■新型エミーラとともに記憶に残るロータス車を振り返る
英国を代表するスポーツカーメーカーのロータスは、天才技術者のコーリン・チャップマンが、バックヤードビルダー(裏庭でクルマの製作やチューニングをおこなう)を経て1952年に創業しました。
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当初はチャップマン自身が乗るレーシングカーの製作からスタートし、レースマシンの販売を経て、ロードカーの開発を開始。
レースでは数多くの革新的なアイデアを投入したF1マシンを製造する高い技術力を誇り、その技術を市販車にもフィードバックすることで、軽量かつ高性能を信条としたスポーツカーを次々と輩出しました。
その後、ロータスはオーナーが変わった後も、スポーツカーに対する明確なコンセプトは変わっていません。
そして、日本時間で2021年7月7日午前4時、ロータスは新型「エミーラ」を世界初公開しました。
すでにエミーラは、ロータス車のなかでも内燃エンジンを搭載する最後のモデルとアナウンスされたメモリアルなモデルとして、世界的にも注目されています。
そこで、新型エミーラとともに、日本でも広く知られているロータスのクルマを5車種紹介します。
●エミーラ
新型エミーラの外観は「エヴォーラ」に近いシルエットのGTカーというイメージですが、フロントフードのエアアウトレットやボディサイドの大型エアインテークなどによって、アグレッシブなフォルムを実現。
ボディサイズは全長4412mm×全幅1895mm×全高1225mmで、やはりエヴォーラ近いサイズで2575mmのホイールベースはエヴォーラと共通です。
シャシは「エリーゼ」から始まったアルミ押し出し材をエポキシ樹脂の接着剤で結合したバスタブ型を継承していますが、すべての寸法が従来型のシャシとは異なるまったく新しいものとアナウンスされています。
室内は2シーターで、ステアリングホイールはロータスでは初のDシェイプを採用。インパネは正面の12.3インチ・ディスプレイのほか、ダッシュボード中央に10.25インチのタッチ式ディスプレイを配置するなど、近年のトレンドが織り込まれています。
リアミッドシップに横置きに搭載されるエンジンは、エキシージやエヴォーラと同様なトヨタ製の3.5リッターV型6気筒スーパーチャージドと、新たにメルセデスAMGから供給される2リッター直列4気筒ターボの2種類を設定。後者の出力は最高出力365馬力から405馬力、最大トルク43.8kgmということだけが公表されており、トランスミッションは6気筒には6速MTと6速AT、4気筒はDCTが設定される予定です。
また、ロータスでは初の先進運転支援システムを装備。アダプティブクルーズコントロールや衝突防止システム、疲労感知アラーム、道路標識情報、車速リミッター、車線逸脱警告、後退時安全確認警告機能、レーンチェンジアシストなどが搭載されます。
車重は1405kg以下を目標としており、従来のモデルと比べると重くなりそうですが、装備を考えるとある程度は仕方がないといえるでしょう。
一方で、0-100km/h加速は4.5秒未満、最高速度は290km/hに達するパフォーマンスを誇り、生粋のスポーツカーであることには変わりありません。
新型エミーラの価格は未定ですが、デリバリーは2022年春からV6車からスタートする予定となっています。
●セブン
創業当初のロータス車は、欧州でも安価なスポーツカーとして高く評価されていました。その理由はエンジンを自社開発とせず、既存のモデルから流用したことと、オーナーが自分で組み立てることを前提としたキットカーとして販売したことにあります。
このキットカーをメインとしてヒットし、後に傑作といわれたのが1957年に登場した「セブン」です。
外観はロングノーズ・ショートデッキのフォルムで、ドライバーは後輪軸付近に着座する古典的なFRスポーツカーに習い、公道を走れるフォーミュラーカーのようなイメージです。
シャシは鋼管を組み合わせたスペースフレームで、外板はアルミパネルとされるなど、やはり当時のフォーミュラーカーと同様な構造とされました。
エンジンはさまざまな仕様が設定されましたが、有名なのはコスワースチューンの欧州フォード製OHVユニットで、86馬力の1.3リッターから106馬力の1.5リッターまであり、さらにDOHCのシリンダーヘッドを自社で生産した1.6リッターの「ロータスツインカム」も設定。
一方、セブンの真骨頂は軽量なボディにあり走るために不必要な装備を省いた結果、ほぼすべてのモデルが500kg台で、ある意味大出力のエンジンを必要としていなかったといえるでしょう。
このセブンは「シリーズ1」から1973年登場の「シリーズ4」まで生産が続き、その後セブンの製造権と販売権は現在のケータハムが引き継ぎ、とくに優れた見た目と性能の「シリーズ3」をモチーフに生産が続けられています。
●ヨーロッパ
ロータスのモデルのなかでも、日本でもっとも知られ高い人気を誇るモデルといえば、1966年に誕生した、「ヨーロッパ」ではないでしょうか。
日本で1970年代後半に起こった「スーパーカーブーム」の火付け役となった漫画「サーキットの狼」の主人公がロータス ヨーロッパに乗っていたことや、当時の日本車ではありえない斬新なフォルムは、少年たちを夢中にさせました。
ロータス ヨーロッパは大きく分けてシリーズ1からシリーズ3がありますが、シリーズ1と2は、リアサイドが高く立ち上がったデザインで、シリーズ3でデザインが変更されてリアサイドは低くなり、日本で広く知られるようになったのはシリーズ3です。
ボディサイズは全長3980mm×全幅1650mmというコンパクトなサイズもさることながら、全高1090mmという低さが際立ちます。なおボディ構造は鋼板バックボーンフレームにFRP製のボディを載せる手法です。
エンジンはリアミッドシップに縦置きに搭載。当初はルノー製の1.5リッターOHVで、最高出力は82馬力とローパワーですが600kgほどの軽量な車体には十分な出力とされました。
そして、シリーズ3の高性能モデル「ヨーロッパ スペシャル」で最高出力126馬力の1.6リッター直列4気筒DOHCを搭載し、よりスポーツカーにふさわしい走りを獲得。
パワー的にはイタリアンスーパーカーよりも劣りますが、地を這うようなスタイルのヨーロッパは、紛れもなくスーパーカーといえるでしょう。
■映画で大ブレイクしたモデルと、新時代のロータスを象徴するモデルとは
●エスプリ
ロータスのモデルでFRのセブンと「エラン」(後にFFも登場)や、ミッドシップのヨーロッパがヒット作となりましたが、1976年に登場した「エスプリ」は、それまでのライトウェイトスポーツカーではなくGTカーとして開発されました。
エスプリは鋼板バックボーンフレームにFRP製ボディを搭載する、ロータスでは定番となっていた手法でつくられ、当初は2リッター直列4気筒エンジンをリアミッドシップに縦置きに搭載。
デザインは直線基調のキャビンとややラウンドしたボディを融合させた、GTカーらしい高級感とスピード感あふれるフォルムを実現しています。
当時、スーパーカーブームでエスプリも日本で紹介されましたが、映画「007私を愛したスパイ」で潜水艇にもなるボンドカーに採用されたことで、エスプリはヨーロッパと並んでロータス車のなかでも少年たちから人気のモデルとなりました。
また、エスプリは2004年まで生産された28年ものロングセラーで、大きくシリーズ1からシリーズ4まで分かれ、ボディも1987年に大幅な変更を受けた「X180」と呼ばれるモデルでは、角を丸めたモダンなデザインに変貌。トヨタと提携していたことからテールランプがAE86型「カローラレビン」のものを流用していたのは、有名なエピソードです。
エンジンも後に2リッターと2.2リッター直列4気筒ターボへと昇格し、さらに1996年には3.5リッターV型8気筒ツインターボとされ、最終的には350馬力を発揮しました。
●エリーゼ
前述のとおり、ロータスのモデルは軽量であることが使命で、たとえハイパワーなエンジンでなくても軽量な車体によって優れた走行性能を実現するというのがロータス車の美学といえます。
このコンセプトを受け継いで1996年に発売された新時代のスポーツカーが、「エリーゼ S1(シリーズ1)」です。
タルガトップとしたオープン2シーターのボディは全長3726mm×全幅1720mm×全高1200mmと非常にコンパクトなサイズで、外観は曲面で構成されるグラマラスなデザインを採用。ロー&ワイドなスタンスは古典的な面もありながら新時代のスポーツカーのフォルムを表現しています。
もっとも特徴的なのがシャシで前述のとおりアルミ製のバスタブ型を同社で初めて採用し、ボディパネルはロータスがもっとも得意とするFRP製とすることで、車重はわずか690kgを達成。
また、ヒーター以外の快適装備やエアバッグなどの安全装備は搭載されず、S1でも初期のモデルではアルミ製ブレーキディスクを採用するなど、ストイックなまで軽量化にこだわっていました。
当初、リアミッドシップに搭載されたエンジンはローバー製の1.8リッター直列4気筒DOHCで、最高出力は120馬力とローパワーですが加速性能は十分で、コーナリング性能の高さも折り紙付きです。
その後、エンジンはトヨタ製にスイッチされてパワーアップを図り、S2、S3とデザインのアップデートもおこなわれました。
さらに、快適装備や安全装備が充実したことでS1から次第に車重は増えていきましたが、それでも900kg前後に抑えられています。
エリーゼはすでに生産を終えていますが、ロータスの伝統的なコンセプトを受け継いだ集大成といえるモデルでした。
※ ※ ※
繰り返しになりますが、新型エミーラは内燃エンジンを搭載した最後のロータス車となる予定です。
一方で、ロータスのモデルはエンジンノイズや振動などが容赦なく室内に入ってくるモデルが多く、スポーツカーをドライブしていることをあらゆる感覚で感じとれます。
そうしたモデルこそロータスならではであり、やはりEV化は一抹の寂しさもありますが、きっと次世代のロータス車もすばらしいコーナリングマシンであることは普遍でしょう。
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