2021年8月1日にツインリンクもてぎで開催されたカートの耐久レース「もてぎKART耐久フェスティバル K-TAI」。Webモーターマガジンの連載企画「ドライブグルメ」のレポーター、鈴木ケンイチ氏が参戦してきたので、汗まみれ?のレポートを報告してもらおう。
ミニマムな予算で味わえる本物のレース
ツインリンクもてぎサーキットは、コースのまわりが小高い丘に囲まれているため風が抜けない。つまり、真夏は猛烈に暑くなる。そんなツインリンクもてぎの「本コース」で、2021年8月1日に開催された「もてぎKART耐久フェスティバル K-TAI」に参加してきた。梅雨もすっかり明けた、酷暑のレースだ。
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このレースは、レンタルカート場にあるような4ストロークエンジン&クラッチ付きのカートで、ツインリンクもてぎの本コースを7時間!も走る耐久レースだ。参加には特別なライセンスはいらない。16歳以上で原付免許以上を所有していればOK。カートの競技ライセンスがあれば10歳以上でも参加できる。カートは用意しなければならないが、十万円単位の予算で入手が可能だ。
ナンバーを切ったN1車両での草レースと同等か、それよりも安い費用で参戦できるのではないだろうか。また、3~10名のドライバーで1台のマシンを走らせるので、多くのドライバーでお金を出し合えば、さらに負担は小さくなる。つまりは、ミニマムな予算で楽しめる耐久レースというわけだ。
予算こそミニマムだが、レースのレベルは高い。まず「ツインリンクもてぎの本コースを走る」ということが尋常ではない。そもそもカートは本コースを走るようなマシンではないから、ストレートの真ん中あたりで、すでに最高速に達している。ツインリンクもてぎのコースに、長い下り坂の通称「ダウンヒルストレート」があり、速いマシンだとここで約120km/hを記録する。地上数センチに生身をさらすカートでの100km/hオーバーは、正直、かなり恐ろしい。
また、コーナリングスピードもとんでもなく速い。たとえばピット前のメインストレートを抜けた先の第1~第2コーナーは、大きなヘアピンのようなレイアウトだ。そこをアクセル全開で突っ込み、最後までアクセルをベタ踏みのまま回り切る。それでいて、コースをちょっとでもはみ出そうなものなら、恐ろしい縁石が待っている。
縁石の高さは、ハコ車と言われる一般的な4輪車なら問題ないが、カートに致命的なダメージを与えることもある。ヘタに縁石に乗ると、チェーンが外れたり、最悪、切れてしまう。運よく縁石を無事に乗り越えても、コース外にフカフカの砂が敷かれており、そこにはまると動けなくなることもある。
アマチュア向けのレースだが、スピード感は極上。コースを攻める満足感も高い。さらに走る時間も7時間と、たっぷり。身近でありながら充実感たっぷりの本格レース、それがK-TAIなのだ。
ドライバー、メカニック、サポートの全員でゴールを目指す
今回は同業(メディア関連)を中心とするチームの一員として参加した。マシンは4台あり、それぞれに4~5名のドライバーで交代しながら乗る。クルマ関連の仕事をしているとはいえレースは素人。メカニックは街の整備工場を経営する人たちなどにお願いしている。また、ピット作業などのサポートも友人たちだ。
いわゆる「カート屋さん」はいないし、イベントの参加も年に一度のK-TAIのみ。そのため、マシンは買ってきたパーツを普通に取り付けただけ。いわゆる「吊るし」。しかも毎回、初心者ドライバーが複数人参加するため、正直いって速くはない。というか、順位は後ろから数えた方が早いくらいだ。
そんな状況だから、チームの目標は「完走」もしくは「ノーメディカル」、ケガ人が出ないことを合言葉にしている。とはいえ、サーキットでタイムを縮めるために頑張るのだから、どうしてもスピンやコースアウトなどが起きる。さらには、意外にもメカトラブルが、けっこうな頻度で発生する。
今年の練習走行時にコースアウトしたドライバーがいて、マシンを縁石のデコボコにヒットさせてチェーンとスプロケットを破損してしまった。新品のエンジンを搭載したら、走行時の振動でスイッチ部分がもげて脱落するというアクシデントも。それでも、メカニックがあっという間に修理してくれた。
またチームには、メカニックだけでなく、マシンの周回数やタイムを管理しピットインなどのサインを出す人たちや、数十人にも及ぶチームの食事を用意する人たちまで、さまざまな仕事を担当するメンバーが参加している。レースはドライバーだけでなく、メンバー全員で戦っていることを実感するのだ。
ちなみに、このK-TAIは野外イベントではあるものの、コロナ禍での参加ということで感染症対策として「マスク必須」「手洗いなどの消毒の徹底」を行っている。
後方の順位から、淡々とトラブルなく走る
2021年のK-TAIへのエントリーは95台だった。これほど多くのマシンが一斉に走るというレースは、めったにない。小さなカートで大きな本コースだからこそ、可能な数字だろう。
さて、自分たちのマシン(98号車)のスタート位置は68番目。これはくじ引きで決まったポジションだ。自分たちのマシンのポテンシャルとしては、微妙に良いという感じだ。エンジンの「慣らし」すらできてない新品だから、ストレートは絶望するほど遅い。今年は初心者ドライバーの多い号車ということで、何度かの参加経験のある筆者がスタートドライバーを務めることになった。スタート時刻は午前9時30分だが、すでに日差しは強く、スタートを待つ間に汗でびっしょり。
スタートはローリング方式。100台近くのカートが横3列に並んで走るさまは、ドライバー目線からしても壮観だ。そしてグリーンに灯るシグナルの下を通り過ぎるとレースはスタート! だがこの時点で早くもレースは混沌とする。なぜなら、スタート位置がくじ引きだから、速いマシンが後ろにいたり、遅いマシンが前にいたりするからだ。
そのため、スタートから数周で順位は目まぐるしく変動する。ここで他のマシンと接触したり、コースアウトする可能性が非常に高くなる。8周ほどを慎重に走って、最初のドライバー交代を行うことができた。まずは最初の仕事を無事に終えることができて、ほっと胸をなでおろした。
その後、チームメイトは淡々と周回を重ねることで、順位をジワジワとアップ。正午前に2回目、午後2時過ぎに3回目に、それぞれ8~12周のドライブをノートラブルで終えた。また、同じ号車のメンバーも全員、ノートラブルで走行。気がつけば、夕方4時半のゴール時点で21位のポジションにつくことができた。とはいえ、K-TAIの順位は「同一周回数は同順位」という特別ルールなので、実際には95台中70位前後といったところ。
しかし、リザルトにある号車ごとのベストラップを見てみれば、自分たちよりも後ろの順位に、ベストラップの速い号車がズラリと並んでいる。つまり、自分たちのマシンは1ラップのスピードこそ遅いけれど、コンスタントに走ったため順位で勝ることができた。まさにウサギとカメの戦いだ。これも耐久レースならではの戦い方と言えるだろう。
2021年の夏も、大満足の熱いレースを経験することができた。そして、熱中症になりそうなほど、暑い1日だった。(文:鈴木ケンイチ/写真提供:クラブレーシング)
[ アルバム : 2021 もてぎKART耐久フェスティバル K-TAI はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
モテギは走った事が無いから全周何キロ有るか知らないけど、7時間での周回数は、どれくらい?
1チームの参加人数が多いほど身体の負担は軽く収まるけど、昔とった杵柄で乗って見るか!なんて言うのは無いなぁ。笑