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名門ブルーバードを冠して誕生!! 日産 シルフィが中国専売となった理由【偉大な生産終了車】

掲載 更新 22
名門ブルーバードを冠して誕生!! 日産 シルフィが中国専売となった理由【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

なぜ日産はノートだけに投入!? 4WDが欲しいという声が多いのにキックスに設定されないワケ

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は日産 シルフィ(2000-2020)をご紹介します。

文/伊達軍曹、写真/NISSAN

【画像ギャラリー】ブルーバードを冠した初代から日本未導入の最新4代目まで! 歴代モデルをギャラリーで見る

■パルサー プレセアの後継車種として登場した3ナンバーサイズセダン

 2000年当時に50歳代だった、いわゆる団塊世代の男性に向けた小型セダンとして登場。

 その3代目が登場した2012年には、そのままターゲットの年齢層を「60歳代のドライバー」までスライドさせて奮闘した。

 しかしセダン人気の凋落と、ターゲットとする層のそもそもの購買力低下により、2020年中に生産終了を余儀なくされたモデル。

 それが、日産 シルフィです。

 日産 シルフィは、当初は「ブルーバード シルフィ」との車名で2000年8月に発売された小ぶりな4ドアセダン。

 車名に「ブルーバード」と付いていましたが、車台は当時のサニーに使われていた「MSプラットフォーム」というもので、ホイールベースもサニーと同一です。

日産 ブルーバード シルフィ(初代)。全長×全幅×全高は4495×1695×1445mm(FF)。「ブルーバード」を冠するモデルとしては11代目となる

 搭載エンジンは1.5Lおよび1.8L、2Lの直列4気筒で、組み合わされるトランスミッションは1.5Lが5MTと4速AT。1.8Lが4速ATで、2Lモデルは6段マニュアルモード付きの「ハイパーCVT-M6」でした。

 当時は、その後顕著になる「セダン離れ」がまださほど起こっていなかったため、初代ブルーバード シルフィは堅調なセールスを重ね、2002年の時点でも月平均約2700台が登録されていました。

 そして2005年12月のフルモデルチェンジで2代目となり、当時の日産 ティアナ、ティーダに続いて「モダンリビングコンセプト」を採用。

「50代の団塊世代をターゲットとする」という基本部分に変化はありませんでしたが、初代と比べると女性ウケを狙った路線にやや舵を切ったという印象がありました。

2代目。ティアナ、ティーダと続いた、「モダン」「リラックス」2つの要素をベースとした快適さのコンセプト「モダンリビングコンセプト」シリーズとして最後のモデルとなる

 搭載エンジンは1.5Lおよび2Lの直4で、前者には4速ATが、後者には「エクストロニックCVT」が組み合わされました。駆動方式はFFがメインですが、1.5Lには電気式四輪駆動の「e・4WD」もランナップされています。

 この2代目ブルーバード シルフィもまずまず売れたのですが、2012年12月に、ブルーバードの冠を取って「日産シルフィ」として発売された3代目は苦戦することになります。

 ターゲットユーザーの年齢層は、初代では「50代」でしたが、それから12年が経過した3代目では、12年分の歳月がそのまま持ち上がって「セダンの車歴が長い60代のドライバー」ということになりました。

 そして――これが日産の本心だったかどうかはわかりませんが――「本格セダンとしての機能性や品質感を重視した」というエクステリアは3ナンバーサイズに拡大。具体的には全長4615mm×全幅1760mm×全高1495mmとなっています。

 エンジンは最高出力131psの新型1.8L直4に一本化され、トランスミッションは副変速機付きCVTに。

 最小回転半径を従来型より10cm小さい5.2mに改善し、パワーステアリングも低速時の操作力を減らすなどして「60代ドライバー向けシフト」を敷いた3代目シルフィではありました。

 しかしながら3代目のセールスは低迷。発売翌年の2013年後半には早くも月販500台レベルとなり、2019年には月販150台レベルにまで落ち込みました。

 そのため日産は国内向けシルフィの製造を2020年9月に終了。

 2021年2月27日現在、シルフィは日産公式サイトにいちおう掲載はされていますが、在庫を売りきった時点で、販売のほうも終了となります。

■3ナンバー化が拍車をかけた? 国内向けシルフィの系譜が潰えた背景

 1960年代から80年代頃までの日本人を魅了した名作セダン「ブルーバード」と直接の関係はないとはいえ、その名を受け継いたブルーバード シルフィおよびシルフィが、あえなく生産終了となった理由。

 それは世界的なセダン人気の凋落と、「特に日本では、ごく一部の人しかセダンを買わなくなったから」ということに尽きます。

 初代ブルーバード シルフィが登場した2000年頃は、まだまだ「車といえばセダン」という風潮も残ってはいました。それゆえ、初代はそれなりに売れたわけです。

 しかし1990年代にはすでに「RVブーム」が巻き起こっていたため、2000年当時のセダンはかつてのような「絶対的存在」ではありませんでした。

 そしてその後はご承知のとおり「ミニバンブーム」「SUVブーム」あるいは「軽トールワゴンブーム」などが起こり、自動車というものの主流はノッチバックセダンから「箱型的なるもの」へと確実に移行しました。

 その結果、若い世代だけでなくミドル世代やハイミドル世代も、セダンというボディ形状をあまり選択しないようになりました。

 しかしそんな世の中に変わっても、かたくなに「いや自分はセダンを買う! 車といえばセダンなのである!」と、購買行動を変えない人もいます。

 それが、セダン文化真っ盛りの時期にちょうど青春時代を過ごした、あるいは自動車というものの薫陶を受けた、1945~1950年頃に生まれた世代。つまりは「団塊の世代」です。

 そういった団塊世代(の全員ではなく一部)の受け皿としてブルーバード シルフィはそれなりに機能していたわけですが、団塊世代も――あたり前ですが――年を取ります。

 そして年を取れば、あくまで一般論ですが、高額商品の購入意欲や購入力そのもの、あるいは購入の頻度はどうしたって低下します。

 そしてブルーバードシルフィがターゲットとする世代の購買力が低下しはじめたまさにそのタイミングに、諸般の事情からシルフィは「3ナンバーサイズ」になりました。

名前から「ブルーバード」が外れ、3ナンバーサイズとなった3代目。全長×全幅×全高は2代目の4610×1695×1500mmから、4615-4675×1760×1495mmへと拡充(ホイールベースは2700mmで変わらず)

 とはいえ彼ら・彼女らもベテランドライバーですから、全幅が1760mmになった程度でいきなり運転が困難になるということはなかったでしょう。ベテランとして普通に、スイスイと運転できたはずです。

 しかし物事のタイミングとして、「今度のシルフィは3ナンバーか……。じゃ、買うのはやめとこうかな」と思わせるに十分なインパクトはありました。

 これにより、ただでさえ少なかった「SUVとかは好かん。自分はセダンを買いたいのだ」と考える人の数をさらに減らしてしまったのです。

 中国では依然としてセダンの人気は高く、現在は4代目のけっこうカッコいい日産シルフィが売られていて、現地ではなかなかの人気を博していると聞きます。

日本未導入の4代目(画像は上海モーターショー2019での初公開時のもの)。フロントグリルには「Vモーション」の発展型を採用。サイズは4641×1815×1450mm、ホイールベース2712mmと、全高以外はさらに拡充されている

 しかしそれを日本に導入したところで売れないでしょうし、日産は導入しないでしょう。

 なぜならば、そういうのを「日本でも売ればいいのに!」と言う人はたいていの場合「言うだけ」で、実際には買いませんし、もしかしたら買うかもしれない「相変わらずセダンが好き」な年齢層の人に対しては、あまりにも刺さらなそうなデザインだからです。

 つまり、日本には4代目シルフィの買い手が(ほとんど)いないのです。

■日産 シルフィ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4615mm×1760mm×1495mm
・ホイールベース:2700mm
・車重:1230kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1798cc
・最高出力:131ps/6000rpm
・最大トルク:17.7kgm/3600rpm
・燃費:15.6km/L(JC08モード)
・価格:209万4750円(2012年式 X)

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