Volvo XC40 Recharge Plug-in hybrid T5
ボルボ XC40 リチャージ・プラグインハイブリッド T5
伝説の異端児・フェラーリ 288GTOが生まれた本当の理由とは?【Playback GENROQ 2019】
新たに名称を「リチャージ」ラインに変更してデビュー
XC40に初めて触れたとき、その愛らしくも近未来的なデザインと、すっきりとした操作性にヒットの予感を感じた。そしてこれが先の電動化を見越したCMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)を初採用したクルマだと聞いたとき、なるほどと深く頷いた。
そんなボルボが満を持してラインナップしたのが、この「XC40 リチャージ・プラグインハイブリッド T5」だ。名前だけを聞くと実に大げさだが、その中身はいわゆるP-HEV。かつてはモーターとICE(内燃機関)を合わせて「ツインエンジン」と称した名称を今一度改め、ピュアEVと合わせて「リチャージ」ラインとしたのである。
ちなみに純粋なガソリンエンジン車は、今年の在庫限りで全廃。スタンダードモデルは充電機能を持たない48Vマイルドハイブリッド車のみとなるが、これに特別なライン名称が付かないことを考えても、今後ボルボの主力はリチャージ・ラインにシフトしていくのだと伺える。
ボルボ初の3気筒エンジンに電気モーターを組み合わせる
さてそんな新生T5に試乗してまず感心したのは、「もうこれは、ほぼEVじゃないか!」と思える気持ちの良い乗り味だった。
搭載されるエンジンは、新開発の1.5リッター直列3気筒ターボ。その出力は最高出力180ps/最大トルク265Nmと必要にして十分な数値を誇るのだが、T5はその始動からモーターを積極的に作動させ、エンジンの存在を目立たせない。
もちろん必要以上にアクセルを踏み込めば、車体前方から3気筒特有の粗めなサウンドは聞こえてくるが、それですらどこか遠鳴り。XC60 B5に投入された直列4気筒のようにオイルパンを二重構造にする処置は採られていないものの、3気筒化による排気量の縮小やメカニカルノイズの少なさ、防振材の投入(エンジンカバーのソフトパッドなどは、本当に分厚い)などによって、見事にNVHが抑え込まれているのである。
1タンク/1充電で713kmも走れる
構造的な話をもう少しすると、乗り味の要となるモーターは60kW(82hp)/4000-1万1500rpmのパワーと、160Nm/0-3000rpmのトルクを発生。この出力は自社製7速DCTの偶数側ギヤ(2-4速)を介して、状況に応じてエンジンパワーをミックスさせながら前輪を駆動する。ボルボといえばAWDのイメージも強いが、これは当面48V M-HEV(マイルドハイブリッド)車が担っていくのだという。また将来的にはピュアEVのリヤモーターによって、eー4WDが主力となっていくようだ。
資料によればリチウムイオンバッテリーは総電力量が34Ahで、電圧は250V~280V(最大電圧373.5V)。その容量は10.91kWhとなっている。満充電に掛かる時間は2.5~3時間(200V/16A)で、急速充電には対応していない。またピュアEVによる走行距離は41.0kmと、国産の最新P-HEVに比べて少なめだ。
しかし日本導入前の試走では、高速道路の低負荷状態では50km以上をマークしたというし、WLTCモード総合で14.0km/Lの燃費とタンク容量(48リットル)を掛け合わせれば、その走行距離は単純計算で672km。ここに41kmのEV航続距離を合わせると、実に1タンク/1充電で713kmも走れることになる。住居に充電装置は必要だが、普段使いはピュアEV、週末の遠出はハイブリッドという使い方が、十分可能なのである。
ボルボがスニーカーに喩える軽快なパフォーマンス
シャシー面での印象は、ボルボらしい優しい乗り心地が基本となる。
モーター(27kg)搭載による重量増はエンジンの小型化でバランスを取り、バッテリー(約94kg)をセンタートンネルに縦型配置したことで、その前後重量配分はICEモデルとほぼ同等の60:40。街中でほどよいクッション性を示しながら、同時にリニアな応答性を見せるサスペンションと、モーター主導によるレスポンス遅れのない走りは極めてマッチングが良く、静粛性の高い室内で透明感のあるオーディアを鳴らしながら走ると、驚くほどに気分がアガる。ボルボがXC40をスニーカーに例えたのは言い得て妙、これだけ街中を楽しく走れるクルマも久しぶりだった。
ただ高速道路での身のこなしには、重心の高さを感じる。アシストの効いた電動ステアリングに対してロールスピードがやや早過ぎ、特に高速コーナーなどでは、やや過敏なステア特性が見え隠れする。
ただこれはP-HEV化の影響ではなく、そもそものサスペンション剛性がソフトに過ぎるからだろう。パワーモードに入れることで電動ステアリングの座りは良くなるが、もう少しデフォルトのダンパー減衰力を高めるか、オプションの4C可変ダンパーが欲しいところだ。
次世代の走りを感じられるハイブリッド主体の走行フィール
ちなみに通常モードではサボり気味だった3気筒ターボもここでは常時起動され、スポーティさには拍車が掛かる。サウンド自体は控えめながら、その鳴り方や吹け上がり感は意外なほど野太く痛快なだけに、これを自在に操るならやはりパドルシフトが欲しいと感じた。もしくはDCTとの連携が複雑になるかもしれないが、目新しさも含めて回生ブレーキをパドル化したらよいのにと思えた(現状ではシフトを「B」に入れる1段階制御)。
というわけで高速道路でも、その走りは穏やかなHybridモードが主体となった。ちなみに高速巡航時の7速DCTは、モーター側のギヤを2速から4速へとシフトする。パーシャルスロットルで注意深く走っていると、およそ95km/h付近でその切り替えによるピッチングを確認できたが、アクセルを踏み続けていない限りはその変速も知らぬ間に行われ、そのクルージングも至って快適であった。
そしてこうしたモーター主導型の走りとACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は、当たり前なのだがとても親和性が高いものであると、改めて実感した。前後の車間を調整する上でも、またステアリング上のボタンで速度を細かく設定するときでも、モーター駆動であればこれに応答遅れなく対応することができる。人間の意志に対して“待ち”のない走りは快適さを底上げし、ゆったり走っていても退屈を感じない。これにはちょっと牙を抜かれたような気もするけれど、次世代の走りを感じることができた。
新型XC40 T5はモーターが主役の現代的なP-HEVだ
最後は街中を敢えてPureモードだけで走り回ってみた。すると電池は底を突き(EVカウンターが0kmに。しかし実際の電池残量はゼロにはならない)、T5は直列3気筒エンジン丸出しのガソリン車になってしまった(笑)。
しかしここからHybridモードに転じると、素早く回生を促してモーター主導の走行へ復帰したのは見事だった。1.5リッター直列3気筒ターボを発電機として使う、ちょっと贅沢な印象だ。
総じて新型XC40 T5は、モーターが主役の現代的なP-HEVであった。意地悪く言えばそれはリッター14kmしか走らないP-HEVとも言えるのだが、効率だけで人が満足できないのは、GENROQ webの読者であればご存じのことだろう。その走りはとても気持ち良く、それだけでこのクルマを選ぶ価値が十分にある。EV化が進むほどクルマは、その素性が勝負どころなのだと思えた試乗であった。
REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)
【SPECIFICATIONS】
ボルボ XC40 リチャージ・ハイブリッド T5 インスクリプション
ボディサイズ:全長4425 全幅1875 全高1660mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1810kg
エンジン:直列3気筒DOHCターボ
総排気量:1476cc
ボア×ストローク:82.0×93.2mm
エンジン最高出力:132kW(180ps)/1500-3000rpm
エンジン最大トルク:265Nm/1500–3000rpm
電気モーター最高出力:60kW(81.5ps)/1万1500rpm
電気モーター最大トルク:160Nm/3000rpm
トランスミッション:7速AT
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ディスク
タイヤサイズ:前後235/50R19
車両本体価格(税込):649万円
【問い合わせ先】
ボルボ・カスタマーセンター
TEL 0120-922-622
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