現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > なぜホンダは中国で魅力的なEVを次々投入も他国で売らない? テスラやBMWと異なる戦略とは

ここから本文です

なぜホンダは中国で魅力的なEVを次々投入も他国で売らない? テスラやBMWと異なる戦略とは

掲載 15
なぜホンダは中国で魅力的なEVを次々投入も他国で売らない? テスラやBMWと異なる戦略とは

■ホンダは、中国では魅力的なEVが続々投入も、なぜ他国で売らない?

 中国で魅力的な電気自動車(EV)を続々と発表しているホンダですが、そうしたモデルは日本をはじめとするほかの地域では販売されていません。
 
 しかし、米国の電気自動車メーカーのテスラは、2020年10月中頃に上海工場で生産したEV「モデル3」を欧州に向けて輸出を開始すると発表。同じくドイツのBMWも2021年始めに欧州向けへの輸出を開始するとしています。
 
 では、ホンダもテスラやBMWと同様に中国で開発・生産しているEVをグローバルで展開する可能性はあるのでしょうか。

【画像】これ日本でも絶対売れるでしょ! ホンダ自慢のEVを3車種まとめて見る(46枚)

 中長期的に見れば既定路線となっているクルマの電動化ですが、その方向性や積極性については、自動車メーカーごとに異なる戦略を採っているのが現状です。

 日系自動車メーカーでいえば、トヨタはハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)を軸にしつつ、将来的にはFCV(燃料電池車)の普及を目指しています。

 また、トヨタは中国市場でホンダと同様に「C-HR」ベースの中国専用EVを2車種展開するなど、さまざまなパワートレインを展開。

 一方、日産は早くから電気自動車(EV)の開発に注力しており、2010年から「リーフ」をグローバルで展開し、2021年中頃には第二弾として「アリア」もグローバルで導入するなど、今後もその方向性は継続するようです。

 マツダやスバルのような中規模自動車メーカーは、電動化への大規模投資ができないことから、トヨタなどの自動車メーカーとの協業をしたり、モデルや販売地域を絞り込む「選択と集中」をおこなうことで、将来を模索しています。

 そんななか、独自の戦略を採るのがホンダです。ホンダは、以前より「クラリティ フューエルセル」や「クラリティ PHV」といったFCVやPHVも市場に投入している一方で、2020年にはブランド初のEVである「ホンダe」を日本や欧州で発売しています。

 販売台数はそれほど多くはないものの、あらゆる電動パワートレインをラインナップしているのは、ホンダの技術開発力の強さを示しているといえるでしょう。

 そんなホンダですが、最近になって電動化が加速しています。そして、その中心となっているのが中国です。

 ホンダは、現地の合弁企業である広汽ホンダから「VE-1」、東風ホンダから「X-NV」というEVをそれぞれ2018年と2019年に発表しています。

 そして、2020年11月の広州モーターショー2020では、東風ホンダから「M-NV」が発表されました。

 これらは、細部こそ異なるものの、基本的には日本でも発売されているコンパクトSUVの「ヴェゼル」をベースとしたコンパクトSUVスタイルのEVです。

 スタイリングはもとより、EVにおいて重要となる航続距離についても500km近くとなるなど、実用的なレベルに仕上がっています。

 また、現地での販売価格も日本円換算で200万円台となっているなど、単なる技術アピールのためのモデルではなく、しっかりと「販売台数を稼ぐクルマ」であることがうかがえます。

 もともと、世界でもっとも電動化を推進している市場のひとつである中国に対して、電動車を積極的に投入していくというのは決して不思議なことではないですが、電動化は中国市場だけの専売特許というわけではありません。

 実際に、欧州各国では、2030-2050年頃をめどに内燃機関のみの新車を販売することを規制する方向に向かっています。日本や北米でもそうした議論が進められています。

 一般消費者からすれば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンといった内燃機関を搭載したクルマのほうが現時点ではまだまだ身近かもしれません。

 しかし、自動車メーカー側の視点に立つと、早ければあと10年以内の間に、電動車を開発して量産体制を構築し、販売網や整備ネットワークの整備も進めなければならないのです。

 そして当然のことながら、販売する電動車は、機能的にも価格的にも魅力的な商品である必要があります。

 一方で、ホンダの場合、すでに中国市場で実用的な機能かつ価格のEVを販売していることから、来たるべき電動化の時代への対応はそれほど難しくないと考えることもできます。

 むしろ、航続距離が500km、価格が300万円以下というEVであれば、いまの日本でも購入を検討する消費者は少なくないかもしれません。

 また、欧州などでは、各メーカーの新車販売台数のうち、一定の台数をEVなどの電動車にしなければ追徴金などのペナルティが課される「CAFE規制」という環境規制が進められています。

 各メーカーは新型EVを投入することでこの規制へ対応しており、その代表的な例がマツダ「MX-30」、そして前述のホンダeです。

 ただ、ここで疑問が浮かびます。ホンダの場合、すでに中国市場でヴェゼルベースのEVを投入していることから、単なる規制対応のためならば、そうした中国生産のEVを欧州などの各地域へ展開すれば良いのではないでしょうか。

 もちろん、地域ごとに細かな規制対応は必要ですが、そもそも世界戦略車であるヴェゼルは世界の主要地域で販売されているため、規制対応自体はそれほど難しいことではないでしょう。

 実際に、ある業界関係者は「中国で展開している日系自動車メーカーのEVを日本や欧州で販売することは、技術的にはそれほど難しくはない」と話します。

 また、ホンダは2020年9月に米国のGMと北米における戦略的アライアンスに合意。ここでは、GMのグローバルEVプラットフォームをベースにホンダ向けの新型EV2車種を共同開発すると明かしています。

 これらのグローバルにおけるEV戦略について、ホンダは次のように話します。

「ホンダのクルマは、グローバルモデルと地域専用モデルに分かれています。

 しかし、現時点で、ホンダが展開するEVは、中国専用、日本や欧州のホンダeが展開されており、それぞれの現地法人などがその地域にあったモデルを展開する戦略を採っています」

※ ※ ※

 トヨタには「適地適車」という理念があるように、各地域に合わせたクルマづくりは、日系自動車メーカーのお家芸ともいえるものです。

 ホンダもまた同様の理念に沿った戦略を採っているということなのでしょう。

■日本展開も? SUVスタイルの次世代EVコンセプト

 中国で開発・生産したEVを世界展開するにはさまざまなハードルがあるといいます。

 実際に、合弁相手である広州汽車や東風汽車との契約や、中国政府による規制、さらにはEVの心臓部であるバッテリーの調達の問題なども、中国で生産しているEVを海外に展開しない(できない)理由と考えられます。

 また、年間の新車販売台数が約3000万台と、世界の新車の約30%を占める中国市場を最優先したいという事情もあるのかもしれません。

 営利企業である以上、もっともビジネス上のメリットがある地域に注力するのは当然です。

 しかし、そう悲観することはないかもしれません。そのヒントは、2020年9月に開催された北京モーターショー2020で発表された「Honda SUV e:concept」という、SUVスタイルのEVコンセプトカーにあります。

 ホンダ広報部では同車を「将来、中国で初となるホンダブランドのEVの量産を見据え、その方向性を示すEVコンセプトカー」と説明するなど、今後を担う重要なモデルという位置づけであることがわかります。

 同車は、ホンダの現地法人であるホンダ技研科技によって開発が進められたという点では、中国市場をメインターゲットに据えたモデルであることは間違いありません。

 しかし、このコンセプトSUVは将来的に中国市場以外でも展開する可能性があるといいます。

 ホンダは次のように説明します。

「Honda SUV e:conceptは、大量生産を前提としたコンセプトカーです。具体的な地域や時期は未定ですが、市販化された際には中国以外の地域での展開も検討しています」

※ ※ ※

 新型車の開発では、開発そのものと同等以上に重要なのが量産化であるといわれています。

 数万台単位の個体を一定の品質で保つためには、工場設備への投資や部品調達システムの構築など多大なコストと時間が必要です。

 一方で、量産すればするほど、1台あたりのコストは下がるため、ひとつのモデルを各地域で展開することは、消費者にとってもメーカーにとってもメリットは少なくありません。

 ホンダは、広州汽車や東風汽車とヴェゼルベースのEVを開発・生産するなかで、EVの量産ノウハウを得てきたといわれています。

 そうしたノウハウを活かして登場するであろう新型EVは、まさしくホンダの命運を握るモデルとなるかもしれません。

こんな記事も読まれています

フェルスタッペン予選5番手「ベガス用リヤウイングを作らないという方針がハンデに」タイトルには有利な位置を確保
フェルスタッペン予選5番手「ベガス用リヤウイングを作らないという方針がハンデに」タイトルには有利な位置を確保
AUTOSPORT web
佐藤万璃音、2025年もユナイテッド・オートスポーツからWEC世界耐久選手権にフル参戦
佐藤万璃音、2025年もユナイテッド・オートスポーツからWEC世界耐久選手権にフル参戦
AUTOSPORT web
やっぱたまらんなV型エンジン!! [スカイラインNISMO]とレクサス[IS500]の[パンチ力]にひれ伏した件
やっぱたまらんなV型エンジン!! [スカイラインNISMO]とレクサス[IS500]の[パンチ力]にひれ伏した件
ベストカーWeb
【角田裕毅F1第22戦展望】ファクトリーと現場の連携で活きたレッドブル製リヤサスペンション。改善の継続が7番手に繋がる
【角田裕毅F1第22戦展望】ファクトリーと現場の連携で活きたレッドブル製リヤサスペンション。改善の継続が7番手に繋がる
AUTOSPORT web
エバンスとの実質的な一騎打ちもタナクはトップ譲らず。ヌービルは7番手に挽回【ラリージャパン デイ3】
エバンスとの実質的な一騎打ちもタナクはトップ譲らず。ヌービルは7番手に挽回【ラリージャパン デイ3】
AUTOSPORT web
メルセデス・ベンツCLE 詳細データテスト 快適で上質な走りが身上 動力性能と燃費効率はほどほど
メルセデス・ベンツCLE 詳細データテスト 快適で上質な走りが身上 動力性能と燃費効率はほどほど
AUTOCAR JAPAN
WRCラリージャパンSS12恵那での車両進入事案について実行委員会が声明。被害届を提出へ
WRCラリージャパンSS12恵那での車両進入事案について実行委員会が声明。被害届を提出へ
AUTOSPORT web
2024年も記録保持中!? カローラ ロードスター…… ギネスブックに登録された「日本のクルマの世界一」【10年前の再録記事プレイバック】
2024年も記録保持中!? カローラ ロードスター…… ギネスブックに登録された「日本のクルマの世界一」【10年前の再録記事プレイバック】
ベストカーWeb
80年代バブル期に日本で人気だったMG「ミジェット」に試乗! 英国ライトウェイトスポーツの代表格はいまもビギナーにオススメです【旧車ソムリエ】
80年代バブル期に日本で人気だったMG「ミジェット」に試乗! 英国ライトウェイトスポーツの代表格はいまもビギナーにオススメです【旧車ソムリエ】
Auto Messe Web
【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP予選
【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP予選
AUTOSPORT web
角田裕毅が予選7番手「大満足。アップグレードへの理解が改善につながった」努力が報われたとチームも喜ぶ/F1第22戦
角田裕毅が予選7番手「大満足。アップグレードへの理解が改善につながった」努力が報われたとチームも喜ぶ/F1第22戦
AUTOSPORT web
勝田貴元、木にスピンヒットも間一髪「メンタル的に難しい一日。明日はタイトル獲得を最優先」/ラリージャパン デイ3
勝田貴元、木にスピンヒットも間一髪「メンタル的に難しい一日。明日はタイトル獲得を最優先」/ラリージャパン デイ3
AUTOSPORT web
クラッシュで50Gを超える衝撃を受けたコラピント。決勝レースの出場可否は再検査後に判断へ/F1第22戦
クラッシュで50Gを超える衝撃を受けたコラピント。決勝レースの出場可否は再検査後に判断へ/F1第22戦
AUTOSPORT web
胸を打つ「上質な走り」 アウディQ6 e-トロン・クワトロへ試乗 優秀なシャシーを味わえる388ps!
胸を打つ「上質な走り」 アウディQ6 e-トロン・クワトロへ試乗 優秀なシャシーを味わえる388ps!
AUTOCAR JAPAN
オーテック&ニスモ車が大集合!「AOG湘南里帰りミーティング2024」で見た「超レア車5台」と「中古車で狙いたいクルマ5台」を紹介します
オーテック&ニスモ車が大集合!「AOG湘南里帰りミーティング2024」で見た「超レア車5台」と「中古車で狙いたいクルマ5台」を紹介します
Auto Messe Web
なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 後編
なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 後編
AUTOCAR JAPAN
ラリージャパン3日目、SS12がキャンセル…一般車両が検問を突破しコース内へ進入、実行委員会は理解呼びかけると共に被害届を提出予定
ラリージャパン3日目、SS12がキャンセル…一般車両が検問を突破しコース内へ進入、実行委員会は理解呼びかけると共に被害届を提出予定
レスポンス
【F1第22戦予選の要点】苦戦予想を覆すアタック。ラッセルとガスリーが見せた2つのサプライズ
【F1第22戦予選の要点】苦戦予想を覆すアタック。ラッセルとガスリーが見せた2つのサプライズ
AUTOSPORT web

みんなのコメント

15件
  • 国内はトヨタの囲い込み商法にまかせて、他社は海外へ。
  • ホンダのどの部署がそう言ったの?
    どうせ創作したコメントだろ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村