走り好きを楽しませたスターレット
スターレットの源流は、1961年にトヨタのベーシックカーとして誕生した初代パブリカまで遡る。スターレットそのものの初代は、1973年に2代目パブリカの上級車として登場したパブリカ・スターレットがそれにあたり、クーペと呼ばれた3ドアからまず発売され、ミニ・セリカ的なスポーティ車だった。第一印象で妙にスタイリッシュだと思われたデザインは、当初は公表されなかったと記憶しているが、のちにG・ジウジアーロの関連資料をあたると、量産車の仕事のひとつとしてシッカリと載っていて「やっぱりそうだったんじゃん!」と思わされた。
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ラリーやジムカーナで活躍を見せた2代目スターレット
そして車名が完全にスターレットとなったのが、今回取り上げる2代目(KP61)および3代目(EP71)以降から(2代目の正式車名はトヨタ1300/スターレットだった)。車両型式の“P”は初代のパブリカから引き継がれたもの。2代目は世界的な潮流からすると後発組だったが、3ドアと5ドアの2ボックススタイルで登場した。
全長3680~3745mm、全幅1525または1535mm、全高1370または1380mm、ホイールベース2300mmのコンパクトなボディをもち、車両重量も、手元の昭和55年2月のカタログの諸元表によれば695~745kgと軽量。
とはいえ特徴的だったのはFR(後輪駆動)を採用したこと。リヤサスペンションは先代までのリーフリジッドから、リジッドながらコイル式4リンクへと進化し、トレッドも拡大された。ワンメイクレースが行われたほか、ラリーやジムカーナなどの競技の場でも活躍を見せることとなった。ラック&ピニオン式のステアリングを採用したのも、乗用車系ではこのスターレットが最初。この原稿を書き始めて思い出したのだが「走り、較べたし」のコピーは有名だった。
さらにデビューから4年が過ぎた1980年5月のマイナーチェンジで丸目2灯→角目2灯にフェイスリフトを実施。このタイミングで“レディス仕様車”と明記されている女性仕様車のリセが登場。またカタログ写真にはコルシカ島やアメリカ大陸横断高速燃費トライアル中の風景などが使われていたり、ラリーの神様といわれたオベ・アンダーソンをドライバーに迎えた欧州各地のトライアルの様子を伝える“記事”も載っていた。
“プロドライバーによるテスト走行中の写真です”と小さく断り書きの入った砂漠かどこかでの片輪走行のカットなど、スポーティさが余すところなく表現されている。搭載エンジンはLASREとなった4K-II型1.3L・OHVで74ps/10.7kg−mの性能を発揮していた。
FRからFF化に切り替わった3代目スターレット
さて、スポーツ性をアピールしたKP61型の意志を受け継いで1984年に登場したのがEP71型だった。搭載エンジンがK型に代わりE型となったことで型式も“EP”となった訳だが、何といっても最大のポイントは、KP61型までのFRを止めFFに一新したことにあった。ボディタイプはそれまでどおりの2ボックス(3ドア、5ドア)でホイールベースも2300mmと変えられなかったが、FF化されたことや全幅の拡大などで、室内空間のゆとりがしっかりと高められていた。
で、この世代のキャッチコピーでおなじみだったのが、“かッとび”と“イダテン”。ともに、当時トレンドになっていたボーイズレーサー(なんて懐かしい言葉だろう!)を意識した、時流に乗ったアピールだった。同時にそれは、FF化に対する走りのマニアの疑念を払拭する意味、勢いを持たせてのことだったのかもしれない。
イダテンは漢字で書けば韋駄天と、なかなか古風な言葉でもあったが、カタカナにして当時の今風に使ったところはサスガだった。いずれにしろ後世、クルマ好きの間の会話で「あのかッとびスターレット」と言えば「あ、EP71ね」と通じるようになったのはご承知のとおりだ。
スイッチ操作で過給圧を制御するターボシステムを採用
とくに“イダテンターボ”の圧倒的な性能は、当時のクルマを存分に走らせることが好きなマニアの心を捉えた。搭載エンジンは2E-TELU型の1.3Lの3バルブで、これにインタークーラー付きターボを組み合わせて、しかも2モードに切り替えられるようにしていた。通常モードではネット105ps、LOモードで91psとゴキゲン(笑)なハイパワーを楽しませてくれたのだった。
さらにターボSのパワステ装着車には、なんと電子制御サスペンションのTEMSまで用意されていた。もともとEP71型はPEGASUS(=Precision Engineered Geometrically Advanced SUSpension)と名付けられたのサスペンションにより、小気味よい走りを自慢としていた。だが、上級車のような電子制御サスペンションまで用意されて、かッとびらしく、走りに一層の磨きがかけられたのだった。
ベーシックカーのパブリカをルーツとしたスターレットは、やがてヴィッツとなり、今はヤリスとして系譜を受け継いでいる。思わず遠い目になってしまうが、ピュアにクルマが楽しめた時代の(昭和な表現で言うと)元気印の代表格だった。
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みんなのコメント
昔の車のCMは挑発的だったなあ〜
重ステにめちゃくちゃ細いハンドル、車庫入れ時のハンドル操作には、けっこう腕力を使いましたね。
そのおかげでパワステ車に乗っても据え切り時、如何にタイヤに負荷が掛かっているのかを絶えず意識できましたが・・・
今思えば、本当にただ走るだけの機能しか付いていない車でしたし、シートも腰が直ぐに痛くなるレベル、おまけに夜間走行時はハイビームにしても暗いヘッドライト(社外品のバルブに交換した時に純正バルブを見ましたが、まんま白熱灯みたいなバルブでびっくりしました・・・)と、不満もありましたが逆に不満のあるヶ所は自分好みにイジっていく楽しみもありました。
自分で育てていく車? みたいな感覚でしょうか・・・