2024年、スーパーGTの大会フォーマットが大きく変わる。予選方式が、従来のようにQ1上位のマシンがQ2に進んでそこでのベストタイムでポールポジションを争う方式から、Q1とQ2のベストタイムを合算して順位を決定する方式へと変更されるのだ。
これは、今季から各車両がレースウィークで持ち込めるタイヤのセット数が削減されたこと(300kmレースの場合はドライタイヤ4セット)に端を発する。プロモーターのGTA(GTアソシエイション)はタイヤ温存のために練習走行やサーキットサファリで走行しないチームが現れることを危惧して、予選Q1、Q2、そして決勝スタートを同じセットのタイヤで戦うことを義務付けたのだ。
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それに合わせて、予選の方式もQ1とQ2のタイム合算方式に。これによってQ1敗退車両がなくなるため、各車のタイヤ使用条件も基本的には均等化され、より公正な競技となることが目指されている。
非常に大きな変更となるため、この新フォーマットは発表直後から賛否を呼んでいるが、少なくとも予選の勢力図や“戦い方”に何らかの影響が出てくるであろうということは確かと言える。スーパーGTを戦うドライバーたちに、その展望を語ってもらった。
■Q1もQ2も変わらずフルプッシュ
前述の通り、今季からはQ1とQ2を同じタイヤで戦う必要がある。つまり、Q2を走るドライバーはユーズドタイヤでアタックすることになる上、Q1を走るドライバーはQ1でアタックしたタイヤを相方に“託す”ことになる。これはドライバーにとって新たなシークエンスとなるが、マシンの走らせ方やタイヤの使い方は大きく変わらないと考えている者が多いようだ。
「結局、(Q1も)みんな全開になっちゃうと思いますね」
そう語るのは、今季からトヨタ陣営に移籍してGT500クラスの38号車KeePer CERUMO GR Supraを走らせる大湯都史樹だ。彼はQ2に向けてQ1担当のドライバーがタイヤを温存するようなアプローチには変わらないと考え、次のように続けた。
「(Q2に向けて)残すという考えにはならないんじゃないかと思います」
「今のタイヤの性能ってすごく良いので、ちょっとやそっと抑えたからといって(タイヤの状況は)大きく変わらないんですよね。それならお互いが最大限のアタックをした方が無難です」
「ただ、そこに至るまでのタイヤ選択は変わってくると思います。今までは一発タイムが出れば良かったものを、二発行けるタイヤにしないといけないので」
GT300クラスを戦うANEST IWATA Racingのイゴール・オオムラ・フラガ、古谷悠河も基本的には大湯と似た見解だ。彼らはQ1でやることは基本的に変わらないだろうと考えている一方で、ユーズドタイヤで迎えるQ2アタックに向けた準備の仕方には工夫が必要かもしれないとした。
「Q1でやることは特に変わらないと思います。特にタイヤを労ってアタックもできないですし」と語るのは古谷。「Q2に行く時に皮はむけているし、多少温度が残っていると思うので、その場合にアタックに向けて何周かけて温めていくのかなど、そこは調整しないといけません」と補足した。
そしてフラガもその意見に同意する。
「Q2の場合は、タイヤを温めることに対してそんなに努力が必要ないかもしれないというくらいですね。アタックラップでやること自体は変わらないと思います」
「一発のタイムを出す時のタイヤの使い方は変わらないけど、準備する時の方法が変わる、というイメージだと思います」
■迂闊に「2回アタック」ができなくなるQ1
ただ、常にフルプッシュというアプローチは変わらなくとも、合算タイムになることで予選の戦略面における考え方は変わってくることになるだろう。
というのも、これまでのQ1では2周続けてフライングラップを敢行し、立て続けにタイムを更新するという場面が見られたが、新フォーマットの下ではQ2にタイヤを引き継ぐことを考えれば当然アタック回数は1回が望ましい。GT300クラスを戦うスバル/STIの小澤正弘総監督も「今のシステムだと、Q1のアタックは一発で決めた人の勝ちですよね。いかに一発でまとめ切れるかはドライバーの腕の見せ所なので、面白いと思います」と語る。
しかし言い換えると、新フォーマットではタイヤだけでなく、ラップタイムもQ1からQ2に引き継がれる。そのため、1回目のアタックでどれほどロスをしたのか、路面コンディションがどのように変化しているかなどの状況次第では、Q2でのパフォーマンスを多少なりとも犠牲にしてでも、2回目のアタックを敢行すべきシチュエーションも出てくるかもしれない。
その辺りの判断に頭を悩ませることになるだろうと語るのが、61号車SUBARU BRZ R&D SPORTのドライバーである井口卓人。主にQ1を担当して相方の山内英輝にバトンを繋ぎ、過去3シーズンで10回ものポールポジションに貢献してきた井口は、「正直読めない部分が多すぎちゃって……」と苦笑。さらにこう続けた。
「周回1周くらいではそこまで大きくは変わらないと思いますが、2周アタックに行くよりは1周アタックで終える方がタイヤの美味しいところが残っている状態です。ただ、もちろんQ1で良いタイムを出さないといけないし、コンマ1秒でも(タイムを上げたい)という思いから2周目のアタックに行くこともあると思います」
「そこでチームとしっかり交信をして、(アタックを)止めるのか止めないのかの判断はしていかないといけないんじゃないかと思います。その判断は結構難しくなると思います。ディスプレイを見ながら(現在のアタックがベストタイムに対して)マイナス表示なのかプラス表示なのかを確認しつつ、ピットに戻るかどうかを決めないといけません」
同じくGT300クラスのKONDO RACINGで56号車リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rを走らせるジョアオ・パオロ・デ・オリベイラも「2回目のアタックをどうするかを、もう少し慎重に考えないといけない」と語る。Q1での戦略の難しさに関しては、多くのドライバーが感じているところのようだ。
■勢力図に変化は?
そして気になるのが、この新フォーマットによって予選における勢力図が影響があるのかどうかだ。
ヨコハマ、ダンロップ、ブリヂストン、ミシュランの4メーカーがタイヤを供給するGT300クラスにおいては、特にダンロップが予選での速さを見せている。最近では前述の61号車スバル以外にもGAINERやK-tunesがポールポジションを獲得しており、近年のGT300で最も多くのポールを手にしているメーカーでもある。
スバルの小澤総監督は、ダンロップがピークグリップという点で秀でているからこそ、同じタイヤで複数回アタックする新フォーマットになったことで勢力図が変わる可能性もあると話した。
「フレッシュタイヤから走り始めてからのタイヤのピークの強さは、ダンロップさんが一番強いと思います」
「そういう点では、Q1、Q2でピークを使ってタイムを出しに行くのが得意だったので、そこの恩恵は今までありました。(コンディション等が)ハマった時期のレースでダンロップさんユーザーが予選でみんな上に行くのも、そこから来ていると思います」
「そこが、Q1のタイヤで行くQ2でそういったピークが出なくなった場合は、他のタイヤメーカーとの勢力図は変わると思います」
一方で2020年と2022年のシリーズチャンピオンであるデ・オリベイラは、ヨコハマタイヤを使用するKONDO RACINGにとっては有利に働くフォーマット変更かもしれないと語る。
「僕たちが純粋な予選ペースで秀でているとは思っていない。以前のルールでは、Q1を通過することさえ難しくなっていた」
「でも、この新しいルールは僕たちに有利なものだ。純粋なスピードが報われるのではなく、もう少し僕たちのような方向性が報われるんだ」
また同じくヨコハマユーザーであるANEST IWATA Racingのフラガも「僕たちとしては、一発(のタイム)はあまり出ないけどロングランは割と速いという印象があるので、案外悪い方向にいかないんじゃないかと思います」と語り、新フォーマットが自分たちにとって追い風になる可能性を指摘した。
このように、予選フォーマットが大きく変更されたことで、本質的には変わらないものもある一方で、新たにドライバーやチームを悩ませることになりそうな要素も見え隠れしている。この大変革に彼らがどのように対応してくるかは非常に興味深いと言えるだろう。
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