全日本ラリー選手権が開幕。2021年事実上の初戦となる「新城ラリー」が3月19日~21日に開催され、竹岡圭さんがドライバーを務める「圭rally project」チームが参戦した。1年ぶりとなるラリーの模様を本人がレポート。
3月18日(木)晴れ 現地入り
2021年の圭rally projectの活動がいよいよ始まりました~! 新城ラリーは地元のラリーですから! ということで、愛知県では豊橋市でフォルクスワーゲンディーラーを営んでいらっしゃる「サーラカーズ」さんに、圭rally projectは応援をいただいております。実は参戦車両のモモポロちゃんもこちらのディーラーで購入させていただいたんですよね。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
そこでご恩返しではないですが、フォルクスワーゲン ポロの解説動画を撮影することになりました。これはまさに私の本業ですから、お任せアレ! 気になる方は、ぜひサーラカーズさんに足を運んで見てくださいね。店頭で流していただくことになっておりますので。
2021年の新城ラリーは2020年に引き続き無観客開催ということで、直接応援にお越しいただけないのが残念ですが、頑張って参りますので、遠くから声援を送ってくださいね~。
3月19日(金) 晴れ レッキ
圭rally project2021初戦! 全日本ラリー選手権としても、2021年の事実上の初戦となる新城ラリーがスタートしました。
1年ぶりのラリーということで、なんだかいろいろ忘れちゃってる? と、自宅を出発するときからドキドキでしたが、無事にレッキ(下見走行)の仕方も思い出しはしたものの、何度やってもペースノート作りは難しく、なかなか上手くいかないものなんですよね。そこで、サービスパークに戻ってきてからも珍しく(?)、二人揃ってビデオをジーッと覗き込み、レッキで上手く拾えなかったところを見返したりして・・・。(※レッキ:コースを下見のために走行すること)
というのも、慣れているクルーや、以前同じSSを走ったことのあるクルーは、すでにベースとなるペースノートを持っていたりするので、2回行われるうちの1回目のレッキから、そこそこのペースで確認走行したりするわけです。
ところが、私とコ・ドライバーの山田政樹さんは、2020年の新城ラリーで初めてコンビを組んだので、昨年のペースノートは怪しい限り(笑)。さらに、雁峰北SSはまったくの初見。鬼久保SSもコースが延長されたために、その部分のペースノートは新規で作り足す必要がある等々で、かなりペースが上げられなかったんですよね。でも、他のクルーの邪魔になってはいけないので、進路を譲ったりしているうちに、どこだかわからなくなっちゃったりして・・・(汗)。つまりはあまり上手にレッキできなかったわけなんですよぉ。
そこで、サービスパークに戻ってきてから、ビデオを穴があくほど見て、なんとか穴埋め方式で作ってはみたのですが、どうにも不安。まぁ皆さまのご想像通り、その不安は的中するわけですが、それよりも不安なことが・・・。まぁいろいろあったのは、この先のお話を読み進めてくださいね。
というわけで、この日はレッキを終えた後に、参加確認、車検等々の手続きを完了して、ホテルへ戻ります。なんたってこの日は、レッキのスタートが早く、朝3時半起きだったのでサクッと戻って、明日に備えたいですからね。そういいながら、どうせ緊張であんまり眠れないんですけど(笑)。
3月20日(土) 晴れ DAY1
よかったぁ~、いいお天気! イベントのお天気は、やっぱり晴れの方がいいですよね。とくにモータースポーツは晴れに限ります。というか、何を隠そう私、かれこれ四半世紀以上モータースポーツに携わっていますが、自分でハンドルを握ったレースで雨に見舞われたのはたったの1回。しかも予選のみ。
なのにもかかわらず、なぜかラリーはよく雨が降るんですよねぇ。1回の大会期間中、まったく雨が降らなかった大会って数えられるほど少ない・・・、と思えるくらい、なぜか雨が多い気がするんですよね。まぁ普段雨がほとんど降られないから、余計にそんな気がするのかもしれませんが、雨のラリーは窓は曇るわ、足元は滑るわ、マイナス要因が多すぎるので、とにかく晴れていただきたいのであります!
だからこそ、2021年のラリーは初戦から晴れだぞぉ~と気分は上々! でも初戦ということでド緊張という状態で送り出されたわけですが、セレモニアルスタートを抜けて、リエゾン区間をしばらく走行した後「なんだかタイヤがチュルチュルすんだけれどぉ~」と、ちょっと足もとに違和感を覚えたんですよね。
「新品タイヤだから、まだ表面に油がついているからじゃない?」と政樹さん。まぁそれもあるかもしれないけど・・・と、SS1へ向かったものの、やはり気になりつつのスタート。そのイヤな予感は見事に当たっていました。
原因をズバリ言いますと、空気圧が予想より上がってしまっていたんです。SSを走っている最中もどんどん上がる空気圧。「え~ん(涙)、接地感が薄いよ~。どんどん上がってるよ~」と、政樹さんのペースノートを聞きながら、できる限り頑張ってはみたものの・・・。フィニッシュした直後に「政樹さん、コレ空気圧がメチャクチャ上がってると思う!」と訴える私。ストップを通過し、安全な場所にクルマを停車してヘルメットを脱ぎつつ空気圧をチェック。
「あちゃ~、2.4(kgf/cm2)まで上がってる・・・」狙いは温感2.2だったので、コンマ2キロほど高くなってしまっていました。
「次の鬼久保SSはさ、ハイスピードレンジのSSだから、もう少し空気圧落としたいんだけどダメかな?」と私。「そうだね、そしたらフロント0.2キロ、リア0.1キロ落とそうか」と政樹さん。賛成!!!
この数値、改めて考えると、たったの、ホントにたったのコンマ1キロなんですが、クルマのフィーリングは結構違っちゃうんですよね。普段クルマに乗っていると、空気圧なんて1カ月に1回チェックするくらいのものだし、中には半年くらい確認していない方もいらっしゃるかもしれませんが、たったコンマ1キロ、されどコンマ1キロ。コンマ2キロ違ってしまえば、クルマの動きが変わっちゃうんです。というわけで、みなさ~ん、タイヤの空気圧は最低月1度はご確認を! と強くアピールしたいわけですが、ちょっと話が逸れたので戻しますと、空気圧を落として臨んだ鬼久保SSはグッと接地感が上がりました。
ところがですね、この鬼久保SSの後半、1kmちょっとは未開の地。レッキもあまり上手にできなかったので、かなり不安な状態だったんですよね。やや恐る恐るフィニッシュしたタイムは、う~む。う~む。う~む。とても納得のいくものではありませんでした(涙)。
というわけで、午後からのセクション2は、ちょっと気合入れていくからね~と、チーフメカニックの神田さん(通称マコティ)にお願いして、サービス出発地点でまず空気圧を朝よりも低めにセット。これがバッチリ決まり、SS1と同じコースを走るSS3は、確実に10秒はタイムが上がった! と自分では思ったのですが・・・。なんと、ほぼ変わらず(涙)。「ウソでしょぉ~」と、叫びたいくらい頑張ったハズなんだけどなぁ・・・。
続くSS2と同じコースのSS4は、スタート前に0.1キロほど空気圧を下げ、接地感もバッチリ。SS2よりもライン取りも上手くいったので、アクセルペダルを開けている時間も間違いなく長かったから、絶対、もう絶対タイムアップしたと、助手席の政樹さんも強く感じたそうなのですが・・・これまた、ほぼ変わらず(涙)。ウソでしょぉ~パート2。
「おかしいなぁ。僕も絶対タイム上がったと思ったんだけどねぇ。でも言われてみれば、昨年よりもクルマが前に進んでいない気がするんだよね。まぁ、他のドライバーはSS2よりSS4の方がタイム落としている人多いから、圭ちゃんはよかったんだと思うんやけども・・・。でもおかしいなぁ~、なんでやろ」と、首を捻る政樹さん。私もまったく同感。ということで、これは次戦までにいろいろ確認が必要ということになりました。
3月21日(日) 豪雨 DAY2
昨日の晴天から打って変わり、予報どおりの雨(涙)。夜中のうちからガラス窓を叩く音が気になるくらいの強い雨。サービスパークからパルクフェルメ(車両保管場所)に向かう頃には、すでに長靴が欲しいほどの路面、傘は斜めに差してちょうどいいくらいの風雨、というより、しっかり持っていないと、いわゆるオチョコになってしまいそうなくらいのお天気になっていました。
あまりの悪天候にさすがに・・・という判断で、前日の夕方パルクフェルメにクルマを預けた後に、DAY1とDAY2の2日間通して使用できるタイヤの本数規定が6本から8本に変更というリリースが出たので、サービスパークで新品タイヤを装着してもらっていざ出陣。
ここで例の空気圧の話。「雨で路面温度も上がらないし、少し高めでどうかな?」と政樹さん。「雨で路面温度が上がらないから、タイヤを動かすために、少し低めでどうでしょう。その方が発熱しやすいと思うんです」と、マコティ。「圭さん、低めの方が接地感あって好みだっていうこともありますし」と、さすがはマコティ。私の好みをしっかり把握していらっしゃる! というわけで、ドライのDAY1よりも、さらに0.2キロほど低めのセッティングで出発したのでした。
ところが、もはや空気圧が云々というレベルのお天気じゃなかったんです。ペースノートがやはり出来上がっていなかった、というレベルの話でもなかったんです。刻一刻とお天気はどんどん悪化。
SS5はまさに林道で、道幅も狭くクネクネしているので、さほど速度も上がりません。それでもかなり水溜まりも多く、少しストレートになったところでは、私の速度域でもハイドロプレーニング現象が起きるほどの雨量。
ところが、そんな中でも安定して走るモモポロちゃん。さて、なぜ安定できたかと言いますと、モモポロちゃん怖くなったんでしょうね、これまでにない勢いでエンジンパワーを絞ってきたんです。もうクルマがほぼ止まってしまうんじゃないか?というくらい、パワーダウンしてきたんですよね。
それでなくてもこの天候と路面に、私のリミッターならぬ、ビビリミッタースイッチが入っておりまして、さらにモモポロちゃんのリミッター=超安全制御が入るものですから、もはやレーシングスピードで走れるわけもなく・・・。後ゼッケンのクルマに追いつかれてしまうことになってしまいました。後続車の方、本当にすみません。この場を借りてお詫び申し上げます。トホホです。
「こうなったらどうする? 次の鬼久保SSは道幅も広いハイスピード路面だし、コースレイアウト考えても、さすがに追いつかれることはないと思うのよ」という、私の意見に政樹さんも賛同してくださったので、気を引き締めて、気合も入れて向かったのですが・・・スタート前でマシンが溜っています。これは何かトラブルがあったということ。順番が回ってきたときには「SOSで止まったクルマがいるのでSS6はスルーになりました。ゆっくり気を付けてSSを通過してください」とオフィシャルの方から通達がありました。
この場合、SS自体はキャンセルではありませんが、タイム計測はなし。後で適宜タイムが与えられるという、救済措置が発生します。途中トラブルが起こっているということですから、ゆっくりSSを通過していったのですが・・・。かなりの水溜まりがいくつもできていました。
スロー走行をしていても、隣にいる政樹さんと顔を見合わせてしまうくらい電子制御も入ります。そんなとき、思いもかけずに深かった水溜まりでボンネットはおろか、フロントガラスの半分くらいまで水を被ることに。しかもエンジンパワーを絞られて、あわや停止寸前という事態発生! ここで止まったら終わりだとばかり、アクセルを踏み込み、なんとか抜けることができたのですが・・・。後で確認したところ、この時の水圧でなっなんと。ナンバープレートが曲がってしまったんです。水の力の恐ろしさを、こんなところで知ることになりました。
アイテナリー(タイムスケジュール)的にSS6の後は、給油後にサービスパークへと戻るスケジュールになっていましたが、ターゲットタイムには到着できないと判断した政樹さんはCRO「コンペティターズ・リレーション・オフィサー」という、オフィシャルと選手の間に立つ人に連絡。その際に「このまま本日のラリーは中止になりますので、給油もせずにサービスパークに戻っていただいて結構です」という指示を受け、私たちは真っすぐサービスパークに戻ることになり、パルクフェルメへとクルマを預け入れたのでした。
なんとも歯切れの悪いラリーになってしまいましたが、また気を引き締めなおして次戦に向かうしかありません。そのためにも、圭ラリープロジェクトとしては全日本ラリー選手権の次戦となる丹後ラリーの前に、とにかく練習をしたいぞ!と、現在作戦を練りなおしております。不安を打ち消すためには、経験値を積み重ねる。それがいちばんの特効薬ですからね。(文:竹岡 圭/写真:原田 淳)
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みんなのコメント
不届者が居るのかと思いましたが…w
マシンもクルーも、何はともあれ無事で良かった…
ナンバー曲げるほど水圧がかかったということは
ハイドロプレーニングがいかに危険かということを
示唆していますね。
タイヤの溝と空気圧はマメにチェックしときましょう。