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【単独インタビュー】ポンタス・ヘグストロム氏に聞くFCAとPSAの近未来(前編:サービス体制に変化はあるのか)

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【単独インタビュー】ポンタス・ヘグストロム氏に聞くFCAとPSAの近未来(前編:サービス体制に変化はあるのか)

■コロナ禍でも“強さ”を見せたFCAとPSAに共通しているのは“個性”

 2021年7月1日付で、ポンタス・ヘグストロム氏が、グループPSAジャパンの代表取締役社長に就任した。そこで、FCAジャパン代表取締役社長と兼務する形で、ステランティスの日本におけるふたつの子会社を統括することになったヘグストロム氏に、今後のFCAジャパンとグループPSAジャパンの展開について伺った。

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●FCA、PSAともに好調な理由とは

──FCAジャパンの4ブランド、グループPSAジャパンの3ブランド、いずれもコロナ渦の厳しい状況にもかかわらず、業績は好調だと聞いています。全体でプラス46%。その要因はどんなところにあるとお考えですか?

「ふたつ要因があると思います。まず、需要が力強いということ。そしてもうひとつは私達の自助努力で、製品も素晴らしいしマーケティングもちゃんとできてる、ということでしょう。

 需要については、市場におけるクルマへの関心が高まっていることが、要員としてあると思います。その証拠に、私達のブランドのディーラーへの来店客数も高まっています。このパンデミックのなか、人々がより安全な移動手段を求めているということでしょう。それに加えて、今の旅行ができないという状況下で、本当はまったく移動してはいけないのかもしれないのですけど、近所にクルマでちょっとお出掛けするような、そんな楽しみ方をあらためて発見した方が多いということもあるでしょう。

 さらに興味深いのは、購買者のなかに若い人が増えてきているということです。それも輸入車を初めて買うだけではなく、クルマを買うことそのものが初めてという若い方が増えているんです。日本ではこれまで、まず国産車からスタートし、少ししてから輸入車にステップアップするという流れがほとんどだったかと思うのですが、このパンデミックのなかで、初めてクルマを買われる方が私達のディーラーに一足飛びで来てくださる、というケースが増えています。

 ここから見てとれるのは、クルマというのが生き方を表すステートメントのようなもので、自分の個性を表すのに自分にぴったり合うクルマを買いたいと思われている、ということでしょう。私達のブランドはすべて、しっかりとキャラクターの立った魅力的なデザインや乗り味などを持っているので、そこを支持していただけているんだと考えています。私達のフランス・サイドのブランドでは、この数か月の間にたくさんのニューモデルを出しました。その新車効果もあると思います。けれどフィアット『500』やアバルト『595』のように、ずっと以前から存在しているクルマも、昨年より売れ行きが好調なのです」

──FCAジャパンのこれまでのクルマ達にはもちろんすべてお乗りになってるでしょうが、それらとはテイストの異なるフレンチ3ブランドのクルマにも、お乗りになっていらっしゃいますか?

「まだスタートしたばかりなので、残念ながら全てのモデルには乗れていません(笑)。これから、ですね」

●ブランドそれぞれの個性

──7つのブランドそれぞれの強みは、どんなところにあるとお考えですか?

「まず、すべてのブランドに共通しているのは、キャラクターが強いということでしょう。

 プジョーは私達のブランドのなかで、もっとも幅の広いポートフォリオを持っています。小さな『208』からミニバン・タイプの『リフター』まで取り揃えています。どなたがショールームにおいでになっても必ずマッチする1台を見つけていただくことができるでしょう。フランスの国民的ブランド、といってもいいかも知れません。

 シトロエンは、抜きん出たキャラクターの強さと強いデザインを持ったブランドで、自分達のデザインを大切にするという原点に回帰していますね。遊び心を持ちながらも自分達のヘリテイジへのリンクを強めているような、そんなクルマがラインナップされてます。もちろんこれからも登場してくる、と聞いています。

 DSは、ブランドとしては若いんですけれど、フランスのデザインにおける古くからの特徴的なものを様々な側面から取り入れているブランドです。そして、フランス流のラグジュアリーを表現してもいますね。また、フランスというのはファッション大国なのですが、それをクルマで体現している、ともいえるでしょう。

 アルファ ロメオは、とくに男性に強い吸引力を持っているブランドで、いってみれば誰もが人生のうちで一度は乗ってみたいと思えるような、憧れの気持ちをかきたてる存在です。アルファ ロメオ以外のブランドで、ここまで真剣に所有してみたいと感じさせるブランドは存在しないんじゃないでしょうか。それだからこそ逆に、土壇場になると躊躇ってしまわれる方も少なくないでしょう。けれどそういう方がひとたび線を飛び越えてしまうと、ずっとアルファ ロメオに乗り続けてしまう、アルフィスタになってしまう。そういう意味からいうと、オール・オア・ナッシング、アルファ ロメオに乗るか乗らないかという両極端な選択をされがちなところがありますね。そしてそのときにはアルファ ロメオを購入されなかったとしてもいつかは乗りたいと思い、アルファ ロメオに乗っている人を見るとうらやましいと感じる、そんな気持ちを抱かされてしまうようなブランドでもあるんじゃないかと思います。

 フィアットは、それとはまったく別の側面を持ったイタリアン・ブランドですね。日本では特に女性層からの支持が強く、サイズ感が日本の道路事情にぴったりだということもあるんですけれども、何よりキュートであって、それだからこそこんなにも長く皆さんに愛されてるんじゃないかと思います。他の輸入車を見てみても、フィアットほど“KAWAII(カワイイ)”という言葉が似合うブランドを、私は知りません。それにもうひとつの特徴として、シンプリシティであることが挙げられるでしょう。昔のチンクエチェントと同じで、親しみやすいデザインで作らて、人々の手に届きやすい価格で販売されています。今、クルマはどんどん進化して、ある意味とても複雑になってきています。そのなかでフィアットのシンプルさというのが新たな魅力を放ち始めているのかも知れません。ボタンがたくさん並んでいて大きなスクリーンがあって、操作方法に悩みながらスタートというのじゃなく、運転席についてニッコリしてエンジンをかけてスタートというシンプルさは、凄くいいと思います。

 アバルトは、日本には2009年に再導入しましたので、日本では比較的若いブランドといえるかもしれませんが、アバルトそのものには長く深い歴史があって、モータースポーツから生まれたというレガシーに忠実なブランディングがおこなわれていることを、正確に理解していただけているようです。とても優れた運動性能を持ったスポーツカーですが、手が届きやすい。アバルトでしかあり得ない。そういう独自のセグメントを日本の市場のなかで築くことができたと思います。ほかにも素晴らしいスポーツカーというのは存在しますけど、それ相応のお金を払わないと手に入れられないようなクルマばかりですからね。

 ジープは今年80周年を迎えますが、コアなブランドバリューというのは昔から何も変わってなくて、そこが日本の皆様にも評価していただけていると思います。昨日今日のブランドではなくて、伝統に基づくしっかりしたブランドなんだ、ということですね。昨今、SUVはとても人気が高くて、ボディスタイルのバリエーションとして追加されてきてますが、私達のジープというのはSUVしか作ってきたことのないブランドです。SUVばかりを80年間、少しでも良くしていこうと進化させてきました。ブランドバリュー、つまり“どこにでも行ける自由”というのを大切にして、強化してきたわけです。それは今も続いていて、毎月、毎週というふうに開発が進められている。それは皆さんにも、かなり明確に感じていただけているんじゃないでしょうか」

■FCAジャパンとグループPSAジャパンの社名は変更されるのか?

●ステランティスになることでのメリットとは

──オペルの展開については、今後どんな流れになっていく予定ですか?

「来年に導入していくという、もともとの私達のプランに変更はありません。」

──これからFCAジャパンとグループPSAジャパンがひとつになって、8つのブランドを持つステランティスとして活動していくことになるのだと思います。具体的にはどのような流れになっていくのか、時期や体制について教えてください。

「今の時点では、まだ組織をどうするかというのは決めていません。たとえばフォルクスワーゲン・グループの名の元に日本にも複数の組織が存在していますし、そもそも会社を統合するということそのものが私達の目的ではありません。私達にとってもっとも大きな焦点は、個性豊かなブランドの価値を高めていくこと、そしてお客様の満足度を上げていくということ。そこは何ひとつとして変わりません。

 消費者の方にとっては、選択肢を増やすという意味でお役に立てると思っています。私達は世界的な自動車会社ですので、それぞれのブランドが取り揃えている様々なクルマを、ふたつの会社がまったく別々だったときよりも素早く日本市場に投入できると思います。そしてまた電動化への対応も、より素早く進められると考えています。

 またディーラーについては、このグループのなかにいるということが別の重要な機会を生むことになるかもしれません。つまり、これまで手掛けていなかったブランドのディーラーになるチャンスがあるからです。それは私達のグループの非常に大きな魅力になると思います」

──ということは、それぞれの会社の社名は変わらないのですね?

「質問されるまで、考えたことがありませんでした(笑)。解りやすくするという意味ではいずれ考えた方がいいのかも知れませんが、当面は両社ともこのままでやっていくつもりです」

──ふたつの会社を統合することが目的ではないとおっしゃいましたが、両社のスタッフの方が一箇所に集まって仕事をすることになる可能性はあるのですか?

「今のところはありません。それぞれのオフィスを維持していく方針です。両社でそれぞれ同じ内容の仕事をしているスタッフ達が親しく交流して、知見を交換していくことはあるでしょう。両社の距離は、もちろん近くなっていきます。私達がここで捉えなければいけないのは、ふたつの会社の良いところを持ち寄ってお互いに学んでいく、ということなんです。FCAとPSAのどちらのプライオリティを強くするとか、そういったこともまったくありません。

 私達は消費者の方々や販売してくださるディーラーのために協力していく、という立場です。もはやライバル同士ではありません。協業していくことによって、何らかのメリットを消費者の方々やディーラーにお届けする。お互いに良いところを持ち寄って学び合うということを申し上げましたが、そうしていくことでお互いの至らなかったところをつぶしていき、無駄なところは削除してそこに費やしていたエネルギーを意味のある他のことに活かしていく。そんなふうに成長していける組織にしていきたいと考えています」

●バラエティに富んだ8つのブランドを届ける

──他のメーカー/インポーターには見られないくらい個性豊かな8つのブランドを取り揃えることになるステランティスですが、日本における展望をお聞かせください。

「まず、私達はステランティスという新たなコーポレートブランドを推進していくわけではない、ということをはっきりさせておきたいと思います。私達は両グループとも、日本の消費者の方々に様々な選択肢をお届けしたい、と考えています。日本というある意味では統一されている感のある自動車産業において、独特のカラーを持つバラエティに富んだ選択肢をお届けしたい。そうした私達の根本的な役割やビジョン、目的などはあまり変わらないのかも知れません。つまり、今後もそれぞれのブランドにフォーカスしていく、ということは一切変わりません。

 ただ、いい考えを思いついたらそれを他のブランドにも展開するというかたちで、ユニークなソリューションを様々なブランドに展開していくことはできると思います。たとえば、今はまだ実体のあるお話ではないのですが、8ブランドすべてを対象にしたサブスクリプションというようなことだとかも考えることはできるわけです。また、私達は輸入車のなかでは最大のディーラーネットワークを持つことになるわけで、そのすべてにEVのチャージングステーションを設けて、それをどのブランドの方でも利用できるようにすることだとかも。色々と夢を描いていけると考えてます」

* * *

 FCA、PSAが擁しているブランドは、そのどれもが個性的なものばかりだ。それだけに、こだわりを持って愛車に選んでいるオーナーが多い。グループが統合されることによって、日本におけるディーラー網やサービスに変化があるのか、気になっている人も多いだろう。

 しかし、今回のヘグストロム氏のインタビューで、そうした心配は杞憂であることがはっきりした。それどころか、オペルを含んだ8つのブランドを横断したサービスの展開も視野にあるようだ。

 インタビュー【後編】では、もっとも気になる各ブランドの新車展開やEV化への取り組み、そしてヘグストロム氏のパーソナルなことについてもインタビューしている。

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