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なぜ人気車が不人気に? トヨタ「ウィッシュ」がミニバン絶頂期のいま生き残れなかった理由とは

■ミニバン内でもトレンドが変化!? 現在のファミリー層が求める必須装備とは

 ミニバンは1990年代のRVブームから現在まで数多くのモデルが人気となっていて、2019年8月と9月にはトヨタ「シエンタ」がミニバン初の新車販売ランキング首位を獲得するなど、直近も衰える気配はありません。しかし、すべての車種が人気を維持しているわけではなく、生産を終える車種も出ています。

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 なかでも、新車販売ランキングでトップ3に入ったことさえある人気モデルであったにも関わらず、現在は存在しない「ウィッシュ」というミニバンがかつてトヨタに存在したというのですが、いったいどんなミニバンなのでしょうか。

 初代ウィッシュは、2003年に発売された5ナンバーサイズの3列シートミニバンです。5ナンバーサイズでかつ全高が1600mm以下に抑えられていたことから、多人数乗車できるにも関わらず運転がしやすく、かつステーションワゴンに近い形状のミニバンとなっていました。

 後席のドアはヒンジ式が採用されていて、それがよりステーションワゴン的なデザインを強調しているといえます。

 ウィッシュは発売初年度にあたる2003年に年間で15万台以上を売り上げ、新車販売ランキング(軽自動車と輸入車を除く)で3位を記録。早くも人気モデルの一員となりました。しかしその後ウィッシュの売れ行きは、急落することはないもののじりじりと下降傾向に入ります。

 ウィッシュが販売台数を徐々に落とした理由のひとつとしては、車内の広さを確保してかつ両側スライドドアを装備した車種の人気が、長い年月をかけた後に現在のミニバン市場において確立されたことが挙げられます。

 2019年現在のミニバン市場において人気の車種がどのようなものか見てみると、日本自動車販売協会連合会が発表する2019年上半期(1月から6月)の新車販売ランキングのなかで、トップ10にランクインするミニバンはすべて全高1600mm以上でかつ両側スライドドアを備えていて、ウィッシュの全高1600mm以下でかつ後部ドアがヒンジタイプという特徴とは異なることがわかります。

 さらに、同じ現象はミニバン以外のボディタイプでも起きています。新車販売ランキング9位を記録したトヨタのコンパクトカー「ルーミー」も、より車高が高い全高1700mm以上&両側スライドドアという条件を備えています。

 ルーミーは、ミニバンと同じくファミリー層をターゲットとして想定されており、実際にトヨタの販売店スタッフは「ルーミーは、ミニバンのように室内空間が広い点や、ミニバンより取り回しが良いといった部分が受けています。

 いままでミニバンなどに乗っていたユーザーが、ちょうど良いサイズのルーミーとタンクに乗りかえることも多く、それが好調な要因だと思います」と説明するなど、運転しやすいコンパクトサイズでありながら、ミニバンの強みであったポイントを抑えている点が好評ということです。

 同じく、軽自動車においてもこの傾向は顕著で、全国軽自動車協会連合会が発表する2019年上半期の軽自動車販売ランキングでは、首位から3位までを全高1700mm以上&両側スライドドアの「スーパーハイトワゴン」と呼ばれるモデルが占め、こちらもファミリー層に人気です。

 すなわち、ミニバンの主要顧客であるファミリー層にとって、車高の高さ(室内の広さ)と両側スライドドアには高い需要があり、ミニバンのみならずコンパクトカーや軽自動車であってもファミリー層がターゲットとなれば必須で装備をし始めてきたことから、車高が低くヒンジドアのミニバンであるウィッシュが相対的に人気を落としていったのだといえます。

 初代ウィッシュはその後、2009年に2代目へモデルチェンジして若干売り上げを持ち直したものの、最終的には2017年で販売を終了しました。

■思わぬ伏兵が登場? SUVがミニバンの代わりになる理由とは

 2019年現在、ミニバン市場では高い車高と両側スライドドアというふたつの装備を持つモデルが人気となっていますが、ミニバンが検討対象となるユーザーすべてが、高い車高&両側スライドドアを求めているとはいいきれません。

「広さ(室内高の高さ)はそれほど求めない」「ヒンジドアでも構わない」、しかし「全員分の荷物を積んだうえで家族で出かけられる使い勝手は必要」というユーザーは、果たしてどこへいってしまったのでしょうか。

 最近のユーザー動向についてトヨタの販売店スタッフに聞いたところ、次のように話します。

「ミニバンの人気は高いままです。やはり、家族で使うことを考えると一番理想に近いクルマといえます。しかし、各自動車メーカーからは、小型ボディへの需要や、多人数乗車を可能にする3列シートを期待する声など、多様化するニーズに応えられるようにさまざまなSUVが出ています。

 そうしたことから、ミニバンでなくても良いと考えるファミリーがSUVに乗り換えをするケースも増えています。とくに、トヨタでは2019年4月に発売した新型『RAV4』が20代から30代の若年層にも好評なことから、若いファミリーではSUVを購入される可能性も高いといえます」

 SUVは5名定員という車種が多いものの、荷室が広く取られていることが多いことから、家族でレジャーなどへ向かうときに便利な車種が多く存在します。

 そして、多くのSUVはアイポイントが高く設定されており、それがミニバン的な見晴らしの良い運転感覚をもたらすことも、SUVがミニバンユーザーにとって受け入れやすいボディタイプである理由のひとつです。

 さらに、前出のトヨタの販売店スタッフが指摘したように、多人数乗車が必要であれば3列シートのあるSUVを選択することもできます。

 SUVは、ミニバンと並んで新たなファミリーカーとなりつつあるといえるでしょう。

※ ※ ※

 ウィッシュは2017年に販売を終了しましたが、ウィッシュに近い特徴をもち、2000年に初代が発売されていたホンダ「ストリーム」は、ウィッシュより3年も早く2014年に販売が終了しています。

 現在、ストリームに近いホンダ車としては「ジェイド」が販売されています(ホンダはジェイドを「ミニバン」ではなく「ハッチバック/ワゴン」と定義している)。しかし、新車販売ランキングではトップ50圏外となることが多く、決して人気とはいえません。

 また、トヨタ車では、ウィッシュに近い特徴を持つモデルに「プリウスα」があり、プリウスブランドのうちのひとつとして販売されています。

 ミニバンは長い間人気のボディタイプですが、同じカテゴリに属するモデルであっても少しずつ変化しながら、よりユーザーニーズを汲むモデルへと進化しているのです。

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