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【本当に体感できる?】タイプR純正用品に採用の“実効空力”を乗り比べてみた。

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【本当に体感できる?】タイプR純正用品に採用の“実効空力”を乗り比べてみた。

ホンダアクセスの「実効空力(じっこうくうりき)勉強試乗会」なるイベントが、“群サイ”こと群馬サイクルスポーツセンターで行われた。
 
基本的には、新型シビック タイプRに純正アクセサリーとして新開発された「テールゲートスポイラー」の効果を体感する試乗会だが、お楽しみはもう一つあった。
 

ホンダアクセスの変態集団(開発陣)が自信を持つ核心技術
 
このテールゲートスポイラーには一見目立たないが、キーテクノロジーとして新しい実効空力デバイスが搭載されている。その効果を一般的な車種でも実証すべく、実験用に手作りしたデバイス(ホンダアクセスの匠による力作)をNボックスに装着し、走りの違いを検証するという趣向だ。マニア集団のホンダアクセスらしく、なかなか変態濃度の高いコンテンツである。
 
ホンダアクセスがエアロダイナミクスの開発でキーワードにしているのが「実効空力」。「日常の速度域でも体感できる空力効果」を同社ではこう呼んでいる。
 
実効空力の狙いは、「路面に吸いつくような安定感」。前後リフトバランスを最適化し、4輪のタイヤグリップを使い切れる接地荷重を得ることで、外乱の影響やヨーの発生を最小化する。ホンダアクセスが手がけるエアロパーツやコンプリートモデルの「モデューロX」で、すでにご存じの方も多いだろう。
 
そして、2022年にマイナーチェンジされたフリード モデューロXからは、空力効果をさらに高める実効空力デバイスを搭載(フリードのデバイスはエアロフィン)。ホンダアクセスのエアロダイナミクスはたゆまない進化を続けているのだ。
 
ギザギザのあり・なしを体験。ありはアリアリだった!!
 
新型シビック タイプR用のテールゲートスポイラーに採用された実効空力デバイスは、ギザギザの鋸歯形状。シェブロンとも呼ばれるユニークなカタチだ。これが強力なダウンフォースを生み出すメインエレメントの下面に実装されているわけだが、その鋸歯形状の効果をシンプルに試すのがNボックス(NAのFF車)を使った実験である。
 
まずノーマル(非装着)の状態で走りの感触を確かめたあと、いったんピットイン。今度は鋸歯形状の実効空力デバイスをテールゲートに装着する。装着といってもデバイスの裏面はマグネットシートなので、ペタッと貼る(というか置く)だけだ。
 
何となくオカルト的なこの手の比較試乗モノは、その効果が本当に感じられるのか、自分のセンシング能力を含めていつも軽い不安を覚える。しかし、眉に唾をつけて再びコースインすると、あら不思議!
 
いきなり直進性が向上しているのだ。ノーマルではストレートでも路面の複雑なうねりで右に左に修正舵をゆっくり繰り返したが、その必要性が格段に少ない。路面の外乱にステアリングが影響を受けにくく、挙動が落ち着いて運転しやすい。車速は一般的な50~60km/hだ。
 
ノーマルとの違いはコーナーでも体感できる。実効空力デバイス装着車はステアリング中立付近の曖昧な感触が軽減。初期から操舵の効きが向上し、ハンドリングのリニアリティが高くなる。修正舵はここでも少なく、旋回中の操舵角やボディの姿勢はピタッと安定している。路面に追従するサスペンションのストロークも、しなやかさが増しているように感じられる。
何だかキツネにつままれたようだが、実効空力デバイスの効果はアリアリだ。
 
開発担当者によると、鋸歯形状の三角形の一つひとつが小さな縦渦の流れをいくつも生成し、ルーフエンドから剥離する気流の乱れを整えるという。この整流によって走行中に発生するリフト(揚力)の前後バランスが最適化され、ボディの姿勢がピタッと安定する。ダウンフォースは発生しないものの、土台となるボディを空気の力で上からある程度抑えることで、その下のサスペンションも動きがよくなるという仕組みだ。
 
しかも、鋸歯形状が生み出す渦流はボルテックスジェネレーターと違って指向性が強くない。そのため直進状態から旋回に移る際にも渦流が壁にならず、左右方向にもスムーズな整流効果が得られるというのだ。
 
効果はあるが、可視化に至らず
 
じつはこの鋸歯形状、渦流があまりにも細かいため、その様子を可視化して確認はできていないらしい。とはいえ、航空機のジェットエンジン(シェブロンノズル)では、排気流とエンジン周囲の気流の混合を穏やかにする騒音低減効果が実証されている。つまり、ノイズの原因となる乱流の発生を軽減していると考えられるのだ。
 
シビック タイプR用にホンダアクセスが新開発したテールゲートスポイラーでは、この鋸歯形状の実効空力デバイスがメインエレメント部の下面にズラリと配置されている。これによって下面に沿って流れる空気を整流。直後のガーニーフラップ部までスムーズに導く。さらなるダウンフォースを生み出すガーニーフラップ形状の効果を、いっそう高める狙いがある。
 
タイプRの日常使いをもっと快適にするために開発
 
テールゲートスポイラーの動的コンセプトは、「いかなる道でもFUNなGT(グランドツーリング)性能」。タイムを削り取るサーキットの走りだけでなく、圧倒的なパフォーマンスを高速道路のロングドライブでも快適に楽しめる直進安定性、またワインディングなどでもハンドリングのさらなる一体感や運転がうまくなったように感じさせる寛容性が追求されている。
 
「ノーマルのタイプRはフロントのダウンフォースが強めで、このテールゲートスポイラーを装着すると前後のリフトバランスが均等近くになります。ノーマルはフロントで路面を捉える印象が強いですが、FRみたいな乗り味に感じられると思います」(開発担当者)
 
ホンマかいな!? ただ、筆者はそもそも新型タイプRの試乗自体が今回初めて。330馬力FFの過激さに圧倒されてスポイラー付け替えの違いが入ってくるか一抹の不安があった。
 
ともかく赤いバケットシートに収まり、ドライブモード「スポーツ」で乗り比べしてみると、これがホントにそうなのだ。今度はNボックスと異なり、そこそこタイプRなりの走り方である。
 
“リヤの存在感”が増し、FR車のようなハンドリングに!
 
まず、ステアリングのフィーリングが違う。新型はノーマルでも洗練度を高めているが、リヤのスポイラーをホンダアクセス製に換装すると、中立でノーマルと同等以上の直進性を発揮しながら、舵を入れるとさらにスッキリ軽い上質な手応えを味わわせる。
 
そして、真っ直ぐ走っていてもリヤの確かな存在を感じるのだ。群サイの荒れた舗装路面にもサスペンションが見事に追従し、後輪がしっかり接地する様子が手に取るように伝わってくる。サスの動きもいっそうしなやかになり、乗り心地も向上。後輪で路面を蹴りながら(実際は違うが)高速道路を矢のように、かつ快適に走り続けるツアラーのような雰囲気が確かに出ている。
 
コーナリングにしてもそう。ノーマルは前輪で路面を鷲掴みにして曲がり、アクセルオンで前輪が駆動力で引っ張りながらさらに曲がるという、フロント主体で曲がるイメージだ(FFだから当然だが)。
 
アクセス装着では操舵して外側の後輪にグッと荷重が乗り、旋回中の姿勢はノーマルよりもボディが吸いつくように安定。再びアクセルを踏み込むと、外側のリヤサスがグッと沈み込んで一気に駆動力をかける。ステア特性にアンダー傾向が表れることもない。コーナーにおける一連の動きは、まさしくFRのようなボディの前後バランスと一体感の密なハンドリングを実感させるのだ。
 
強力なダウンフォースによって前後リフトバランスを均等に近づけ、タイヤにかかる荷重もすべて均等にするというテールゲートスポイラーの性能はホンモノ。旋回でも空力効果が切れ目なくスムーズにつながる感触は、鋸歯形状の実効空力デバイスが威力を発揮しているに違いない。
 
魔法をかけられたよう……“味変”効果は絶大だった!
 
テールゲートスポイラーはコレ一つでタイプRの走り味を別モノにチューニングできる、魔法のような純正エアロパーツだ。そして、鋸歯形状にはまだナゾも多いというから、形状や大きさなどに今後新たな発見がある可能性は十分ある。ホンダアクセスの実効空力デバイスは今後の進化も楽しみなのだ。
 
〈文=戸田治宏 写真=山内潤也〉

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みんなのコメント

5件
  • FFがFRのようなハンドリングにはなる訳ないかと
    FFでリアが安定すると4WDの様な乗り味になる 恐らく4WDの様な乗り味なのだと思う
    普段辛口のモータージャーナリストの面々が、タイプRに関しては皆が口を揃えて大絶賛 よほど良い出来なのでしょう
    峠と高速で是非一度乗ってみたい
  • シビック海苔はFRを仇だと思って運転したことないからこれがFRっぽいんだよと言われれば鵜呑みにできる。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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