メルセデス・ベンツ「Cクラス・ステーションワゴン」がベースのクロスオーバー車、「オールテレイン」に渡辺敏史がドイツで試乗した。
オールテレインの立ち位置
メルセデスのステーションワゴンといえばミディアムクラス→Eクラスがその歴史の骨格を作り上げてきた。その一派としてCクラスにもステーションワゴンが設定されたのは1994年のことだ。以来、この2台のステーションワゴンが、メルセデスというブランドに“カジュアル”や“フレンドリー”といったイメージを印象づけてきた。
が、2000年代以降、そのポジションは徐々にSUVに取って代わられている。それはメルセデスに限らずどのメーカーでも対峙している市場変化の影響だ。たとえば米国市場では、米国メーカーが作るセダンベースのステーションワゴンは全滅し、あらかたがSUVやピープルムーバーに置き換わった。中国市場も状況は似たようなもので、なんとか成立しているのは欧州市場くらいのものである。
狭い郊外路でも100km/hを常用、夏休みにもなればバカンス用の荷物を満載して高速道路を突っ走るという、そのぐらい高い負荷域であれば、SUVより明らかに低いステーションワゴンの重心が安心感へと繋がるだろう。
そのステーションワゴンのダイナミクスを活かしつつ、SUVの頼もしさも備わる……そんなコンセプトで開発されたのがこのオールテレインだ。スバルなら「アウトバック」、アウディなら「オールロード」、ボルボなら「クロスカントリー」と、この手の趣向は目新しいものではない。が、ステーションワゴンに一家言持つメルセデスとしては、SUVラインナップの隙間をも埋め尽くすというよりは、なんとかオーセンティックなワゴンカテゴリーを継続させたいという強い思いがあるのではないかと思う。
1550mm以下の全高
Cクラス・オールテレインは、2017年に登場したEクラス・オールテレインに次いでこの秋、発表された。3年のギャップはベースモデルであるCクラス・ステーションワゴンの全面刷新を待ってのことだろう。日本へは来春の導入が予定されているという。
エンジンバリエーションは現時点での日本仕様のCクラスとおなじで、204psを発揮する1.5リッター直列4気筒ガソリン直噴ターボ、200psを発揮する2.0リッター直列4気筒ディーゼル直噴ターボのふたつだ。共に48Vのインテグレーテッドスタータージェネレーター=ISGが組み合わせられており、発進時や加速時などに最大20ps/200Nmのパワーアシストが働くマイルド・ハイブリッドという位置づけだ。
これに組み合わせられるミッションは「9Gトロニック」と呼ぶ9AT、そしてトランスファーは39:61の駆動配分となる4マチック、すなわちフルタイム4WDのみだ。ちなみに日本仕様のオールテレインはディーゼルのC220dのみが用意される予定という。
車格的には全長はCクラス・ステーションワゴンとほぼ変わらず、全幅は樹脂製のフェンダーアーチが備わるぶん約20mm広く、全高はタイヤ径の拡大とサスのリセッティングとで合わせて約40mm高くなっている。すなわち最低地上高が40mm高くなっているということで、そのグラウンドクリアランスをもって悪路での適応力を高めているわけだ。
それでも全高は1550mm内に、そして全幅は1850mm内に収まっているので、駐車場事情でSUV的なクルマを諦めていたユーザーにとっては待望の選択肢となるかもしれない。
Cクラス・オールテレインのエクステリアはEクラス・オールテレインのそれに倣ったテイストで纏められていて、バンパー下エプロンやサイドステップなどに無塗装樹脂を使いラギッド感を高めている。内装はCクラスに準拠するが、レザートリムやオーナメントなどに独自の施しもあるようだ。
高い悪路走破性
日本で乗ったCクラスの試乗車は18インチタイヤとAMGスポーツサスとの組み合わせとなるアバンギャルドAMGラインしかなく、日常域での乗り心地に粗さが目立つものだったが、その点、Cクラス・オールテレインの乗り心地はまったく異なる“丸さ”が備わっていた。
おなじ18インチながら高偏平化されたタイヤのエアボリュームの豊かさに、サスそのものの初期からの動きの良さやストロークの大きさもあってか、大きな凹凸や人工的な段差を超えても不快なフィードバックはほぼ気にならないレベルに収まっている。そのぶん、上屋の動きはやや大きく、時折ふわっと車体を揺すられるが気になるレベルではない。
そして高速域になるに連れて、クルマがギュッと小さく引き締まっていくかのようにドライバーとの一体感が高まっていく。
操舵に対する応答性のリニアさや定常的なロール感、そして路面のうねりを通過した際の車体の跳ね上がりや沈み込みをピタリと収めるフラットライドぶりからは、SUVではこうはいかないだろうなという上質さが感じられる。
その上で、Cクラス・オールテレインは悪路の走行性能もSUVに敵わずともほど近いところまで高められている。試乗ではがれ場に近い砂利道や、足を踏み入れること自体を思い留まるような斜度15度の崖道も車体を擦ることなくクリア出来た。ドライブモードには変速やスロットルのマネジメントをオフロード向けに最適化するふたつのモードのうち、「オフロード+」を選択すれば、降坂のみならず登坂時に後退を余儀なくされた際にも、4~18km/hのあいだで設定した速度をキープしながらゆっくりと走るヒルディセントコントロールが働き、ドライバーの操作に余裕を与えてくれる。
日常生活ではオンロードでの上質な乗り味を、休日のレジャーでは充分以上の走破性をと、オン・オフを問わず豊かな時間を演出してくれる……と、その上で、強すぎない佇まいもCクラス・オールテレインの大きな魅力だ。
小山のようなSUVの圧に疲れた方にもお勧めしたいちょうど良さではないだろうか。
文・渡辺敏史
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みんなのコメント
新型Cクラス自体が、内外装も走りも超安っちく劣化したのに大幅値上げでソッポ向かれてるのだか。
GQのひたすら外車ヨイショのバカっぽさには失笑しかない