現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > アーバンSUVの新潮流はイタリア風か英国流か? マセラティ レヴァンテとジャガー Fペイスの素顔に迫る【Playback GENROQ 2017】

ここから本文です

アーバンSUVの新潮流はイタリア風か英国流か? マセラティ レヴァンテとジャガー Fペイスの素顔に迫る【Playback GENROQ 2017】

掲載 更新 3
アーバンSUVの新潮流はイタリア風か英国流か? マセラティ レヴァンテとジャガー Fペイスの素顔に迫る【Playback GENROQ 2017】

MASERATI LEVANTE × JAGUAR F-PACE S

マセラティ レヴァンテ × ジャガー Fペイス S

ラインナップが充実したDS 3 クロスバック、そのベストバイは電気かガソリンか? 判断基準は「走り味」にあった

ブランド初のSUV同士が競う“粋”バトル

マセラティ、ジャガーともにブランド史上初となるSUVがこの2台だ。イタリアとイギリスを代表する“粋”な両メーカーが手がけるだけあり、レヴァンテ、Fペイスともにスタイリッシュかつスポーティな仕上がり。伊達男にこそ似合うラグジュアリーSUV2モデルをじっくりと味わってみた。

「泥臭さを見事に払拭し洗練さを身につけたという点で、2台は同じ地平線上に立っている」

もともとピックアップから派生したSUVもついにここまで進化し、ここまで“都市化”したかという意味では実に感慨深い2台である。マセラティ レヴァンテとジャガー Fペイス。生まれ故郷はイタリアとイギリスという違いがあって、それが走りやデザインに色濃く反映されているものの、泥臭さを見事に払拭し、くすみひとつない洗練さを身につけたという点で、2台は同じ地平線上に立っているように思う。

もうひとつ、2台に共通しているのは、それぞれのブランドが手掛けた初のSUVであるという点。「いやいや、ジャガーは同じグループ内にランドローバーというSUV

スペシャリストがあるじゃないか」とアナタは反論するかもしれないが、少なくとも今回試乗した範囲でいえば、Fペイスにランドローバーの影響はほとんど認められなかった。そんなことより重要なのは、Fペイスによって「ジャガーのSUV」という新たな個性が創出されたことにあるはず。実際、Fペイスは既存のSUVではあまり味わうことのできない、なかなかユニークな世界が表現されていたのである。

2台のスペックは驚くほど似ているが、実車を目の前にしたときの印象と対照的で面白いと思ったのが全長の違い。見た目にはルーフが水平にすっきりと伸びたFペイスのほうが長く見えるのに、実際にはレヴァンテのほうが260mmも長い。これは、レヴァンテのルーフ後端がFペイスよりも強い傾斜角で下降していることと、レヴァンテのリヤフェンダーが力こぶのように盛り上がっていて、この部分が独立しているように見えることに原因がありそうだ。

「視覚的な広々感でも実際のスペースでもレヴァンテがFペイスに優る」

現実に長いボディが与えられたレヴァンテにはそれなりのメリットもあって、たとえばトランクの容量はFペイスの508リットルを凌ぐ580リットルを実現している。一方で不可解なのがリヤのレッグルームで、Fペイスのホイールベースはレヴァンテより130mmほども短いのに、後席の膝まわりにはレヴァンテを明確に上まわる余裕があった。ただし、ヘッドルームを比べると両者の立場は逆転し、視覚的な広々感でも実際のスペースでもレヴァンテがFペイスに優っている。もっとも、これらの差は厳密に比較して初めて明らかになる程度のもので、一方が他方を圧倒的に上まわるほどの違いではないことは強調しておきたい。

走りのテイストはどうか?

エンジンはともに排気量3.0リッターのV6過給機付き(レヴァンテはターボでFペイスはスーパーチャージャー)で、最高出力と最大トルクはレヴァンテ:350ps/500Nm、Fペイス:380ps/450Nmと大差はない。実際、2台を乗り比べても速さに決定的な差はないものの、そのフィーリングには見逃せない違いがある。レスポンスがより鋭いのはレヴァンテのほうで、スロットルペダルを踏み込むと同時に加速Gが素早く立ち上がるのを体感できる。そのせいか、エンジンがすぐ吹けきって加速感も早々に下降傾向へと転じるのもレヴァンテの特徴だ。

「Fペイスは長く伸びやかに続く“息の長い加速感”が特徴」

これに比べるとFペイスは背中をぐいと押されるまでにはひと呼吸が必要なものの、いざ本格的な加速が始まると、その感覚は長く伸びやかに続いていく。いわゆる“息の長い加速感”というヤツだ。

両者の特徴は、スピードのピックアップが良好で俊敏な加減速が容易なイタリアン・スポーツカーと、鋭い加速は得意でなくともバランスのいいシャシーを武器に高い速度を保ったまま次々とコーナーをクリアしていくブリティッシュ・スポーツカーの違いにも通じるところがあるように思えて、なかなか興味深い。

同様のことはハンドリングについてもいえる。硬めのサスペンションと比較的クイックなステアリング・レシオを利して素早いターンインを実現するレヴァンテに対し、優れたスタビリティとロードホールディングを武器にし、路面の不整などものともせずにワインディングロードを駆け抜けていく力強さと安定感がFペイスにはある。

「より安心してステアリングを握っていられるFペイス」

Fペイスの安心感を生み出す源は、レヴァンテを上まわるボディ剛性感にあるのだろう。暴れ回ろうとするサスペンションを最後はボディが抑え込み、路面にタイヤを適切に接地させる。このボディの担うべき役割が明確になっているからこそ、Fペイスのほうがより安心してステアリングを握っていられるのだ。

もっとも、比較すればFペイスのほうがボディ剛性は高く感じられるものの、ボディがバツグンに頑丈とまで言い切れないのはFペイスもレヴァンテも同様で、これが時として感じる乗り心地の荒さにつながっている点は否めない。大きな衝撃がサスペンションに加わったときにボディがしなやかに受け止めきれず、微細な振動となって乗員に伝わってしまうのだ。どちらもベースとなったXEとギブリはしっかりとしたボディ剛性感を備え、乗り心地に荒れた点など見当たらないだけに、これはいささか残念に感じられた。

「絶対的な性能や味わいという面でいえば2台は驚くほど似ている」

いずれにせよ、再三指摘しているように、それらはレヴァンテとFペイスを乗り比べてようやく浮き上がる程度の違いで、絶対的な性能や味わいという面でいえば2台は驚くほど似ている。では、レヴァンテとFペイスの決定的な差はなにかといえば、内外装が醸し出す世界観の違いに他ならないと思う。

全般的にいって、レヴァンテにはクラシカルなエレガンスがある。センターコンソールやダッシュボードに貼られたウッド調のフェイシア、緩やかな曲線を描くシートに縫い込まれた繊細なステッチなどは、その象徴ともいえる部分だ。一方でFペイスの造形を素っ気ないと言ってしまうのは簡単だが、レザーを含めた全般的な質感はこちらのほうが明らかに高く、先進的なデザインが随所に施されている。その違いは、クラシックで優雅なスタイルのイタリアンスーツと、仕立てのよさを基本としながらも部分的に遊び心を取り入れた最新のブリティッシュスーツの違いにも通底しているようだ。

もちろんレヴァンテとFペイスはちょっとした悪路などものともせずに走破するオフロード性能を備えているはずだが、2台が本当に光り輝く舞台は荒涼とした原野ではなく、夜ごとパーティが繰り広げられる大都会ではないだろうか? 私にはそんなふうに思えて仕方なかった。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)

【SPECIFICATIONS】

マセラティ レヴァンテ

ボディサイズ:全長5000 全幅1985 全高1680mm
ホイールベース:3005mm
車両重量:2140kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2979cc
圧縮比:9.7
最高出力:257kW(350ps)/5750rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前後スカイフック+エアサスペンション
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後255/60ZR18
最高速度:243km/h
0-100kmh加速:6.3秒
燃料消費率:10.7L/100km(EU複合)
車両本体価格:1080万円

ジャガー Fペイス S

ボディサイズ:全長4740 全幅1935 全高1665mm
ホイールベース:2875mm
車両重量:1980kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCスーパーチャージャー
総排気量:2994cc
圧縮比:10.5±0.5
最高出力:280kW(380ps)/6500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/3500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後インテグラルリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後255/50R20
最高速度:250km/h
0-100kmh加速:5.5秒
燃料消費率:10.1km/L(JC08モード)
車両本体価格:981万円

※GENROQ 2017年 1月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

こんな記事も読まれています

いまや「手洗い=正義」じゃない!! 洗車機の正しい選び方、見極め方
いまや「手洗い=正義」じゃない!! 洗車機の正しい選び方、見極め方
ベストカーWeb
メルセデスがこだわる「知覚安全性」とは? 周囲のクルマや歩行者にアピールすることが安全につながるベンツ神話を紹介します
メルセデスがこだわる「知覚安全性」とは? 周囲のクルマや歩行者にアピールすることが安全につながるベンツ神話を紹介します
Auto Messe Web
【24’ 7/1最新】レギュラーガソリン平均価格、2週連続値上り 0.8円増の175.6円
【24’ 7/1最新】レギュラーガソリン平均価格、2週連続値上り 0.8円増の175.6円
グーネット
宮田莉朋の代役が決定。WECでアルピーヌをドライブするシャタンがELMSイモラ参戦へ
宮田莉朋の代役が決定。WECでアルピーヌをドライブするシャタンがELMSイモラ参戦へ
AUTOSPORT web
フォルクスワーゲン 一挙5モデル!新型モデル同時発表!「Tクロス」「ティグアン」など
フォルクスワーゲン 一挙5モデル!新型モデル同時発表!「Tクロス」「ティグアン」など
グーネット
「V8」を置き換える直6+モーター メルセデスAMG E 53 ハイブリッドへ試乗 新たな強みを獲得!
「V8」を置き換える直6+モーター メルセデスAMG E 53 ハイブリッドへ試乗 新たな強みを獲得!
AUTOCAR JAPAN
イソッタ・フラスキーニの2台目は別陣営がオペレートか「いくつかの重要なチームからリクエストが来ている」
イソッタ・フラスキーニの2台目は別陣営がオペレートか「いくつかの重要なチームからリクエストが来ている」
AUTOSPORT web
ピンクのトライトン見参! 竹岡圭がトーヨーとミツビシの支援を受けXCRスプリントカップ北海道参戦へ
ピンクのトライトン見参! 竹岡圭がトーヨーとミツビシの支援を受けXCRスプリントカップ北海道参戦へ
AUTOSPORT web
勝田が訪問先のル・マン24時間で感じた新しい視点と刺激。初挑戦WRCポーランドは難渋の8位
勝田が訪問先のル・マン24時間で感じた新しい視点と刺激。初挑戦WRCポーランドは難渋の8位
AUTOSPORT web
ウイリアムズF1、イギリスGPのFP1で育成ドライバーのコラピントを起用。サージェントのマシンをドライブ
ウイリアムズF1、イギリスGPのFP1で育成ドライバーのコラピントを起用。サージェントのマシンをドライブ
AUTOSPORT web
装甲車を超えた!? ランクル“防弾仕様”がスゴイ! 手榴弾にも耐える!?「とにかく300系がベスト」な理由
装甲車を超えた!? ランクル“防弾仕様”がスゴイ! 手榴弾にも耐える!?「とにかく300系がベスト」な理由
乗りものニュース
ホンダ、MotoGP引退のアレイシ・エスパルガロをテストライダーとして起用。2025年はブラドルとRC213Vを開発
ホンダ、MotoGP引退のアレイシ・エスパルガロをテストライダーとして起用。2025年はブラドルとRC213Vを開発
AUTOSPORT web
ウイリアムズF1はサインツ以外のドライバーも検討へ。決断をためらった姿勢に疑問を抱く
ウイリアムズF1はサインツ以外のドライバーも検討へ。決断をためらった姿勢に疑問を抱く
AUTOSPORT web
日産が「新・小さな高級車」発表! 斬新グリル×豪華内装採用! 「オーラ」何が変わった? 販売店への反響は
日産が「新・小さな高級車」発表! 斬新グリル×豪華内装採用! 「オーラ」何が変わった? 販売店への反響は
くるまのニュース
スーパーカーメーカーが「2人乗りタクシー」導入? 2026年より自動運転の配車サービス開始
スーパーカーメーカーが「2人乗りタクシー」導入? 2026年より自動運転の配車サービス開始
AUTOCAR JAPAN
在庫限り! フィアット「500/500C」とアバルト「F595/695」の日本国内販売が終了間近…欲しい人は迷っている暇はありません!
在庫限り! フィアット「500/500C」とアバルト「F595/695」の日本国内販売が終了間近…欲しい人は迷っている暇はありません!
Auto Messe Web
ピレリ、新型ハイパフォーマンスタイヤ『スコーピオンMS』発表。日本で計28サイズを順次発売
ピレリ、新型ハイパフォーマンスタイヤ『スコーピオンMS』発表。日本で計28サイズを順次発売
AUTOSPORT web
アレックス・マルケス、グレシーニと2年契約延長で2026年まで残留。兄マルクはドゥカティファクトリー昇格がすでに決定
アレックス・マルケス、グレシーニと2年契約延長で2026年まで残留。兄マルクはドゥカティファクトリー昇格がすでに決定
AUTOSPORT web

みんなのコメント

3件
  • すげぇなレヴァンテの試乗車、今どき珍しい左ハンドルや! ダサッ!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1299.02349.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

350.02295.0万円

中古車を検索
レヴァンテの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1299.02349.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

350.02295.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村