■ラングラー・アンリミテッドがいま、日本で愛されている理由
ジープといえば、1940年代の軍用車のイメージがいまも色濃く残っています。そしてそのイメージにピッタリの現行ラインナップといえば、「ラングラー」でしょう。このラングラーのラインナップのなかで、もっとも現実的な2リッター4気筒ターボを搭載した「ラングラー・アンリミテッド・スポーツ」を、雪のトマムで試乗してきました。
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ラングラーといえば、全モデルに「Trail Rated」のバッジが備わるオフロード性能の高さに定評があります。そのオフロード性能を試すべく訪れたのは、冬だけでなく夏のリゾート地としても注目が集まっている北海道の「星野リゾート トマム」です。
ちなみに「Trail Rated」とは、過酷なトレイルでの性能試験にパスしたジープだけに与えられるバッジです。
白銀の世界での試乗に選んだのは、ラングラー・アンリミテッド・スポーツです。ラングラーには、さらにオフロード性能を高めた、3.6リッターV型6気筒DOHCエンジン搭載の「ルビコン」、ルビコンと同じエンジンを搭載した「アンリミテッド・サハラ」、そして2ドア仕様の「スポーツ」などがありますが、もっとも経済的かつ多用途性に富んだ4気筒エンジンを搭載した4ドアモデルを選びました。
2009年に516台だったラングラーの販売台数は、3代目ラングラーのモデルライフ後半にも関わらず、2018年のモデルチェンジまで常に右肩上がりで台数を伸ばしてきました。そしてモデルチェンジ後の2019年には4873台にまで販売台数を伸ばしています。
その理由はいろいろと考えられますが、丸目2灯・セブンスロットグリルというジープらしいデザインを踏襲していることが挙げられるでしょう。価値観が流動的である現代だからこそ、愛車にはタイムレスなデザインを受け継ぐラングラーを選ぶという心理にも納得がいきます。なお、日本での購入者の平均年齢は38歳です。
タイムレスなデザインといえば、ラングラーの先祖といえるウィリス「M-38A1ジープ」は、MoMA(ニューヨーク近代美術館)に永久収蔵されています。つまり、MoMAが認めたデザインの流れを色濃く踏襲しているラングラーは、デザイン感度の高い若い人が、積極的に選択したくなるクルマということです。
5年先、10年先でも色褪せない定番デザインであるからこそ、安心して購入することができるのです。それを証明するかのように、ラングラーは残存価値も高いという結果が出ています。
白銀の世界に佇む真っ赤なラングラー・アンリミテッド・スポーツ(以下ラングラー)の扉を開き、さっそくAピラーの取っ手を掴んでドライバーズシートに乗り込みます。
短いダッシュボード、トランスファーとシフトの2本のレバー、高いアイポイントなど、先代モデルを思い起こさせるものの、質感は格段に向上し、ギア感がさらに強くなったデザインとなっています。
エンジンスタートのボタン押してエンジンを始動するのですが、このとき、雪で濡れたグローブを嵌めたままでも大丈夫。エンジンスタートボタンは防水シールドで保護されているからです。
装着しているタイヤはスタッドレスのグッドイヤー・アイスナビSUVです。
さっそく宿泊しているリゾナーレトマムの駐車場から一般道へ。リゾナーレトマムを擁する「星野リゾート トマム」は、約1000ヘクタールもの広大な敷地に囲まれており、山の中腹にあるリゾナーレトマムから一般道までの私道を走るだけでも、雪道試乗ができそうなほどです。
氷点下での試乗ですが、ラングラーのドライバーズシートに座り、ホテル駐車場から一般道へ出る頃には、車内は寒さなど感じない快適な空間へと変化しています。ステアリングホイールを温める「ヒーテッドステアリングホイール」と3段階で温度調節が可能な「フロントシートヒーター」は、冬場の快適なドライブにはマストアイテムです。
ダッシュボードの中央には、「8.4インチタッチパネルモニター」が備えられています。この大型フルカラー高精細タッチパネルモニターは、Apple CarPlayやAndroid Auto、Siri Eyes Free、ボイスコマンド、プレミアムピンチ・トゥ・ズーム ナビゲーションなどと、包括的にスマートフォンと連携することが可能です。
車内環境、そして通信環境が快適であることは、車外環境が厳しければ厳しいほど、精神的な安心感をドライバーにもたらしてくれます。質感の向上したインテリアとあいまって、ラングラーから全幅の信頼を寄せることができる頼もしさが伝わってきます。
悪路を走破するSUVにあって、その存在だけで信頼を寄せられるか否かは、ドライバーにとって非常に大きな問題です。
■あらゆる状況下で安心感をもたらしてくれるラングラー・アンリミテッド
本格的な試乗は、夏季は牧場となる一般車が進入禁止の私有地の私道でおこなわれました。対向車やスピード超過を気にすることなく、存分にラングラーの真価を試すことができるステージです。
雪を巻き上げるほどのスピードで疾走しても、ラングラーに対する信頼感は揺るぐことはありません。それは2リッター直列4気筒DOHCターボエンジン(以下直4)のフィーリングよるところも大きいでしょう。
この直4の最高出力は、272馬力/5250rpm、最大トルクは400Nm/3000rpmです。このほかラングラーに搭載される3.6リッターV型6気筒DOHCエンジン(以下V6)の最高出力は、284馬力/6400rpm、最大トルクは347Nm/4100rpmです。
直4の最高出力はV6に12馬力劣るものの、最大トルクはむしろ53Nmも勝っています。しかもそれぞれエンジン回転数が1000rpmも低いことも見逃せません。雪道の場合、微妙なアクセルワークが求められますが、直4のほうが厚底のブーツを履いていても意のままにコントロールしやすいのです。
セレクトラック フルタイム4×4システムは、雪道用の4×4レンジ「4H」に手動でレンジ切り替えもできますが、「4H AUTO」モードであらゆるシーンで対応できました。走行中でも2WDから4WDのハイレンジに切り替えができるシフトオンザフライシステムで、うっすらと雪の積もる高速道路からアイスバーンの一般道、新雪の残る雪道まですべて完璧にカバーしてくれたのです。
もう少し分かりやすく解説すると、「4H AUTO」は、駆動力を前輪0%:後輪100%から前輪50%:後輪50%へと自動で走行中に可変してくれるというものです。前輪0%:後輪100%で走行中に、リアが少しでも滑ったりした場合、前輪が駆動して引っ張ってくれるので、車両は常に安定志向となるのです。
試しに、クルマが乗り入れていない牧場の広場を走ってみたのですが(万が一スタックした場合は、雪上車がレスキューしてくれるという保証つきで)、「4H AUTO」モードのみで十分に圧雪されていない雪原を自由自在に走ることが可能でした。
また、モーグルの走破も試してみたのですが、こちらも「4H AUTO」で楽々と乗り越えることができました。ラングラーには、雪道や砂利道などの未舗装路に有効な4×4レンジ「4H」の上に、悪路や岩登りの際に最大の駆動力を発生するローギアードの「4L」が用意されています。
今シーズンは北海道でも積雪量が少なく、ラングラーの持つポテンシャルの半分も引き出すことができなかった感は否めません。
さらに「ラングラー・アンリミテッド・ルビコン」に至っては、「ロックトラック4×4システム」という究極のオフロード走破スペシャルの4×4システムも装備されます。ラングラーの限界を一度、試してみたいものです。
さて、牧場で大人の雪遊びに興じていると、気がつけば今にも日が沈みそうな気配。牧場の私道のゲートが閉じられる前に一般道に出るべく、雪道を飛ばしていて「4H AUTO」のありがたみがひとつ加わりました。
コーナーでリアが滑りそうになると、こちらがカウンターを当てるまもなくフロントに駆動力が加わり、体勢をキープしてくれるのです。これならば女性や運転に自信のない人は、「4H AUTO」で十分に日常でのドライブをカバーしてくれるはずです。
先代モデルまでは、2WDと4WDをドライバーが選択するパートタイム式の「コマンドトラック」でしたが、「4H AUTO」が加わったセレクトラック フルタイム4×4システムは、さらにラングラーを身近な存在にしました。最小回転半径も、先代の7.1mから6.2mになり、使い勝手も向上しています。
※ ※ ※
本格的オフローダーであるラングラーは、これまで玄人向けというイメージがありました。しかし、悪路を走ることのない都会派の人にも、運転のしやすさや使い勝手などの面で十分に受け入れられるだけの柔軟性が備わりました。
あくまでも今回は雪道だけでの試乗でしたが、ラングラーの懐がさらに広くなったことがよく理解できました。だからこそ、常に堅調に販売台数を伸ばしているのです。
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