キャシュカイのデビューは2021年後半
text:Lawrence Allan(ローレンス・アラン)
【画像】日産キャシュカイ【プロトタイプや現行モデル、ジューク、ローグと写真で比較】 全153枚
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
日産自動車は、今年後半に発表予定の新型キャシュカイに搭載される電動パワートレインの詳細を明らかにした。4気筒ガソリンターボのマイルド・ハイブリッドと、欧州初導入となる「eパワー」が設定されている。
前者の4気筒ガソリンユニットは、日産、ルノー、メルセデスの多くのモデルに搭載されている1.3Lターボエンジンのアップグレード版だ。48Vよりも安価な12Vマイルド・ハイブリッドシステムが採用され、小型のリチウムイオンバッテリーと組み合わせることで、トルクアシストとアイドリングストップ機能の向上が図られている。
このパワートレインを搭載することで重量は22kg増加するが、マイルド・ハイブリッドシステムにより燃費は向上(数値未公表)し、CO2排出量は4g/km削減されるという。
エンジンは140psと158psの2種類が用意され、後者は全輪駆動を選択できる。全輪駆動システムは「より直感的でインテリジェント」なものになるとされ、5つの走行モードを備えており、後輪への動力伝達が従来の5倍速くなるという。
トランスミッションは6速MTとCVTの2種類。日産はここ数年、CVTからデュアルクラッチ、そしてまたCVTへと移行してきたが、今回のCVTはより効率的で応答性に優れているという。また、ギア比をシミュレートすることで、いわゆる「ラバーバンド効果」を回避しているとされる。
欧州専用仕様のeパワー
最大の注目点はeパワーで、日本ではすでに日産車お馴染みのパワートレインとなっているが、欧州仕様車に導入されるのは今回が初となる。エンジンは発電機として使用し、バッテリーから電気モーターを動かしてホイールを駆動させるもの。
日本では人気が非常に高く、先代モデルのノートの販売台数を大きく押し上げる要因となった。日産は、欧州向けに電気モーターを47%拡大するほか、より強力な内燃機関を搭載することで、「大幅にアップグレード」されたとしている。
この内燃機関は、欧州では初となる可変圧縮比を採用して効率を高めた1.5Lガソリンエンジン。電気モーターの出力は190ps、トルクは33.6kg-m。商品企画責任者であるマルコ・フィオラバンティは、これで十分だと主張している。
エンジンが発電機として作動するまでの電気のみの走行距離はごくわずか(3km以下)である。しかし、従来のEVのような走りをするとされており、リーフと同様の「eペダル」システムを採用して、回生ブレーキを使ったワンペダル走行を実現している。
クラス最高のインテリアと居住性
欧州において小型SUVのベストセラーの座をフォルクスワーゲン・ティグアンと争う日産キャシュカイは、サイズは大型化しながらも、コンパクトなスタイルを維持しているという。
製品開発担当のニコラス・チャンはAUTOCARに対し次のように語っている。
「欧州では、ボディサイズは絶対的に重要であり、キャシュカイは現在、最高のパッケージの1つとなっています」
先代モデルよりも全長が35mm、全幅が32mm、全高が25mm拡大されたほか、ホイールベースも20mm延長されている。その結果、室内の居住性が大幅に改善され、乗客の乗降性も向上したとされている。
新しいプラットフォームの採用によりトランクの床下スペースが増え、ラゲッジ容量は500L以上を確保。バンパーの下で足をスライドすることで開けられる電動テールゲートも初めて採用された。
センターコンソールのデザインを一新し、収納スペースの追加や、人間工学に基づいたシートなどを採用。また、キャップレスのフューエルリッドカバーを採用し、外から開けることができるようになった。
スペース効率の高い「シフト・バイ・ワイヤ」のシフトノブでは、従来のレバーの物理的な動作を再現しているという。
上級装備を多数採用
車載システムも新しくなり、9.0インチの高解像度タッチスクリーンが採用された。Apple CarPlayのワイヤレス接続のほか、コネクテッドサービスやアプリベースのサービスなど「市場で出回っているあらゆる要素」を提供すると日産は述べている。
これに加えて、上位モデルには12.3インチの大型ディスプレイや、同セグメントで最大とされる10.8インチのヘッドアップ・ディスプレイを装備。15Wのワイヤレス充電器、USB-AおよびUSB-Cポート、BOSEのオーディオパッケージが搭載される。
レベル2の半自動運転技術を含む日産の運転支援システム「プロパイロット」は、中間モデル以上に標準装備される。
コンパクトSUVでありながら、マッサージシート、アンビエントライト、触り心地を重視した高品質の内装材など、上級装備が多数導入されている点も特徴的だ。最上位モデルには、25日かけて生産するナッパレザーを採用し、3Dダイヤモンド・キルティングの刺繍を施している。
ジュークとエクストレイルの中間に位置
日産が「先駆的」なクロスオーバーと呼ぶ3代目キャシュカイは、欧州で300万台以上、全世界で500万台以上販売された歴代モデルをベースに、セグメントをリードすることを目指している。
英国で設計、製造され、既存のディーゼルエンジンは廃止される。
今のところ、新型のエクステリアを確認できる画像は、カモフラージュされたプロトタイプと、ヘッドライトを拡大したティザー画像のみ。
しかし、プロトタイプの画像を見る限り、全体的なプロポーションは大きく変わらないものとなっている。フロントマスクは、あまり過激ではないものの、新型ジュークのデザインにインスパイアされているようだ。
日産欧州法人の商品企画責任者であるマルコ・フィオラバンティは、デザインの目的は「より筋肉質でありながらダイナミックなイメージ」で、「このセグメントで最高のスタンス」を提供することにあるとしている。それを実現するために、より広いトレッド幅、より大径のホイール、より強いショルダーラインを採用したという。
先代モデルよりも大型化しているが、Cセグメントのサイズは維持している。トランク容量も50L拡大された。
キャシュカイの土台となるのは、ルノー・日産・三菱アライアンスのCMF-Cプラットフォームの新バージョンで、電動化に対応するための改良が施されている。日産によると、効率性とダイナミクスの両方を向上させるため、軽量化と高剛性を実現しているという。
現行モデルよりも超高張力鋼板の比率が高く(20%から30%へ)、床下構造の剛性が向上している。また、ボディの主要な接合部には構造的な接合が施されており、強度がさらに向上。全体的に先代モデルと比較して41%向上している。
同時に、テールゲートに複合材を、ドアとボンネットにアルミを採用したことで21kgの軽量化を実現。ボディ全体で60kgの軽量化に成功した。
サスペンションのレイアウトは引き継がれた。最大19インチのホイールを備えた二輪駆動モデルでは、リアにトーションビームを採用。20インチホイールの四輪駆動モデルでは、マルチリンク式を採用している。
日産によると、トーションビームに垂直方向に配置されたスポッティングとダンパーが、「優れたアンチロール性能を維持しながら、落ち着きのある乗り心地」を実現しているという。
一方、ロードノイズを低減するためにブッシュを介してサブフレームに取り付けられたマルチリンクは、「乗り心地とダイナミックなレスポンスのバランスはセグメント最高クラス」とされている。
高度な運転支援システムを採用
運転支援システムとして、より高度なプロパイロットを装備。センサーが改良されており、例えば、目の前を走るクルマだけではなく、その前方のクルマにも追従できるようになっている。
自動ブレーキは対応する速度域が拡大されたほか、レーンキープは動作がより自然なものとなり、最大0.2Gのコーナリングフォースでの自動ステアリングが可能となった。
また、自動的に法定速度を維持したり、コーナーやジャンクションなどで減速したりするシステムも備えている。
全車にLEDヘッドライトを標準装備。車載システムの詳細は未発表だが、無線アップデート機能が搭載される予定だ。
商品企画責任者インタビュー
日産欧州法人の商品企画責任者マルコ・フィオラバンティにインタビューを行った。
なぜ新型キャシュカイにはディーゼルが設定されないのでしょうか?現行モデルではパワートレインの中核をなすものだったはずです。
「地域的に、すでにディーゼルの展開を段階的に終了させる意図を伝えています。今日でもシェアの一部を占めていますが、わたし達は、お客様にはガソリンとハイブリッドが最適だと確信しています」
「eパワーは通常のディーゼルよりもはるかに優れたパフォーマンス、洗練されたデザイン、同等の経済性、運転のしやすさを実現しています」
プラグイン・ハイブリッド(PHEV)の計画はありますか?
「わたし達が提供するものではありません。わたし達は、eパワーがPHEVよりも親しみやすさと低コストを実現できると確信しています」
ルノーのように、クーペバージョンを導入する予定はありますか?
「今は(クーペスタイルのキャシュカイの)必要性を感じていません。キャシュカイのユーザー層は非常に広く、標準的なクルマをダイナミックでエレガントなものにできたと考えています」
パフォーマンス重視のニスモバージョンが登場する可能性はあるのでしょうか?
「それについては、今日は何も伝えられませんが、キャシュカイは欧州でキーとなるモデルであり、常にさまざまな可能性を探っています。これで終わりではなく、スタートです。ライフサイクルはこれまでよりも長くなるでしょうし、サプライズもあるでしょう。見守っていてください」
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