ITが支える快適交通網
「スマートハイウェイ」は、渋滞のない安全で快適なドライブを実現するための仕組みだ。
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これは、道路交通の管制や渋滞の検知、予測にさまざまなITソリューションを活用して整備される高速道路のことを指している。スマートハイウェイは、物流や交通の効率化、快適さや安全性の向上を目指す次世代の交通インフラとして注目されている。
スマートハイウェイは単なる高速道路ではなく、特にIoT(モノのインターネット)を活用して管理される交通インフラ全体を含んでいる。
IoTは、インターネットを介してさまざまな物理的なデバイスや「モノ」が互いに接続され、情報を収集、交換、分析する仕組みだ。これにより、日常生活やビジネスのさまざまな場面で効率化や便利さが実現される。
そのため、自動運転技術やメンテナンス、交通管制など、さまざまな分野と関わりがある。交通の快適さや安全性の向上は確かに重要な課題だが、なぜ特にスマートハイウェイに注目が集まっているのだろうか。
5Gで進化する道路
スマートハイウェイが推進される背景のひとつは「5G」である。5Gは、高速で大容量の通信を実現する第5世代移動通信システムで、
・低遅延
・多数接続
といった特徴がある。総務省の発表によれば、2022年度末時点で全国の5G人口カバー率は96.6%に達している。
スマートハイウェイは、インターネットに接続できるさまざまなIoT機器を活用しているため、高度な無線通信は欠かせない要素だ。特に5Gの大容量・低遅延・多数接続といった特徴は、情報を統合し分析・活用するスマートハイウェイとの親和性が非常に高い。5Gの普及により、スマートハイウェイを実現する基盤が急速に整ってきたといえる。
例えば、ソフトバンクはAIを用いたインターチェンジ監視の実証実験を行った。同社が開発した「おでかけ5G」を知多半島道路の半田中央インターチェンジに設置し、AIによる画像解析を実施した。この実験では、HD画質では検出できない落下物や逆走車をAIで見つけ出すことを目的としている。
この実証実験で5Gの高速大容量データ通信が活躍し、より小さな落下物や逆走車などの道路上の異常を自動的に検知することに成功した。これにより、パトロール員の安全監視を効率化し、見落としを減らすことが期待されている。
さらに、ソフトバンクはIoTによる渋滞監視も実証実験している。知多半島道路の5か所に簡易トラフィックカウンターを設置し、実験の結果、特定地点での渋滞発生を検知し、渋滞の長さをより正確に測定できることがわかった。
こうした情報を5Gの高速通信で迅速にドライバーに提供できるようになれば、渋滞の緩和や効率的な迂回路への誘導が可能になる。
リアルタイム監視で異常察知
スマートハイウェイが推進される別の背景には
「高速道路の老朽化」
がある。NEXCO東日本は、スマートメンテナンスハイウェイというプロジェクトを実施している。このプロジェクトでは、IoTやドローン、ロボットなどを活用してデータを収集している。
収集したデータに基づいて、設備の点検や調査、分析、評価を行い、補修や危機管理、交通管理の効率化を目指している。この背景には、高速道路インフラの老朽化と人口減少に伴う維持管理技術者の質や量の確保が課題となっていることがある。
さらに、ソフトバンクは橋梁の健全性監視に関する実証実験も行っている。5Gと接続された加速度センサーを橋桁や橋脚に複数設置し、微小な振動を監視している。実験の結果、計測した振動特性を「リアルタイム」で監視できることが確認された。
これにより、災害などが発生した際に、橋桁や橋脚の異常を遠隔地からリアルタイムで検知できる。老朽化が懸念される施設を監視し、異変を即座に察知することが可能になる。
年20%成長、進化する交通管理
スマートハイウェイには多くの可能性がある。高度な交通管理や渋滞監視・管理システムが含まれており、これらが統合されることで交通管制や制御、誘導システムに新たな可能性が生まれる。そして、この高度な交通管理システムは、高速大容量通信である5Gによって支えられている。
さらに、高速道路が直面している深刻な状況もスマートハイウェイを後押ししている。人や物資の移動を安全かつ効率的に実現するために、高速道路網は構築されてきたが、今、老朽化の問題が浮上している。また、気候変動による自然災害や解消されない渋滞、大規模な交通事故による損失が増加しているのも事実で、これらは世界中の高速道路で共通の問題となっている。
こうした状況がスマートハイウェイの普及を促進し、市場は注目を集めている。6000社以上の企業と提携するインドの調査会社モルドール・インテリジェンスによれば、スマートハイウェイの市場規模は2024年には558億ドルに達すると推定されている。そして、2029年までには
「1379億8000万ドル(約20兆6000億円)」
に達すると予測されており、この期間中の年平均成長率は19.85%になる見込みだ。
さまざまな新技術や他分野が関連するスマートハイウェイは、日本を再び活性化させる大きなプロジェクトになるかもしれない。
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