現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > どうしてシトロエン「2CV」が2400万円も…!? エンジンを前後に2基搭載した「サハラ」は695台しか生産されなかった超レアモデルでした

ここから本文です

どうしてシトロエン「2CV」が2400万円も…!? エンジンを前後に2基搭載した「サハラ」は695台しか生産されなかった超レアモデルでした

掲載 4
どうしてシトロエン「2CV」が2400万円も…!? エンジンを前後に2基搭載した「サハラ」は695台しか生産されなかった超レアモデルでした

エンジンが2つ? 驚きのシトロエン2CV

一流どころの国際オークションでは、華やかな高級クラシックカーやスーパーカーなどが出品ロット群の中核となるが、そのかたわらで時として「珍車」とも呼ばれるレアなクルマたちに出会うことも少なくないものです。2024年5月10日から11日に、地中海に面した見本市会場「グリマルディ・フォーラム」を舞台として開催されたRMサザビーズ「MONACO」オークションでは、そんな激レアなクルマのひとつとして「シトロエン2CV」のツインエンジン版「4×4サハラ」が出品されることになりました。今回は、そのモデル概要と注目のオークション結果について、お伝えします。

シトロエン「2CV」を引き継いで8年。シフトレバーが抜けてもなんとかなると笑うプロカメラマンが狙うのは「純正ルーフキャリア」

前後に1基ずつエンジンを搭載した2CVとは?

稀代の名車シトロエン「2CV」のコンセプトと基本設計は、爽快なほどにシンプルである。2CVの車名は、フランス語のドゥ・シュヴォー(deux chevaux)」。大まかに訳すと「2馬力」で、これは当時のフランスで課せられていた課税馬力を車名としたものである。

戦後間もないフランスの道路事情を想定して開発された2CVは、安価で信頼性が高く、メンテナンスが容易で、耕したばかりの畑だって横断できるような、ソフトでロングストロークのサスペンションを備えていた。

2CVが誕生した当初には、このモデルが圧倒的な成功を収め、1988年にフランス国内分の生産が終了となるほどの長寿を遂げるとは、誰も予想できなかっただろう。時おりパワーとエンジン排気量が拡大されつつも、2CVは40年の生産期間を通じて、第二次世界大戦の真っただ中に構築された基本設計に忠実であり続けた。

そして、オフロードにおける2CVの走破性を誰よりも理解していたシトロエンのエンジニア陣は、標準の2CVにエンジンをもう1基追加搭載し、リアアクスルを駆動することで、「ブリキのカタツムリ」とも称される4輪駆動能力を実現するモデルを開発した。

それが「4×4サハラ」。エンジンは同時代の標準型2CVと同じ、425ccの排気量と12psのパワーを有する空冷水平対向2気筒OHVを、前後アクスルに1基ずつ搭載。前エンジンは前輪、後エンジンは後輪を駆動するシステムとなっている。操作系については、アクセル以外は連動しておらず、通常は後輪をニュートラルとして前輪駆動で走行。登坂時や悪路走行時のみ、リア側のエンジンを補助動力として機能させる仕組みとされた。

一説によると、フランスの旧植民地の北アフリカ・アルジェリアでの石油開発のために、シトロエンのさるディーラーがツインエンジンに改造したのが端緒とも言われているそうだが、その改造車をきっかけに、シトロエン本社も1958年にプロトタイプを発表。2年後に「4×4サハラ」と名づけて生産を開始した。

シトロエン本社による正式な生産バージョンは、北アフリカのような遠隔地のフランス植民地を主な仕向け地としていたとのことである。

1967年までに生産されたサハラは、わずか695台(ほかに諸説あり)ともいわれる希少車で、その誕生の目的ゆえに道具として酷使されてしまったことから、残存数はきわめて少ないものと推測される。また、隠れクラシック・シトロエン大国でもある日本では、数年前に「オートモビルカウンシル」で特別展示された個体をはじめ、数台程度は生息しているかと思われる。

2400万円超えの落札価格は、希少性と象徴性の表れ?

先ごろRMサザビーズ「MONACO 2024」オークションに出品されたシトロエン2CV 4×4サハラは、なかなか魅力的なヒストリーを辿ってきた個体と言えよう。

まずは1965年11月にファクトリーで完成したのち、同月には初代オーナーの名義で登録されたことが、今回のオークション出品にあたって添付されたファイルでも閲覧可能な当時の資料によって証明されている。

くだんのファーストオーナーは、マルセイユから南仏アヴェロン県の田舎町ヴィルフランシュ・ド・パナへ移り住んだ医師、ピエール・レイナル。彼は、素朴な田園地帯の患者を訪問するために、サハラのオフロードにおける多用途性を必要としていたと考えられており、実際レイナル医師は、サハラから「レンジローバー」に乗り換える1980年代まで、あらゆる天候でこのサハラを愛用し続けたという。

そののち、2020年2月にオークション出品者でもある現オーナーが手に入れるまで、この2CVサハラは2010年に一度だけ所有者が代替わりしているものの、その間にはほとんど使用されることはなかったようだ。

こうして現オーナーの所有となった2CVサハラは、一見したところの見栄えは悪くなかったそうだが、やはり細部を観察すればくたびれた状態であったため、抜本的なレストアに着手されることになった。

ボディはいったんシャシーパンだけの状態まで分解され、鈑金修理と再塗装が施されたほか、エンジンとギアボックスは取り外してオーバーホール。また、クラッチとブレーキは新品に換装し、サスペンションとランニングギアも正しい部品に交換された。くわえて簡素な内装はすべてはぎ取って張替え、ハンモック式のシートも一新された。

これらの作業については、外観とメカニズムの両面で入念なオーバーホールを受けたことが、豊富な請求書とレストア時の写真によって証明されている。

ところが、このレストアが完了したあとにもあまり走行してなかったようで、RMサザビーズ社の公式カタログが作成された際、2CVのオドメーターは「4万492km」を指していたが、これは正しい数値であると推測されているようだ。

この2CV 4×4サハラは、当時の初年度登録証と保険証のコピー、この個体がマッチングナンバーのボディ/シャシー、フロント/リアの両方のエンジンを保持していることを確認するシトロエン本社発行のファクトリーデータ、入念なレストアを証明する多くの請求書とレストア写真とともに、魅力的なフランスの歴史を物語る、希少かつ実用性の高いクラシックカー。そんなキャッチコピーとともに、RMサザビーズ欧州本社と現オーナーは、10万~12万ユーロのエスティメート(推定落札価格)を設定した。

そして迎えた競売では14万3750ユーロ、現在の為替レートで日本円に換算すると、約2440万円という驚くべき落札価格で、競売人のハンマーが高らかに鳴らされることになったのだ。

現在の国際クラシックカーマーケットにおいては、同時代のシトロエン2CV「AZ」が、高いものでも2万ユーロ前後で取り引きされているのと比べると、やはり「サハラ」は特別と認めざるを得ないだろう。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

全長3.9m! ダイハツの「コンパクトSUV」は“一文字テール”が未来的! パワフルな「1200cc×ハイブリッド」やターボ搭載した「トレック」とは!
全長3.9m! ダイハツの「コンパクトSUV」は“一文字テール”が未来的! パワフルな「1200cc×ハイブリッド」やターボ搭載した「トレック」とは!
くるまのニュース
 専用品がない旧車や緊急時の味方!!「液体ガスケット」とは?【バイク用語辞典】
専用品がない旧車や緊急時の味方!!「液体ガスケット」とは?【バイク用語辞典】
バイクのニュース
「支払は今度で……」なんていまだ人情話もある日本の路線バスもシッカリ経営に! キャッシュレス化がもたらすメリットとは
「支払は今度で……」なんていまだ人情話もある日本の路線バスもシッカリ経営に! キャッシュレス化がもたらすメリットとは
WEB CARTOP
【KTM 990RC R発表】RC8シリーズ以来の大排気量スーパースポーツRC・公道へ再降臨!デビューは2025年春以降
【KTM 990RC R発表】RC8シリーズ以来の大排気量スーパースポーツRC・公道へ再降臨!デビューは2025年春以降
モーサイ
悔しい予選に終わったノリス。王者争いには悟りの境地「最初の6戦で決着していた」今は打倒フェラーリに集中
悔しい予選に終わったノリス。王者争いには悟りの境地「最初の6戦で決着していた」今は打倒フェラーリに集中
motorsport.com 日本版
【カブリオレ対決】BMW対メルセデス 6気筒エンジンを搭載するオープントップのM440i xDriveとCLE450のガチンコ勝負!
【カブリオレ対決】BMW対メルセデス 6気筒エンジンを搭載するオープントップのM440i xDriveとCLE450のガチンコ勝負!
AutoBild Japan
トヨタ「和製スーパーカー」がスゴイ! 約500馬力「直6」風エンジン搭載&“スケスケ”な超ロングノーズ仕様! ワイドでカッコイイ「FT-1」とは?
トヨタ「和製スーパーカー」がスゴイ! 約500馬力「直6」風エンジン搭載&“スケスケ”な超ロングノーズ仕様! ワイドでカッコイイ「FT-1」とは?
くるまのニュース
2025年は車を買う! でもどれにする?…スライドドア付き軽自動車・予算別ガイド、3ゾーン48車種
2025年は車を買う! でもどれにする?…スライドドア付き軽自動車・予算別ガイド、3ゾーン48車種
レスポンス
いつ見てもかわいいレトロデザイン!! 超小型車 フィアット新型「トポリーノ」は欧州で大人気! ネットに続々寄せられる熱い思いとは
いつ見てもかわいいレトロデザイン!! 超小型車 フィアット新型「トポリーノ」は欧州で大人気! ネットに続々寄せられる熱い思いとは
VAGUE
ラリージャパンで国沢光宏が躍動! 二つの顔を持つ紳士がルーテシア ラリー5で激走
ラリージャパンで国沢光宏が躍動! 二つの顔を持つ紳士がルーテシア ラリー5で激走
ベストカーWeb
『危ねぇ知らなかった!』危険回避! 知らないと怖いブレーキパッドの交換タイミング~カスタムHOW TO~
『危ねぇ知らなかった!』危険回避! 知らないと怖いブレーキパッドの交換タイミング~カスタムHOW TO~
レスポンス
ソニー、移動をエンタメに変える「MR Cruise」事業化…あらゆる車両に搭載可能に
ソニー、移動をエンタメに変える「MR Cruise」事業化…あらゆる車両に搭載可能に
レスポンス
「前を走るパトカー」“追い越し”て大丈夫? 抜かす派VS抜かない派で賛否両論!? 「やっちゃダメ」な要注意項目とは
「前を走るパトカー」“追い越し”て大丈夫? 抜かす派VS抜かない派で賛否両論!? 「やっちゃダメ」な要注意項目とは
くるまのニュース
日本人初の快挙! moto2チャンピオン小椋藍がトライアンフ トリプル トロフィーを受賞
日本人初の快挙! moto2チャンピオン小椋藍がトライアンフ トリプル トロフィーを受賞
バイクのニュース
【10年ひと昔の新車】ボルボ V60 オーシャンレース エディションは、世界一周ヨットレースを記念したスペシャルバージョン
【10年ひと昔の新車】ボルボ V60 オーシャンレース エディションは、世界一周ヨットレースを記念したスペシャルバージョン
Webモーターマガジン
孤高のミニバンSUV、デリカD:5に「BLACK Edition」新登場、定番の「CHAMONIX」には新たに8シーターを設定
孤高のミニバンSUV、デリカD:5に「BLACK Edition」新登場、定番の「CHAMONIX」には新たに8シーターを設定
カー・アンド・ドライバー
ダイハツの「“すごい”コペン」登場! 軽規格超えた「ワイドフェンダー」×770ccエンジン搭載! 2L並みパワーでめちゃ速い「デカいコペン」 どんなマシン?
ダイハツの「“すごい”コペン」登場! 軽規格超えた「ワイドフェンダー」×770ccエンジン搭載! 2L並みパワーでめちゃ速い「デカいコペン」 どんなマシン?
くるまのニュース
トヨタの「高級スポーティミニバン」がスゴい! 「走りが楽しい」反響多数!? 王道「アルファード」と異なる「個性」に注目! ヴェルは何が違う?
トヨタの「高級スポーティミニバン」がスゴい! 「走りが楽しい」反響多数!? 王道「アルファード」と異なる「個性」に注目! ヴェルは何が違う?
くるまのニュース

みんなのコメント

4件
  • xqx********
    日本でも乗られてる方がいるという事で、どこかのイベントで見れるといいな。
  • ******
    宮崎駿カントクの2CVも大概だったな
    連載を読んでたら、自分でなんとかできる事は自分でやらないと、どうにもならなかった
    エアコンなんて無いから雨の夜は…
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

-万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

119.0341.0万円

中古車を検索
2CVの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

-万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

119.0341.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村