■モトクロスチャンピオンに憧れて入社したSP忠男で、気付けば40年
高性能なバイク用オリジナルマフラーで有名な、スペシャルパーツ忠男。その代表である、元ヤマハワークスのモトクロスチャンピオン、そしてSP忠男レーシングチームの代表として、全日本ロードレースチャンピオンやWGP(ロードレース世界選手権)ライダーなど、多くのトップライダーを排出してきた鈴木 忠男さんの意志を受け継ぎ、実質的なSP忠男の責任者ともいえる 大泉 善稔さんに、SP忠男で働き始めた経緯やモノづくりについて、話を聞いてきました。
きっかけは趣味で作った友達のマフラー! 「気持ちイー」を重視するSP忠男 鈴木代表の原点とは
―――まず、大泉さんがSP忠男で働こうと思ったきっかけを教えてください。
僕、モトクロスが好きで、忠さんはモトクロスのチャンピオンなので、入ったらチャンピオンになれると思ったんですよ(笑)。
でも、入ってみたらお店は土日も仕事で・・・。レースの日は仕事だっていうことを知らなくて(笑)。
当時、練習は行ってたんだよ?練習は。金曜日だとかに練習へ連れて行ってもらえたんだけど、レースにはいつ出れるのかなって思ってたら、土日は仕事だからレースに出れなかったんだよね。
まあ、もともとモトクロスの素質もなかったので・・・。いまでも、モトクロスは好きだけど、最初はモトクロスがやりたくて入ったかな。
でも、忠さん(鈴木代表)はバイクに乗らせたら天才だから少し話は違ってきちゃうけど、僕らは普通の人間なので、乗り辛いものは乗り辛いし、何かイジると速くなるとかをかなり経験しているので、そこの面白みをずっと探求していたら、それが楽しくなっちゃって(笑)。気付いたら40年経っちゃった感じかな。
―――SP忠男の製品ラインナップは、どのように決めているんですか?
商品の企画は思い付き(笑)
市場でこれが売れているからこの製品を作ろうというパターンよりも、この商品が作りたいという気持ちとか、ユーザーからの要望で新しい商品を企画することがほとんど。
市場の動向をまったく掴んでないといえば、阿保みたいになっちゃうけど、でも市場で人気があるとかがメインではないね。このバイクは面白そうだから、うちでマフラーを作ってみようみたいな。
例えば、忠さんがMVアグスタを買ってきたけど、商売を考えたらそこには手を出さない。ほかにも、KTMだとかトライアンフだとか、商売だけを考えていたらやらなかったけど、そのバイクが面白いと思ったら、製品を企画することが多いかな。
―――では、ユーザーからの商品企画のリクエストも受け付けているということですか?
基本的に僕らのいまのコンセプトは、マフラーなどのアイテムを変えた時の爽快感だとか、心地よさなんかを売りにしているので、それを求めるライダーはリクエストをくれることもあります。
創業40年になるんですが、その基本的なコンセプトはずっと変わっていないので、過去に作った僕らのマフラーを付けていて、「あの感覚が忘れられないから、いま乗ってるバイクにも付けたいんだけど」っていう人が結構多いですね。
そういった人からのリクエストで、新たに製品を企画するってことはあります。
―――ユーザーからのリクエストで新たに製品を企画すると、かなりの値段になってしまうのでは?
ユーザーからのリクエストで、ワンオフで作るわけではないですよ。ユーザーのリクエストから量産する製品を企画するから、それなりの本数は作ることになるので、そこまで高額になることはないかな。
それが古い車両など、かなり特殊なバイクだったりすると、なかには友達を集めて「何十本単位で作って欲しいんだけど」っていってくる人もいて、そういう時は作ることもあるけど、そういった依頼で作るとしても、結局は量産で作ることになりますね。
量産しないと、まともに開発をするのに2か月から3か月ぐらい、大の大人が何人かで作るので、開発費用がそれなりにかかってしまうので・・・。
■壊れない製品を作るのは当たり前のこと
―――そんな自社製品の品質管理について気を付けている部分はありますか?
一般的にいう品質というのは、製品のクオリティだとかっていうところかもしれませんが、うちが重視しているのは、クラッチをつないで走りだした瞬間からのフィーリングを一番大事にしていて、ほかには譲れない部分です。
耐久性は最低条件で、あたり前のこと。僕らも40年間マフラーを作り続けているので、それなりに経験があるから、壊れないモノづくりのポイントは押さえているので、そこは当たり前として、一番大事にしているのは、乗った時にライダーから「気持ちイー」というひとことが出てくるような特性の部分です。すごくシンプル。
僕は、このお店が会社組織になった40年前からいるのですが、その時から一貫して、このこだわりは変わっていません。
―――ちなみに、現在のユーザーが求める「気持ちイー」は、どんなフィーリングですか?
やっぱり、爽快で心地いいことかな。例えば2000年ぐらいの、スズキ「隼」が出はじめた頃だとか、その前のカワサキ「ZZ-R1100」が流行った時代は、もっとエキサイティングだったし、世の中が求めていたものも、もっとギリギリの生死の境みたいなところが割とカッコいいとされていたので、そこを求めてましたね。
だから雑誌の取材とかでも、矢田部や富士のサーキットに持っていって、最高速チャレンジだとか、何馬力という時代だったので、その時代はその時代で「気持ちイー」を探求していましたしね。
ユーザーに「280?/hから300?/hまでの伸びはどうなの?」とか聞かれたりして、もちろんハッタリで聞く人もいるんですけど、やっぱりその何人かは実際に試したりするので、そうすると、そこに合わせて僕らもテストコースでチェックして。
そうやって、それぞれの時代に合わせて、ユーザーが求める「気持ちイー」をチェックしています。
だから、いまは30?/hから40?/hぐらいで、のんびりツーリングを楽しむようなユーザーが多ければ、そこに合わせたチェックをするし、300?/hの世界でどっちがいいかというのを求められるなら、そこに合わせてチェックをする。それが僕らの仕事なので、そこは常に見ています。
いまは安全で、いい時代だと思いますよ(笑)。試乗会に行って僕らが先導していると、いまだとふと振り返ってみると、誰もいなかったりするんですけど、2000年前後ぐらいまでは、後ろのライダーからつつかれたりしたので。
そういう感じで、常に僕らは、僕らの製品を欲してくれているライダーの「気持ちイー」に合わせてきました。
なにかを変えることによる変化の部分が、時代によってはエキサイティングを求めることもあるし、2000年をこえたあたりからは、エキサイティングより心地よさだとか、爽快感という風に変わってきたので、それに合わせて僕らも変化してきて、その時代に合った「気持ちいい」を、常に追いかけてるって感じかな。
だからユーザーも、SP忠男に求めるのは、気持ちいいことなんだよね。
―――これからSP忠男して、どんな製品を作っていきたいですか?
いまは、コロナも含めてストレスフルな社会なので、キーワードは「ストレスからの解放」。現在、バイクの免許を取る人が増えているのですが、そこも基本的にはストレスからの解放なので、そこに結び付くことを徹底的にやっていきたい。
国際基準調和といって、ひとつのオートバイで型式を取ると、それが世界中のどこでも売れるようになったんです。
でも、日本の車両販売台数があまりにも少ないので、いま日本向けの車両って売ってないじゃないですか? 例えば、大きいバイクならヨーロッパがメインだったりするのですが、ヨーロッパと日本ではやっぱり街中の平均速度が圧倒的に違うので、ヨーロッパのバイクを日本に持ってきちゃうと、日本のライダーは乗っていてストレスが溜まるんですよね。
そういったバイクを 僕らの得意分野のマフラーでいえば特性をイジルというところですが、日本で快適に走れるような特性にしたりとか。
アジア向けの250?とか150?クラスも、アジアの人たちは僕らの16歳や17歳の時と同じように刺激を求めているので、刺激を求めて作られたバイクを日本に持ってきても、それはいまの日本のライダーには合わないので、日本で乗るときに、刺激ではない部分でそのバイクの良さを日本のライダーにマッチングさせるための仕事をしたりしたいです。
―――SP忠男の魅力を教えてください。
「気持ちイー」の探求です!徹底的に、そこを探求していくところ。接客の対応から、製品作りなど、すべてのコンセプトは「気持ちイー」の探求。うちにバイクを持ってきてくれたら、必ず気持ちいいバイクに生まれ変わります!
※ ※ ※
一番大事にしていることは「気持ちイー」というフィーリング。その時代、時代に合わせた「気持ちイー」を追求することで、多くのファンに愛され続けているSP忠男の一番のファンは、大泉さんかもしれないと、感じた今回のインタビュー。
鈴木代表を含めたSP忠男の一番のファンが責任者を勤めているからこそ、多くのライダーに愛される製品ができるのかもしれません。
そんなSP忠男では、マフラーメーカーとして取り付ける際の様々なデータの取得も兼ねる形で、ショップでの工賃はサービス。本体価格のみでマフラー交換をおこなってくれるそうです。
バイク界のカリスマである鈴木代表や、その意思を受け継ぐ大泉さんの追求してきた「気持ちイー」バイクを、是非、体験してみてはいかがでしょうか。きっとストレスフリーな世界が待っていると思います。
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みんなのコメント
時代もあり、峠が混み、事故も増え、一般道の限界を痛感してサーキットで遊ぶように…
批判も多いとは思いますが、今となっては良い思い出です。