自動車メーカーが売れると見込んで発売したが、どうにもこうにもさっぱり売れなかったクルマたち。
その奇想天外さがダメだったのか、それとも時代が追い付いていなかったのか? こうした珍車、迷車を令和の今、見てみると意外にいいじゃないかと思えるクルマも存在する。
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クロスロード、エレメント、エディックス、ネイキッド、マーチBOX、インプレッサカサブランカ、スズキX-90……。
こうした悲しき一発屋たちは、今いくらで買えるのか、徹底調査してみた!
文/伊達軍曹
写真/ベストカーWEB編集部
【画像ギャラリー】クロスロード、エレメント、インプレッサ カサブランカ、スズキX-90ほか詳細写真
ホンダクロスロード:2007年8~2010年9月
■中古車平均価格:約72万円
ボディサイズは全長4285×全幅1755×全高1670mm。四角い個性的なスタイルのクロスロード。クロスオーバー車全盛の今だったら、売れるのはないかとちょっと思ったりもするが……
ホンダ クロスロードは全長4.3m弱のコンパクトなボディに3列シートを載せた7人乗りのSUV。
ベースとなったのは同時期の「ストリーム」です。デザインは非常にスクエアなデザインですが、張り出したフェンダーアーチなどが「単なる箱ではないぞ!」と主張しています。エンジンはストリームと同じ1.8Lと2Lの「i-VTEC」です。
なかなかエッジが利いてるステキなデザインだと思うのですが、その販売はパッとしませんでした。
2007年2月に華々しく発売されたものの、半年後には早くも「低空飛行」を開始。そのためクロスロードは2010年8月、早々に販売終了となってしまったのです。
新車時価格は193.2万~291.9万円で、2019年11月半ば現在の中古車相場は18万~158万円。
筆者調べによれば平均価格は約72万円で、コンディションの良い中古車は年式やグレードにかかわず100万円以上のプライスが付く場合が多いようです。
これは「中古車としてけっこう人気がある」ということを意味しています。不人気中古車はすぐ100万円以下になりますからね。
新車時は不遇をかこったクロスロードですが、今は時代がクロスロードに追いついています。つまり、今は「やや小ぶりで個性的なクロスオーバー車」がよく売れる時代だということです。
それゆえクロスロードの中古車相場がこれ以上高騰するかどうかはイマイチ不明ですが、「少なくともダダ下がりすることはない」と予想されます。
2代目ストリームをベースに3列7人乗りを実現した。一部1.8Lグレードにはバンパー、フェンダーを無塗装とした無骨なグレードも用意された
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ホンダエレメント:2003年4~2005年7月
■中古車平均価格:約78万円
日本では2003年4月から2005年7月という短命だったがアメリカでは2002年12月から2011年モデルまで長きにわたって販売された
これまた名車なのか迷車なのかわかりにくい一台ですが、個性的であることだけは間違いありません。
ホンダ エレメントは、海岸にあるライフガードステーション(監視台)をデザインモチーフとしてホンダR&Dアメリカがデザインし、アメリカで生産されたクロスオーバー車。サイドドアが「両側観音開き」となっているのが最大の特徴です。
デザインではビーチにあるライフガードステーションをキーコンセプトとしており、10フィートのサーフボードを積めることを条件として決定された。後席のドアはサイドアクセスゲート、サイドカーゴドアと呼ばれ、法律の制約もあり前席のドアを先に開かないと開かないようになっている。バンパーやフェンダー、サイドシルにはクラディングと呼ばれる無塗装の樹脂素材を使用している
北米では2002年12月に発売され、その後日本でも2003年4月から「逆輸入車」として販売を開始。
しかし、北米ではよく売れたのですが日本ではサッパリで、2005年7月には早くも廃番となってしまいました。ちなみに北米ではその後も人気を博し続け、2011年まで製造された。
新車時価格272万円だったエレメントの現在の中古車価格は、最安値は約30万円ですが、平均価格は約78万円となかなかご立派。
そしてコンディションの良い個体は、走行距離が多少延び気味であっても平気で130万円前後で売られています。ちなみに2019年11月半ば現在の最高値は184.8万円。これは驚き! かなり立派な価格です。
中古車相場の未来を正確に予想するのは難しいですが、それでもあえて予想するなら、ホンダ
エレメントの相場は「上方向」ということでまず間違いないでしょう(もちろん良質車に限り、です)。
誰かに「これは東京モーターショー2019で発表されたSUVですよ」と嘘をつかれても思わず信じてしまいそうなデザイン性の高さ、そして「両側観音開きドア」という唯一無二の個性。
それらを勘案すると、爆騰するかどうかはわかりませんが、少なくとも「上昇トレンド」は続く気がします。
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ホンダエディックス:2004年7~2009年8月
■中古車平均価格:約25万円
フィアットムルティプラと同様、3人掛けの2列シートで登場したエディックス。ボディサイズは全長4285×全幅1795×全高1610mm。エンジンは当初は1.7Lと2Lだったが、2006年11月のマイナーチェンジで1.7Lが廃止され、2.4Lと2Lのラインナップとなった
ホンダエディックスは、2004年7月から2009年8月までの約5年間、1代限り販売された「3人掛けシート✕2列」のミニバンというのかピープルムーバーというのか、とにかくそういったクルマです。ベースとなったのは同時期のホンダシビックでした。
計6座のシートはすべて独立式で、前後の中央をスライド式とした「V字シートレイアウト」を採用。中央のシートは運転席・助手席より10mm後ろに設定されていて、そこからさらに270mm(後席は170mm)スライドできる仕組みになっています。
搭載されたエンジンは2タイプで、最高出力130psの1.7L
VTECと同156psの2L VTEC。前者は同時期のシビックから、後者は同時期のストリームから持ってきたものです。
新車時価格は178.5万~220.5万円だったエディックスですが、2019年11月半ば現在の最安中古車はなんと「9000円」で、平均価格も約25万円と爆安。走行数千kmのフル装備物件でも80万円ぐらいで買えてしまうというのがホンダエディックスの現在地です。
決して悪い車だとは思いませんが、エディックスの相場が今後上昇に転じることはまずないでしょう。結局、「わざわざ仲良く3人並んで座りたい」と考える人は少なかった……ということに尽きると思われます。
特徴的な「3人×2列」シートは、「3人がけのシートが2列」ではなく「3席×2列」であることがポイントです。
すべての席を独立させた上でセンターシートにロングスライド機構を設けることで「V字シートレイアウト」とし、3人が並んで座っても窮屈な思いをすることなく乗できると同時に、展開時のエアバッグとの距離を確保することができるため、フロントにチャイルドシートを設置することを可能としていました
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ダイハツネイキッド:1999年11~2004年4月
■中古車平均価格:約22万円
ドアのヒンジ(ちょうつがい)もあえて外側に丸出し状態で付けられているので絶妙なレトロ感があり、さらに「ドアを90度近くまで開けられる」というメリットがあった。ボディサイズは全長3395×全幅1475×全高1530mm
ムーヴやワゴンRなどのトールワゴンが全盛となっていた1990年代末の軽自動車界に、背の高さではなく「デザイン性」を武器に殴り込んだ軽自動車。それがダイハツ
ネイキッドでした。
ベースとなったのは1997年の東京モーターショーに参考出品された「ネイキッドX070」。市販予定はなかったそうなのですが、プレスや来場者からあまりにも好評だったため、細部を微調整したうえで1999年11月に発売となったのです。
ネイキッド(NAKED=全裸)という車名が表すとおりの「むき出しの素材感」が最大の特徴で、バンパーとフロントグリルはあえて外側から丸見えのボルト止めを採用。ドアパネルもあえて平板で直線的なものを使っているため、まさに「鉄板」という感じで非常におしゃれな軽自動車でした。
しかし車好きやデザイン好きにはウケたネイキッドでしたが、お茶の間層にはあまり刺さらなかったようで、2004年には1代限りで販売終了となってしまいました。
新車時価格91.9万~153万円だったネイキッドの現在の中古車価格は、最安はなんと「2万円」ですが、平均価格は約22万円。最高値が約80万円で、ボリュームゾーンはおおむね50万円前後といったところです。
「平均価格」で物事を見るのであれば、ネイキッドの中古車価格は時間の経過とともにじりじり下がっていくでしょう。
しかし良コンディションな低走行物件や、かなりのお金と手間をかけて整備やカスタマイズが施された個体に関しては「現状キープ」と予想します。時がたっても相場が下がらないだけの価値と個性が、この軽自動車には今なお存在している……と考えるからです。
インテリアデザインも「タフ&シンプル」をコンセプトに板金パネルをデザインモチーフに、直線を基調としたワイドなインパネとフロントコンソールを採用した
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日産マーチBOX:1999年11~2001年4月
■中古車平均価格:19.8万~39万円(3台流通)
ホイールベースはそのままにリアオーバーハングを240mm延長しワゴン化。ボディサイズは全長3980×全幅1585×全高1450mm
日産マーチBOXは、先々代のマーチ(K11型)が1999年11月にマイナーチェンジされる際、なぜか追加された「マーチのステーションワゴン」です。
小さな子供をもつ20~30歳代のママさんをターゲットに作られたとのことで、ホイールベースは普通のマーチと同じ2360mmなのですが、リア部分を26cm延ばすことでス、テーションワゴンというか5ドアワゴンにしています。
まあ商品企画の意図はわからんでもないですが、やはりというかなんというかマーチBOXは売れず、発売から2年もたたない2001年には早くもカタログから消えていきました。
新車時価格は126.5万~141.8万円で、現在の中古車相場は……全国で数台しか流通していませんが、19.8万~39万円といったところ。この相場が上昇することは今後もないでしょう。なぜならば、「人と荷物が載せられる小ぶりでお安いクルマ」は、もっとカッコよくて便利なやつがほかにたくさんあるからです。
ハッチバックをモデル途中からワゴン化してラインナップに加えたという世界的に見ても珍しいクルマ
ダブルフォールディング式の後席を畳めばゴルフバッグが縦に積める
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インプレッサ カサブランカ:1998年12月
■中古車平均価格:29万8000円(1台流通)
インプレッサスポーツワゴン1.5をベースに当時流行していたレトロ調にしたカサブランカ
インプレッサ カサブランカは、1998年12月に5000台限定で発売された「レトロ顔のインプレッサ スポーツワゴン」。
当時はクラシカルな顔つきの軽自動車が流行していたため、「じゃ、インプレッサでも!」という感じのノリで作ったのでしょうが、正直イマイチ売れませんでした。
まあ「何を血迷ったのか……?」と言いたくなるほどアンバランスなデザインでしたので、それも当然だったと言えるでしょう。
新車時価格は153.6万円。しかしながらその中古車は2019年11月半ば現在、筆者が確認できた限りでは1台しか流通していません。そして相場というか「その個体の価格」は29.8万円です。
インプレッサ カサブランカの中古車相場は当然ながら(?)上がることはまずないはずですが、現在の相場(?)は意外とキープされるのかもしれません。
なぜならばカサブランカは、その架装パーツ類だけは「カスタムの素材」として、ごく一部で微妙に人気があるからです……!
スズキX-90:1995年10~1997年12月末
■中古車平均価格:38万~67.9万円 (4台流通)
2ドア、2シーターのSUVという世界的にも珍しいスズキX‐90。生産台数は1348台。ボディサイズは全長3710×全幅1695×全高1550mm
「2シーターのクロスオーバーSUV」という、ちょっと(かなり?)謎なコンセプトで作られたのが、1995年から1997年までの約2年間だけ販売されたスズキ X-90。
もともとは1993年の東京モーターショーの参考出品車でしたが、これが妙にウケたため、1995年10月に市販されてしまったのです。
ベースは初代エスクードで、そのためX-90の車体構造は一般的なモノコックではなく、クロカン四駆に用いられることが多いラダーフレームです。
搭載エンジンは最高出力100psの1.6L直4SOHCで、トランスミッションは5MTまたは4速AT。そして駆動方式は超本格クロカン同様のパートタイム式4WDを採用しています。
わずか1400台弱が生産されたX-90の新車時価格は136万~149.8万円でしたが、中古車では絶滅傾向。2019年11月半ば現在は全国で4台の流通しか確認できず、それぞれの価格は38万~67.9万円。
ここまで数が少なくなってしまうと「平均相場」も何もない感じになってしまうため、未来予想は非常に難しくなります。
しかし、仮に「将来的に流通量がまあまあ増えたなら」という前提で考えるなら、X-90の中古車相場はそこそこ上がりそうな気もします。
バブル崩壊後の1990年代後半には受け入れられなかった「2シーターのSUV」というトンパチなコンセプトも、飽食の時代と化した現在や、あるいは近未来であれば、ごく一部の人にはウケそうだから……というのが、そう考える理由です。
屋根はワンタッチで脱着可能なグラスルーフを持つTバールーフ構造で、室内側には天井トリムに合わせた素材のサンシェードが標準で付く。同社のカプチーノ同様、取り外した屋根を専用カバーに入れてリアトランク内に収納するが、リアウインドウは固定式で脱着や収納はできない
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※本稿で登場する中古車価格は、2019年11月執筆時点の目安です
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