大津フェニックスは海沿いにもかかわらずほぼ無風。最高のコンディションのもと、テストはスタートした。
テスト1:ランドクルーザープラド/TE37 XT
まず、井入選手は純正ホイールを履いたランドクルーザープラドのステアリングを握り、コースイン。「加速テスト」ではそれほど感じなかったが、ふたつ目の「制動テスト」では、やや車体が暴れているように感じた。ABSが作動しているのがわかる。一見コンディションの良いアスファルト路面に見えたが、一部は砂が載っていたり、路面のうねりがあるようだ。最後のスラロームも淡々とこなしているが、やはりこちらもうねった路面に車体が揺れている印象。
そのままTE37 XTに交換し、すぐにテストに入る。プラシーボかもしれないが、はたからみていても明らかに加速性能がいいように感じる。
制動テストでは、ABSがあまり介入することなく、スムースに停止。最後のスラロームに至っては、アクセルをかなり長く踏んでいるように見える。
テストを終え、井入選手は語る。
「全部良くなっていますね。まず加速に関してですが、レスポンス、転がり出しが良くなっているのを感じました。スピードが乗ってから、正直違いはわかりません。これはきっと慣性重量の違いなんでしょうね。制動、今回のテストではこれが一番違いがよくわかりました。ブレーキポイントでは70km/hほど出ているのですが、まず、ブレーキを踏んだ時のタイムラグが少なくなっていました」
「ブレーキペダルを踏む、キャリパーがローターを掴む、車体がフロントダイブする、そして減速が始まるのですが、そのレスポンスが上がっています。また純正ホイールだと減速すると車体が余計にバウンドしていたのですが、TE37 XTではその挙動は皆無。タイヤは同じですから、純正ホイールは入力が入るとたわみ、その分余計に動いているということです」
加速テストの結果(4回走行した平均値)、純正が5.49秒。対してTE37 XTは5.24秒。制動テストの結果は(制動距離を計測。4回走行の平均値)純正が16.1m、TE37 XTが13.1mをマークした。フィーリングだけでなく加速、減速の実測値もTE37 XTが上まわっていることがわかった。では、旋回テストはどうだったのだろうか?
「純正ホイールだと、置かれたパイロンに対してちょっとアクセルオフしないとアプローチできなかったのですが、TE37 XTは全開で走ることができました。加速、制動テストはホイールの縦方向の剛性が効いていたと思うのですが、今回は横方向の剛性が関係しているのでしょう。TE37 XTはステアリングを切っても余計な動きがないのが印象的でした。純正ホイールはステアリングを切っても反応しない時間があり、その分舵角が大きくなりました」「TE37 XTは小さい舵角でスムースに曲がることができました。ステアリングを戻す操作も少なくて済むのですから、結果的にはアクセル全開でスラロームをすることができた、ということですね。またTE37 XTは純正ホイールより路面のインフォメーションを掴みやすかったです。総じてTE37 XTは、足まわりを交換するのと同じくらいの効果を得られるのではないでしょうか」
テスト2:ジムニー/TE37 XT for J
続いてジムニーに乗り換える。今度はTE37 XT for Jを先にテストし、その後純正ホイールを履き替えた。先に述べた通り、TE37 XT for Jとわずかしか重量差はないが、果たしてどのような結果となるか?
先に加速、制動テストの結果をお知らせしよう(ランドクルーザープラドと同条件)。加速テストは純正が5.61秒、TE37 XT for Jが5.52秒。制動テストは純正が14.7秒、TE37 XT for Jが13.6秒を記録した。テスト結果を受け、井入選手は語る。
「今回純正ホイールと重さがあまり変わらなかったため、重量に関してははっきりとした違いはわかりませんでした。ただ、純正は回転する部分のリムが重く、慣性重量が大きいような印象を受けました」
「剛性感はまったく異なりましたね。制動テストでは、路面のうねりなどの入力が入ったときの収まりがTE37 XT for Jの方が良かったです。剛性があるのでたわまないのでしょう」
「スラロームでは、純正ホイールでは大きく荷重がかかるシーンでズレたというか、タイヤが倒れる挙動を見せました。路面からの入力がホイールに伝わる前にタイヤで逃げちゃうんですね。TE37 XT for Jはそのような挙動を見せなかった。ということはホイール剛性以前に、リムの形状がタイヤが倒れ込まないような工夫を施しているのでしょう」
テストを終えて
以上のように、純正ホイールとRAYS TE37 XTシリーズではかなりの違いがあることがわかった。TE37生みの親である、執行役員 鍛造事業戦略推進室 室長の山口浩司さんは語る。「あくまで純正ホイールは純正ゆえに多くの方、あらゆるジャンルのお客様に向けて想定された、オールラウンドな対応ができるように開発、設計されています。今回持ち込まれた弊社のホイール、またトーヨータイヤ様のタイヤはパフォーマンスに特化しているため、このようなテスト結果になったのだと思います」
また、TE37 XTシリーズについて、山口さんは以下のように語った
「今回のTE37 XTシリーズも、『6本スポークだからTE37なんでしょ』と言われることがあります。クルマのポテンシャルを最大限引き出すために、タイヤを接地させたい。そのため強度を確保しながら剛性のバランスを追求していくと、結果的にあの形状になった、ということです。同じ6本スポークでも、軽自動車用やGT-R用ではもちろん厚み、形状は異なります。6本スポークというより、間に入っている6個の正三角形をイメージしていただきたいです。正三角形はどこに入力があっても全部均一に力が分散させることができるのです」
「今回のTE37 XT for Jはジムニー専用設計ですが、このクルマの性能を最大限引き出すにはどうしたらいいのか? を僕らは考えました。軽いものを作るのがアフターマーケット品のお約束ではありますが、強度と剛性を求めていていった結果、今回の仕上がりになったということです」
想像以上の違いに取材班も驚いた今回のテスト。普段なかなか厳密な比較ができないため、とても意義のある結果だったのではないだろうか。
A-LAPシリーズにも注目
今回テストはしなかったが、RAYS A-LAPシリーズも取材することができた。同社第一商品企画部の堀内大輝さんに話を伺った。
「A-LAPとは、アズライトアズポッシブルの略の鍛造ホイールです。ジムニー用はもちろん18インチのプラド用などもリリースしています。ジムニー用となるA-LAPJは徹底的に軽さを追求したモデルで、純正ホイールより軽量に仕上がっています」
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