たいていの乗用車には、装備や機能に差を設けた複数のグレードが用意される。中級グレードが装備の割に安いことが多く、目をひかれがちだが、最廉価グレードは「選ぶ価値なし」なのか? 人気10モデルのエントリーグレードを検証する。
※本稿は2023年12月のものです
文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2024年1月26日号
GR86のエントリーグレードは割高!! 逆にジムニーなら勧めるワケって? 人気車10モデルの最廉価グレードを評価
■そのグレードがお買い得かどうかを見極めるポイント
トヨタ GR86のRCはモータースポーツに参戦したい人向けのグレードで、スピーカーの数が少ないなど装備が簡素化されている。装備と価格のバランスが選択のキモだ
大半の乗用車には、エンジンや装備に応じて複数のグレードが用意される。
価格が最も安いエントリーグレードは得なのか? その損得勘定は、各グレードの機能や装備と価格の関係で決まる。大半の車種は、需要の多い装備を豊富に装着した中級グレードを割安にする。
需要の多い装備を揃えれば、大量に販売されてコストも下がるからだ。これを買い得な主力グレードとして売り込む。
ただし、人気の高いパーツが割安に装着されても、購入するユーザーがその装備に魅力を感じなかったら選ぶ価値も下がる。では、エントリーグレードのお得度は? 人気10モデルをチェックしていく。
■GR86のエントリーグレードはモータースポーツ参戦用!
●トヨタ GR86(RC)291万6000円
RCは205/55R16サイズのタイヤと16インチのスチールホイールが標準装備となる
GR86のRCは、エントリーグレードというよりもモータースポーツに参戦するための車両だ。ホイールは交換を前提に、安価な16インチのスチール製を装着する。ステアリングホイールも本革巻きではなくウレタンだ。
軽量化のためにラゲッジルームランプ、エンジンルームカバー、フロアサイレンサーなども装着されない。6速MTのみでATは選べない。
しかし左右独立温度コントロール機能を備えたオートエアコン、スマートエントリー&スタート、パワーウィンドウなどは標準装着する。
エアコンは曇りを除去するから安全面でも大切だ。衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備も当然に装着している。
したがってRCを日常的な移動に使うことも可能だが、価格は291万6000円で、一般向けのSZと比べて23万7000円しか安くならない。推奨グレードは人気のRZだ。
●RCの運転支援システムの主な機能
・衝突被害軽減ブレーキ:○
・追従クルーズコントロール:○
・誤発進抑制:×
・後側方接近車両検知:×
・エントリーグレードオススメ度:★★☆☆☆
●No.1オススメグレードは「RZ」347万6000円(6MT)
スポーツカーだから、18インチアルミホイール&タイヤ、フロントスポーツブレーキパッドなどを標準装着するグレード、RZの6速MT仕様を推奨する。
■5ナンバーサイズの標準ボディに2LのNAエンジンを搭載
●日産 セレナ(2.0X〈2WD〉)276万8700円
ハイブリッドのe-POWERを搭載するエアロパーツを備えたハイウェイスターが人気だが、5ナンバーサイズの標準ボディに2LのNAエンジンを搭載するXとXVも用意される。Xは最も安価なエントリーグレードだ。
Xはスライドドアの電動機能、パーソナルテーブル、各種の装飾などを省いたが、運転支援などのプロパイロットは標準装着する。
不便なのはスライドドアの電動機能が非装着になることだが、左側は6万6000円でオプション装着できる。これを加えたXの価格は283万4700円だ。
Xを選ぶなら、約25万円を加えて同じくNAエンジンのXVにしたいが、予算が超過する時はXを選ぶ方法もある。ただし、推奨グレードはe-POWERのハイウェイスターVだ。
●2.0Xの運転支援システムの主な機能
・衝突被害軽減ブレーキ:○
・追従クルーズコントロール:○(全車速)
・誤発進抑制:○(前後)
・後側方接近車両検知:×
・エントリーグレードオススメ度:★★★☆☆
●No.1オススメグレードは「e-POWERハイウェイスターV」368万6100円
一般的にはエアロパーツを備えた3ナンバーボディにe-POWERを搭載するハイウェイスターVを選ぶのがお薦め。走りから装備までバランスよく上質になる。
■便利装備をいつつか省略した2Lエンジン車
●トヨタ カローラクロス(G“X”〈2WD〉)218万4000円
エントリーグレードのG“X”は、17インチのスチールホイールが標準装備で、フロントグリルの周りもブラックとなる
G“X”は2Lエンジン車に設定されるエントリーグレードで、Gに比べるとパーキングサポートブレーキ、充電用USB端子、スマートエントリーなどを省いた。スピーカーも4個から2個に減らして装備を簡素化している。
価格はGよりも22万6000円安い。省かれた装備の価格換算額は15万円前後だから、22万6000円の価格引き下げは大きい。
つまりG“X”は買い得と言えるが、低速域で衝突被害軽減ブレーキを作動させるパーキングサポートブレーキなども装着されない。
安全性を低下させたグレードは推奨できないから、G以上を選び、後方の並走車両を検知して知らせる安全装備のブラインドスポットモニターなどもオプション装着したい。推奨グレードはハイブリッドSだ。
●G“X”の運転支援システムの主な機能
・衝突被害軽減ブレーキ:○
・追従クルーズコントロール:○(全車速)
・誤発進抑制:×
・後側方接近車両検知:×
・エントリーグレードオススメ度:★★☆☆☆
●No.1オススメグレードは「ハイブリッドS」298万円(2WD)
2Lエンジンとの実質価格差が35万円に収まるハイブリッドが割安だ。特にSグレードは、アルミホイールなど人気の高い装備を装着して価格を抑えている。
■電動リアゲートや18インチアルミホイールは標準装着
●ホンダ ZR-V(X〈2WD〉)293万2600円
パワーユニットは1.5Lターボとハイブリッドのe:HEVがあり、エントリーグレードはターボのXだ。
本革シートやBOSEプレミアムサウンドシステムなどは備わらないが、リアゲートの電動開閉機能や18インチアルミホイールは標準装着している。
また車両の周囲を映すマルチビューカメラシステムなどは、Xに標準装着されなくてもオプションで加えることは可能だ。
ZR-Vの販売面の主力はe:HEVだが、ターボも選びやすいグレード構成になる。またターボは自然吸気の2.4Lに相当する動力性能を発揮して、価格はe:HEVよりも約35万円安い。
推奨グレードはe:HEVのXだが、ガソリンエンジンの運転感覚が好みならターボのXも検討したい。
●Xの運転支援システムの主な機能
・衝突被害軽減ブレーキ:○
・追従クルーズコントロール:○(全車速)
・誤発進抑制:○(前後)
・後側方接近車両検知:○
・エントリーグレードオススメ度:★★★★★
●No.1オススメグレードは「e:HEV・X」388万3000円(2WD)
本革シートなどは必須の装備とは言えず、グレードは上級のZではなくXで充分だ。ただしパワーユニットは動力性能に余裕があって加速の滑らかなe:HEVは欲しい。
■3列シートミニバンでは最廉価
●トヨタ シエンタ(X〈2WD〉)199万円
Xグレードは185/65R15タイヤ&スチールホイールが標準
パワーユニットは直列3気筒1.5LのNAエンジンとハイブリッドだ。NAエンジンのXは、7人乗りでも価格が200万円を下まわり、3列シートミニバンでは最廉価になる。その分だけ装備はシンプルだ。
スライドドアの電動機能は、左側には標準装着されるが、ひとつ上のGと違って右側はオプションでも用意されない。
エアコンもマニュアルタイプになる。またブラインドスポットモニター、スマートエントリー、ディスプレイオーディオなどは、Gには標準装着されるがXではオプション設定だ。
これらをXに装着すると、オプション価格は約8万5000円になる。それでもGに比べて約26万円安い。推奨グレードはNAエンジンのGだが、エアコンはマニュアル、右側のスライドドアも手動式でよければXを選ぶ選択もある。
●Xの運転支援システムの主な機能
・衝突被害軽減ブレーキ:○
・追従クルーズコントロール:○(全車速)
・誤発進抑制:○(前)※後退時の誤発進抑制機能はオプション
・後側方接近車両検知:オプション
・エントリーグレードオススメ度:★★★★☆
●No.1オススメグレードは「G(1.5Lガソリン車)」234万円(7人乗り)
数年後に売却する時の査定は、グレードが基準になり、オプションはあまり加味されない。したがって中級グレードで234万円のGがベストだ。ミニバンでは安い。
■動力性能や安全装備も充実
●トヨタ ランドクルーザー(GX)510万円
エントリーグレードのGXは、V型6気筒3.5Lガソリンツインターボを搭載する。動力性能は上級グレードと同じで、4WDのリアデフロックなどもオプション装着できる。安全装備にも大差はない。
異なるのは内外装の装飾やシートの電動調節機能などが省かれることだ。サイドステップもオプションだが、本格的に悪路を走るなら都合がいい。悪路では、外装パーツはシンプルなほうが路面や障害物との接触も避けられるからだ。
GXの価格は510万円だから、AXと比べて40万円安く、人気のZXと比較すれば220万円下まわる。一般的な推奨グレードは、機能や装備と価格のバランスを考えるとガソリンツインターボのVXだが、悪路を走る機会が多いならGXも検討したい。
●GXの運転支援システムの主な機能
・衝突被害軽減ブレーキ:○
・追従クルーズコントロール:○(全車速)
・誤発進抑制:○(前後)
・後側方接近車両検知:○
・エントリーグレードオススメ度:★★★★★
●No.1オススメグレードは「VX」630万円
ガソリンツインターボのZXは、人気の最上級グレードながら装備のわりに価格が高い。最も推奨できるグレードはZXよりも100万円安い中級のVXだ。
■2L・e-BOXERの2WD
●スバル クロストレック(ツーリング)266万2000円
ベーシックグレードのツーリングはアルミホイールが17インチで、フロントグリルバーやドアミラーがブラックになる
グレードは水平対向2Lのe-BOXERを搭載するツーリングとリミテッドがあり、駆動方式は2WDと4WDを選べる。エントリーグレードはツーリングの2WDだ。
リミテッドは前席の電動調節機能などを標準装着するが、価格の割安度も考えるとツーリングで充分。スバルはベーシックなグレードでもオプションを充実させ、11.6インチのセンターディスプレイなどを任意に装着できる。
よってツーリングを選び、必要な装備をオプション装着するのが合理的だ。
ただし駆動方式は4WDを推奨する。最低地上高の200mmは、4WDとの相乗効果で優れた走破力を発揮するからだ。また4WDは、乾燥した舗装路の下りカーブでも安定性を向上させる。ツーリングの4WDがお薦め。
●ツーリングの運転支援システムの主な機能
・衝突被害軽減ブレーキ:○
・追従クルーズコントロール:○(全車速)
・誤発進抑制:○(前後)
・後側方接近車両検知:○
・エントリーグレードオススメ度:★★★★☆
●No.1オススメグレードは「ツーリング4WD」288万2000円
ツーリング4WDは、求めやすい価格で舗装路での優れた安定性と悪路走破力を両立させた。上級のリミテッドと同じく本革シートもオプション装着できる。
■最上級グレードとの差は約半額!
●マツダ CX-60(25S Sパッケージ〈2WD〉)322万3000円
後輪駆動をベースにしたマツダの上級SUVだが、グレード構成は幅広い。最上級の価格は約650万円に達するが、最も安価な直列4気筒2.5Lガソリンエンジンを搭載する25S Sパッケージ・2WDは322万3000円だ。最上級の約半額に収まる。
このグレードをベースにオプションを加える選び方もあるが、インパネは硬質の樹脂になって質感は上級グレードと大幅に異なる。軽快な運転感覚など独特の魅力も備わるが、購入時には内装を必ず実車で確認する。
そのうえで納得できたら、機能や装備のわりに価格を抑えた割安でマニアックなCX-60が割安な価格で手に入る。
一方、一般的な推奨グレードは、直列6気筒3.3LディーゼルターボのXD・Lパッケージ2WDだ。
●25S Sパッケージの運転支援システムの主な機能
・衝突被害軽減ブレーキ:○
・追従クルーズコントロール:○(全車速)
・誤発進抑制:○(前後)
・後側方接近車両検知:○
・エントリーグレードオススメ度:★★★☆☆
●No.1オススメグレードは「XD Lパッケージ」422万4000円(2WD)
直列6気筒のディーゼルは、実用回転域の駆動力が高く吹き上がりも滑らかだ。LサイズのSUVだが、適度に軽快でマツダ車らしい運転感覚を味わえる。
■エントリーグレードは唯一のエンジン車だが……
●ホンダ ヴェゼル(G〈2WD〉)239万9100円
ヴェゼルはハイブリッドの1.5L・e:HEVがメインのラインナップで、1.5Lガソリンエンジンを搭載するのはGグレードのみ
現行ヴェゼルのグレードは、先代型と異なりハイブリッドのe:HEVが中心だ。エンジン車はGのみで、Gは売れゆきも伸び悩む。
そこでヴェゼルとほぼ同じサイズのWR-Vに、1.5LNAエンジンを搭載して、先代ヴェゼルと同等の200万~250万円で販売する。つまりWR-Vは、実質的にヴェゼルのNAエンジン車だ。
そうなると現時点でヴェゼルに用意されるエンジン車のGは、選ぶ価値も乏しい。Gには安全装備のブラインドスポットインフォメーションなどを装着できず、内装の装飾も削られてシンプルだ。
それでもアルミホイールなどは標準装着するが、最廉価グレードを意識させる。積極的には推奨できず、中心的な存在のe:HEV・Zがベストだ。
●Gの運転支援システムの主な機能
・衝突被害軽減ブレーキ:○
・追従クルーズコントロール:○(全車速)
・誤発進抑制:○(前後)
・後側方接近車両検知:×
・エントリーグレードオススメ度:★★☆☆☆
●No.1オススメグレードは「e:HEV・Z」300万1900円(2WD)
e:HEV・Zは2WDでも価格が300万円に達するが、左右席の温度を独立調節できるエアコンなどを標準装着する。内装の質も含めて満足度が高い。
■エントリーグレードでも満足度は高いがお買い得感は?
●三菱 アウトランダーPHEV(M)484万1100円
全車がプラグインハイブリッドの機能と、前後にモーターを配置した4WDを搭載する。これらの機能は全車共通だ。安全装備や運転支援機能も充実しており、Mを選んでも上級グレードとの決定的な差はない。
Mで見劣りするのは、シートの生地や調節機能、BOSEプレミアムサウンドシステムなどだ。Mで充分と考えるユーザーもいるだろう。
ただし選択に迷うのは、アウトランダーの場合、上級グレードほど価格が割安になること。例えばPの価格はGの7人乗りに比べて約43万円高いが、50万円以上の装備が加わる。複数のオプションを装着するなら、それを含んだ上級グレードを選ぶほうが割安だ。
そうなると結局のところ一番の買い得グレードは最上級グレードのPになる。
●Mの運転支援システムの主な機能
・衝突被害軽減ブレーキ:○
・追従クルーズコントロール:○(全車速)
・誤発進抑制:○(前後)
・後側方接近車両検知:○
・エントリーグレードオススメ度:★★★☆☆
●No.1オススメグレードは「P」570万5700円
本革シート、ヘッドアップディスプレイ、BOSEプレミアムサウンドシステムなどをフルに標準装着する。Gにオプションで加えるよりも割安だ。
■エントリーグレードがオススメNo.1なのはハスラー、ジムニー!
スズキ ジムニー(XG)155万5400円~
エントリーグレードが最も推奨できる車種もある。例えばジムニーは、最も安価なXGがベストだ。
悪路に強いパートタイム式4WDを備えたSUVだから、未舗装路を走る機会も多い。そうなればボディやホイールにキズが付くのは避けられない。この時に外観がシンプルでホイールもスチール製なら、ユーザーのストレスも抑えられる。
またハスラーのベーシックなハイブリッドGやGターボでは、外装色に応じてスチールホイールが塗装される。明るいブルーの外装色には、ホワイトのホイールが装着されてとても爽やかだ。
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