人気のFRスポーツは2代目に進化
4名のAMW編集部員による、1台のクルマを独自の目線でそれぞれがインプレッションする「AMWリレーインプレ」。今回お題にしたのは、トヨタとスバルの共同開発で誕生したFRスポーツである、スバル「BRZ」だ。希少な2Lクラスの国産スポーツで、FRレイアウトを存分に楽しめる1台。進化した2代目を、カスタム目線も交えてリポートする。
不安だった「スバル×MT」も慣れれば平気!「BRZ」は峠やサーキットで走りたくなる1台でした【AMWリレーインプレ】
すべてにおいて進化した運動性能だが
初代スバルBRZは、2012年に誕生。コンパクトな2ドアボディに2L水平対向エンジン、FRで6速MTというクルマ好きが歓喜するようなパッケージが与えられていた。カスタマイズして楽しむという、ある意味伸びしろが残されていることも、多くのファンを魅了した要因のひとつである。
そんな初代のDNAを受け継ぎ、2代目となるZD8型が2021年に登場。約9年ぶりのフルモデルチェンジで、どのような進化を果たしているのか気になっていた。筆者はこの2代目、発売直前の報道陣向け事前試乗会で撮影のために数メートル動かしただけで「運転」する機会には恵まれていなかった。リレーインプレすることになったとき、「お、ついに試乗できる」とワクワクしたのが本音だ。
テスト車輌をお借りするためにスバルへ。駐車場で対面したのは、鮮やかなイグニッションレッドのSグレードだ。やはりスバルのスポーツモデルといえばWRブルー・パールを思い浮かべるが、イグニッションレッドも情熱的でカッコいい。わずかに大きくなったボディはアスリートのような力強い雰囲気が増したな、というのが第一印象だった。
キーを受け取り、ドライバーズシートに座る。先代の雰囲気も残しながら、まさにコクピットという表現が似合うような各種スイッチ類の配置などがやる気にさせてくれる。
早速エンジンを始動して、駐車場を出る。段差の乗り越えや交差点で右左折する際、わずかな速度であってもボディ剛性の高さを感じた。はっきりとした違い、というわけではないのだが、先代よりもガチっとした感覚だったのだ。
エンジンは先代の2Lに対し、現行モデルの2代目は2.4Lに拡大。最高出力は初代の200psから235psに、最大トルクは205Nmから250Nmに。初代の最大トルク発生回転数が6400~6600回転だったのに対し、2代目はなんと3700回転。市街地などでの扱いやすさなどは格段に向上していると言っていい。
しかし、個人的にはボディのガッシリ感がはっきりと感じられたことで、エンジンパワーが少々物足りないように感じてしまった。もう少しパワーがあれば、文句無しで「超楽しい!」と叫びたくなること間違いなし。そんな実力を秘めているエンジンだということはヒシヒシと伝わってきた。これも、初代同様チューニングして楽しめる、という伸びしろなんだろうと思いながら撮影場所までのドライブを楽しんだ。この部分は、きっと今後登場するであろう「STI Sport」に期待。先代はパワートレインにまでは手が加えられていなかったが、2代目は、ぜひエンジンのファインチューニングにも期待したい。
初代よりも力強さが増したエクステリア
撮影場所に到着し、あらためてBRZの内外装をチェックしてみた。ボディサイズは先代よりも大きくは変わっていないものの、よりマッシブな印象がある。前後フェンダーの膨らみなどがより際立ち、筋骨隆々な外観である。
フロントマスクは、トヨタ「GR86」のほうがスポーティな印象。BRZは欧州のGTカーのような雰囲気だなと感じられた。造形はかなりこだわっているので、このままでも十分にカッコいい。個人的にはリップスポイラーを追加して、もう少しスポーティさを際立たせたいところ。STIのスポーツパーツもあるので新車時からスタイルアップできるのは嬉しい。
特徴的な造形の前後フェンダーは、前から後ろへの空気の流れを感じさせる造形。どこか「GRスープラ」のような雰囲気を感じるのは私だけだろうか。Sグレードは18インチホイールを採用している。このままでも十分にカッコいいのだが、気になるのは車高。少しローダウンしてあげると、さらにカッコよくなる。さまざまな制約で厳しいのは承知だが、ぜひ、純正状態でもあと1cm、ローダウンしてくれるといいのに、と思ってしまった。そこは車高調やローダウンスプリングでお好みに仕立ててくださいということなのだろうと勝手に解釈することにしよう。
リアまわりはじつにシンプル。初代は小ぶりながらもリアウイングが上級モデルに設定されていたが、現行モデルはダックテール形状のトランクのみとなった。STIからは大型のGTウイングも用意されているが、個人的にはダックテールを延長するようなチビスポイラーをプラスしたくなった。バンパー下もディフューザー形状をより際立たせるアイテムがほしいところだが、この2点に関しては純正のアクセサリー用品も用意されている。メーカーが選択肢を用意してくれるのは非常にありがたい。
シートは社外品のバケットタイプに交換したくなった
インテリアもじつにスポーティ。差し色に赤がふんだんに使われており、スポーツカーであることを感じさせる。インパネもドライバーファーストな作りになっており、運転中でも直感的に操作できるよう配慮されているのが伝わる。メーターも視認性の高いデジタルタイプとなり、先進性を感じさせる。唯一個人的に気になったポイントはシート。身長180cmの筆者は、もう少しローポジションにしたい。フルバケット並みのホールド性をもち、リクライニングも可能なタイプが増えているので、もし購入したら社外品に交換したいところだ。
* * *
もう少しパワーが欲しいところは、チューニングしてあげればOK。ただ、エンジンレスポンスなどが向上するトラックモードがあるものの、トラクションコントロールなどもカットされてしまう。ぜひ、ノーマルのままでもスポーティに走れる「スポーツ」モードがあればいいのになと思った次第。
ほかに、もう少しブレーキキャリパーはカッコいいデザインで大きいものが欲しいとか、排気音ももう少し迫力があれば……なんてチューニング好き目線であれこれ気になったが、どれも自分好みにカスタマイズすればOKなポイントばかり。クルマは買っておしまいではなく、買ってからストーリーが始まるもの。自分好みのカーライフを楽しんでほしい、そんな願いが込められているクルマなんだな、とあらためて感じることができた。ノーマルでも楽しく、イジっても楽しい。そんな稀有な存在がBRZとGR86なのである。久々にちょっと欲しいかも、と思わせてくれるスポーツカーであった。
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