2024年のF1は史上初めて全ドライバーが前年と同じ顔ぶれとなった。それから1年後の2025年は一転してフレッシュなドライバーたちがエントリーリストに載った。
開幕戦のオーストラリアGPがF1デビュー戦となったのは3人。アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)、ガブリエル・ボルトレート(キック・ザウバー)だ。
「ひどい週末だった」レッドブルのローソン、スリックのギャンブルが成功せずクラッシュ
すでにF1にデビューしているものの、レギュラードライバーとしてフル参戦するのが今年初めてというルーキーシーズンを送ろうとしているドライバーも3人いる。リアム・ローソン(レッドブル)、ジャック・ドゥーハン(アルピーヌ)、オリバー・ベアマン(ハース)だ。
そこで今年はグランプリごとにルーキーの戦いぶりに焦点を当てていこうと思う。1回目の今回は開幕戦でルーキーたちが苦しい戦いを強いられた要因を検証したい。
■予選で実力を出し切れなかったベアマンとローソン
ルーキーたちの受難は、今年最初のセッションとなるフリー走行1回目から始まった。ベアマンがフリー走行1回目でクラッシュ。チームは懸命に修復を試みたが、2回目のフリー走行には間に合わなかった。
ベアマンは2日目のフリー走行3回目でもセッション開始早々にスピン。そのままグラベルトラップにつかまりマシンを降りることとなった。
このフリー走行3回目ではローソンがマシントラブルで、ベアマンと同様、計測ラップを行うことができないまま予選に臨むこととなった。フリー走行3回目というのは予選に向けた最後のリハーサルのようなセッション。しかも、開幕戦というのはその年の新車をまだ100パーセント理解していないので、このフリー走行3回目で燃料を軽くして新品タイヤでのマシンのフィーリングを確認しておくことができなかったのは痛かった。
特に開幕戦の舞台であるアルバートパーク・サーキットは、パーマネントサーキットではないため、路面コンディションが通常のサーキットよりも変化が大きい。フリー走行3回目でそれを確認できなかった2人が、予選で苦しい戦いを強いられるのは自明の理だった。
さらにベアマンは、Q1の最初のコースイン直後にギヤボックストラブルに見舞われた。これもフリー走行3回目にコースアウトしていたことと無関係ではないだろう。したがって、実力が出しきれなかったローソンとノータイムに終わったベアマンの評価は開幕戦で下すのはまだ早く、週末をトラブルなく戦ったグランプリを見た上で判断したい。
■ルーキーには酷なコンディションとなった決勝日。評価はまだ下せない
日曜日のレースでは、4人がチェッカーフラッグを見ることができなかった。ハジャーはフォーメイションラップでスピンし、「恥ずかしいミス。チームに謝罪したい」とスタートポジションに着く前に戦線離脱したことを深く後悔していた。
15分遅れで再開したレースはスタート直後にドゥーハンがオープニングラップで制御不能に陥りクラッシュ。ボルトレートは、ドライからインターミディエイトタイヤに交換した直後に「残念ながら縁石に乗って、コントロールを失ってウォールの餌食になってしまった」(ボルトレート)。
その直後、今度はローソンがコースアウトし、リタイアした。「ドライタイヤでステイアウトするというギャンブルに出たが、想定外に雨脚が強くなった」ことが原因だった。
日曜日のコースコンディションが簡単ではなかったことは、経験が浅いドライバーだけでなく、フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)、カルロス・サインツ(ウイリアムズ)といったベテランもクラッシュしていることでもわかる。ルーキードライバーにとっては、雨用のタイヤで走る経験が乏しいだけに、さらに難しい状況だっただろう。したがって、ハジャー、ドゥーハン、ボルトレートの評価ももう少し待ちたい。
そんな中、アントネッリは予選ではQ1で敗退。これは多くのドライバーがコースオフしていた6コーナーで、Q1アタック中にはみ出して、フロアを傷めたためだった。それでも、レースでは慌てることなく、ほぼノーミスの走りで4位に入賞した。
ただし、この4位がアントネッリの実力を正当に表しているかと言われると、必ずしも頷くことはできない。終盤の雨を味方につけて大きくジャンプアップすることに成功したことが大きかったからだ。
アルバートパークという路面特性に加え、日曜日には雨が降ったり止んだりする難しいコンディション。さらに昨年まではプレシーズンテストと同じ場所で開幕していたことを考えると、今年のルーキーたちにとってオーストラリアでのシーズン最初の一戦は、例年以上に過酷な戦いだったことは間違いない。
[オートスポーツweb 2025年03月19日]
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