トヨタ 新型クラウンの第一弾「クロスオーバー」が正式発売されてから1ヶ月が過ぎた。トヨタによると、ここまでの受注台数は2万5000台に達しているという(月販基準台数は3200台/月)。
今回ここでは、そんな新型クラウンの発表から正式発表(考えてみるとまだ2ヶ月半しか経ってないのだ…あっという間過ぎる…)からここまでの道のりと、「クラウンクロスオーバー」の進化ポイントについて改めて深堀り!! 「お買い得グレード」についても解説する。
発売から1ヶ月!!! さすがの売れ行きを見せるクラウンクロスオーバー 発表からここまでの道のりと進化のポイントを改めて深掘りする!
※本稿は2022年8月のものです
文/ベストカー編集部、渡辺陽一郎、写真/TOYOTA、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年9月10日号
■2022年7月15日 ワールドプレミアで「4タイプ」の新型クラウンが発表!!
2022年7月15日にワールドプレミアされた、16代目となる新型クラウン。
ここ最近のトヨタの新型車発表会としては異例とも言える規模の大きさで、豊田章男社長自ら登壇し、クラウンに対する想い、そして16代目新型クラウンに対する意気込みと覚悟を伝えるなど、やっぱりクラウンはトヨタにとって「特別な存在」なのだということを再認識させられた。
さて、アンベールされたクラウンは、これまで言われていたような「クロスオーバー」だけではなく、「セダン」、「スポーツ」、「エステート」、いっきに4タイプの車形をお披露目したのだから、発表会場はざわついた。
まずは「クロスオーバー」と呼ばれる、全高1540mm、最低地上高145mmのファストバックスタイルの4ドアクーペが9月1日に発売を開始。
その後、2023年までの間に「4ドアセダン」、SUVの「スポーツ」、そしてワゴンの「エステート」が順次発売となる計画だ(具体的な時期と、どのボディタイプがどういった順番で、といった部分については未だ明らかにされていない)。
■第一弾として9月1日に発売開始された「クロスオーバー」
まず発売を開始する「クロスオーバー」は、見てのとおり、これまでのクラウンのイメージをぶち破る斬新なコンセプト。
クラウンクロスオーバー
一見ハッチバックかと思わせるCピラーのラインの4ドアクーペ。
19~21インチの大径タイヤを履き、最低地上高を145mmまで高めることで独特のフォルムを生み出している。
パワートレーンはカムリやハリアーなどでおなじみの直4、2.5Lハイブリッド(後輪モーター駆動)に加え、新開発の直4、2.4Lターボハイブリッド(後輪eAxle駆動)の2タイプ。
全ラインナップが「ハイブリッドでAWD」というのも、これまでのクラウンにはなかったラインナップだ。
ここからは、Q&Aの形で、このニューモデルについて予想される疑問について綴ってみたい。
■Q. 結局のところ、プラットフォームはカムリと共通なの!?
ベースとなっているのは確かにカムリやハリアーなどに使われる、フロント横置きエンジンのGA-Kプラットフォームだが、新型クラウンではフロア前半はSUV系プラットフォーム、センターはセダン系プラットフォームを融合させ、さらにリアセクションは完全新設計のwマルチリンクサスペンションを採用するなど、事実上の新設計プラットフォームと言っていい内容。
ホイールベースは2850mmで、カムリの2825mm、レクサスESの2870mmとも異なっている。
ベースとなるプラットフォームはトヨタFF系のGA-Kだが、フロントセクションはSUV系、センターはセダン系、さらにリアセクションはサスペンションも含めて完全新設計
特に新開発リアマルチリンクサスペンションがポイントで、2.4Lターボハイブリッドでは80ps/17.2kgmの高出力eアクスル(モーター)を搭載することもあり、強靭なサブフレーム構造となっていることも特筆点。
これにより、ガッチリとしたリア足回りができ上がっている。
■Q. 後席居住性はいいの? パッケージングを教えて!
新型クラウンのコンセプトのベースとなったのが、「クロスオーバー」だ。
SUV人気が高い大きな要因として、着座位置が高いことで乗降性に優れ、視点が高くなるため前方視界に優れることも大きい。
新型クラウンの最低地上高は145mmと、一般的なセダンと比べて20mm以上高い。これによって前席ヒップポイントは630mm、後席は610mmとなり、上半身を大きくかがめることなく乗降できる。
最低地上高を145mmに高めたことでヒップポイントが高くなり、乗降性が格段によくなった
全高も1540mmと高いため、ファストバックスタイルの後席でもヘッドスペースは握りこぶし半個分のスペースがあり、狭さを感じることはない。
また後席ニースペースはこぶし2個分以上の余裕があり、足元スペースにも不満なし。
■Q. 新開発「2.4Lターボハイブリッド」の詳細は!?
トヨタハイブリッドの歴史における「大事件」と言ってもいいのが、今回の新型クラウンRS系に搭載される直列4気筒2.4Lターボエンジンを主軸としたハイブリッドシステムだ。
メカニズムとしてはシンプル。
エンジン→クラッチ→フロントモーター→クラッチ→6速ATで前輪を駆動し、後輪は独立したモーター(eアクスル)で駆動する電動式4WD。
前輪のハイブリッドシステムの機械的な構造は、遊星歯車を使ってエンジンとモーターの動力を複雑に配分するTHSと比べてはるかにシンプルで、多くのメーカーがすでに実用化しているシステムだ。
エンジン動力とモーター動力をダイレクトに結合できるのだが、クラッチの断続などの制御が難しく、ドライバビリティ面での課題を感じさせるモデルが多かった。
それをあえてこのタイミングでクラウンに搭載してきたということは、そうした制御面での課題を克服した、ということだろう。
クラッチ断続などで生じるレスポンス遅れやギクシャク感などは、後輪eアクスルの強力な駆動力がカバーすることで感じさせないものになるはずだ。
動力分割機構を使ったTHSではないハイブリッドは、トヨタのハイブリッドシステムとしては異例だ。電池はバイポーラニッケル水素
■Q. 全車AWD、そしてリアアクスルステア標準装着の理由は?
新型クラウンのリアアクスルはすべてのグレードで「DRS」と呼ばれるステア機能が採用されている。
低速時は小回り性を高める逆位相(最大4度)制御をすることで、ホイールベース2850mm、全長4930mmの車体にもかかわらず5.4mという最小回転半径を実現。
中速域から高速走行時は、キビキビした軽快なハンドリングと高いスタビリティを両立させるため、逆位相~同位相を速度や走行条件によって緻密に制御する。
具体的には中速域でのコーナリングなどでは切り始めに逆位相で回頭性を高め、コーナリング中には同位相でリアのスタビリティを高め安定した姿勢を維持する、といった具合である。
高速走行時のレーンチェンジでは同位相制御でリアの追従性を高め、高いスタビリティを発揮。RS系ではモード切替が可能で、スポーティな走りをアシストする。
このリア操舵と合わせて新型クラウンは全モデル、後輪をモーターで駆動するAWDというのもポイント。
RS系のeアクスルでは前後駆動力を100:0から20:80をシームレスに制御し、DRSとの統合制御で高い操縦性を実現する。
リアサスは新開発のマルチリンクで、後輪操舵システムを備えるのがポイント
■渡辺陽一郎がズバリ斬る!! NEWクラウンクロスオーバーお買い得グレードはどれ!?
クラウンクロスオーバーのパワーユニットは、ハイブリッドの4WDのみだ。ハイブリッドのベースエンジンには、2.5Lと2.4Lターボがある。
2.5LのWLTCモード燃費は22.4km/Lで、ターボはプレミアムガソリンを使って15.7km/Lになる。ターボはシステム最高出力、燃料代ともに、2.5Lの1.5倍だ。
ターボを搭載する「RS」の価格は、装備の似ている2.5Lの「G・レザーパッケージ」に比べて65万円高いが、「RS」にはショックアブソーバーの減衰力を変化させるAVSなども装着される。
この価格換算額を差し引くと、ハイブリッドシステムの正味価格差は約57万円だ。高価格だが、ターボのハイブリッドは有段式6速ATも併用する先進的なシステムで、レクサスRXの最上級グレードにも搭載される。そこも考えると価格は妥当だ。
それでも割安感を踏まえると2.5Lを推奨したい。「X」は435万円の低価格だが、ディスプレイオーディオが37万5100円のオプションになり、運転席の電動調節機能なども省かれる。そのわりには価格が高いから、「X」を40万円上まわる475万円の「G」を推奨するが、上級車種としては装備が充分とは言えない。
そこで最も推奨されるグレードは「G・アドバンスト」だ。
価格は510万円だが、ハンズフリーパワートランクリッドなどを標準装着して、「G」に比べるとオプションで加えるべき装備は少ない。
ライバル車のCX-60も売れ筋のXDハイブリッドエクスクルーシブスポーツ&モダンを505万4500円で設定しており、今後は500万円前後が国産上級SUVの売れ筋価格帯になりそうだ。
なお「アドバンスト」の名称が付かないグレードは、生産開始が2023年1月以降になる。
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