■目玉ヘルメットの意外すぎる誕生理由
高性能なバイク用オリジナルマフラーで有名な、スペシャルパーツ忠男。その代表を務め、元ヤマハワークスのモトクロスチャンピオン。そしてSP忠男レーシングチームの代表として、全日本ロードレースチャンピオンやWGP(ロードレース世界選手権)ライダーなど、多くのトップライダーを輩出してきた鈴木 忠男さんに、バイクレースやライダーの育成、そして鈴木代表自身のこれからについて、聞いてみました。
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―――SP忠男といえば、目玉ヘルメットが有名ですが、あの目玉にはどんな意味があるのでしょうか?
「意味?別にないよ。目立つようにってだけ(笑)。現役でレースをしていた時に、あの目玉のマークを付けて走るようになって、最初は自分で描いた手書きの目玉だったの。
当時は、ハテナマークを付けて走ったり、手形を付けてみたり、いろんなマークを付けてみたけど、あんまり目立たなかったんだよね。だから、この目玉は、目立つため。目立てばいいんだよ。
そこから、うちのチームでレースをやっている速いライダーに、この目玉ヘルメットをかぶらせてた。だから、今も現役ライダーでオリジナルの目玉ヘルメットをかぶっているのは、だいたい元うちのチーム員だね。
あとね、サーキットに来れば分かると思うけど、いろんな派手なヘルメットを有名ライダー達がかぶってるけど、走ってても誰だかわかりにくいんだよね。でも、目玉ヘルメットは、サインボードを出す時も、最終コーナーを立ち上がって来たらすぐに判別がつく。そういうチーム内でのメリットもあるんだよ。目立つって、すごく便利」
―――目玉ヘルメットはいまでもSP忠男ライダーのシンボルとなっていますが、チーム員全員がかぶっていたんですか?
「速い奴だけね。そりゃそうだよ。だって、50人も60人もチーム員が居たんだから。
昔はうちの実家の裏に、広い古民家みたいなのがあって、ミーティングはそこでやっていたんだけど、5~60人が月1でみんなそこに集まるの。そのなかで、速い奴はこの目玉ヘルメットをかぶれるし、アライもサポートしてくれてたの。
例えば中野真矢と初めて会ったのは、まだ小学生ぐらいの時で、ミニバイクをやっていて…。僕がレースを見に行った時に、トップ争いで転んじゃったんだよね。でも、いい走りをしてたから、目玉のヘルメットを贈ったの。
真矢も僕が見に行ってるのを知っていたから、いいところを見せようと頑張った訳だけど、決勝で転んでリタイアしちゃって…。チームには入れてもらえないと思っていたら、ある日突然ヘルメットが届いてびっくりしたっていってた。そこからの付き合い。
みんなそうだよ。原田哲也とか、松戸直樹とか、みんな10代前半の子どもの時から一緒にあちこち遠征してたから、当時は小さいのをいっぱい連れていて、幼稚園の先生みたいな感じだったよ」
―――数多くのトップライダーを輩出されていますが、若手ライダーの育成で心がけていることはありますか?
「ないよ。好き勝手にみんなで集まって、頑張って走ってるだけ。チームの先輩が速いタイムを出したら、それが目標になるから、いい刺激になってみんなどんどん速くなるの。自然に、いい環境が作られていった感じかな」
―――現在も、若手の育成は続けられていますか?
「今はもうやってない。だって、お金がかかるんだもん。レースをやっていたら、お店が傾いちゃう。
プライベートでレースをしている人が、お店に整備に来たりすると、手伝ったりはするけど、チームとしての活動はもうやめちゃった。全日本ロードレースにも参戦していたけど、あまりにもお金がかかりすぎて、数年前に辞めたね」
―――今後、また若手ライダーを育てる予定はありますか?
「もう無いね。お金がかかりすぎるし。遊びでレースはやると思うけど。今もFZR400を作っていて、原田哲也が乗りたいって言ってるんだよ。テイストオブつくばに出そうかと思って(笑)」
―――バイクをとおして、これから新たにやりたいことはありますか?
「とくには無いけど、僕はいまでも毎日のようにオートバイに乗っているから、これからも元気に乗れたらいいなって感じ」
―――お店には、いつもいらっしゃるんですか?
「いないよ。ここには、たまに来るだけ。気まぐれだから、来てみたらお店が休みって日もあるぐらい(笑)スタッフがとてもいいから、みんな遊ばせてくれているんだよ」
―――では現在は、主に何をされているんですか?
「いまはコロナが流行ってるから、家にいる(笑)コロナが流行る前は、あちこち仲間のところに行って、ほとんど家にいなかったね」
―――バイク離れといわれている現在の若者に、一言お願いします。
「不思議だよね。何でバイクに乗らないのかな? バイクなんて青春のなかで絶対にとおる道だったよね。自転車から原チャリに乗って、バイクに乗って・・・って。乗りたくなるよね? 周りが乗ってたりすると。二輪免許を取らない子もいるっていうから、びっくりだよ。
僕がバイクに初めて乗った時はね、それまでは自転車しか乗ったことがなくて、アクセルを開けるだけで加速したりする感動が、いまだに忘れられないの。だからとりあえず、1回バイクに乗ってみて、その楽しさを体感してみてほしいと思うね」
※ ※ ※
バイク離れといわれている昨今の若者に対しての気持ちを聞いてみたときに、本当に不思議そうな顔で、「こんなにも楽しい乗り物に、なんで興味が湧かないのかが不思議」と、心からバイクを楽しんできたからこその感想を話してくれた鈴木代表。
そんな心の底からバイクを楽しむ方法を伝えてきたからこそ、世界で活躍するトップライダー達を育てることができたのかもしれません。
そして、SP忠男出身のライダー達は、みんな鈴木代表が大好き。たびたび集まっては懇親会を開き、鈴木代表とお揃いのヘルメットを各自で作ってかぶるなど、現在でも代表は教え子たちの目標であり憧れの存在であり続けているのです。
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