この記事をまとめると
■ホンダが新型CR-Vを日本国内に投入
H2Oボタンに大気清浄機! トヨタ・ミライがもつ「FCVだけ」の機能3つ
■日本では燃料電池車のみが販売される
■中谷明彦さんによる試乗インプレッションをお届けする
クロスオーバーSUVの燃料電池車が登場
ホンダが新型CR-Vの水素燃料電池車であるe:FCEVを国内に投入した。新型CR-Vはいまのところ北米と中国を中心に販売されているが、国内にはこのe:FCEV車のみを投入するということで、早速試乗してきた。
ホンダの燃料電池車としては、これまでにもFCXやクラリティなどがあったが、今回のCR-Vは人気の高いクロスオーバーSUV車として設定され、5人乗車や荷物積載性など、実用性能を高めているほか、外部充電機能を備え、EVとしても使用できる点が目新しい特徴となっている。
実車を見てみると、Cセグメントに属する車体は先代同様に存在感があり、また全長がやや拡大していて流麗なプロポーションに仕上がっている。全長の拡大は前部3層ラジエターの配置や後部水素燃料タンク保護など、衝突安全性能を満たすための措置でもあるが、スタイリングにうまく溶け込ませ、見栄えよく仕上げられている。
室内に乗り込むと、ダッシュボードはアコードやシビックなどと似たようなデザインが踏襲され、ホンダ車の一員であることがすぐにわかり馴染みやすい。メーターは液晶で見やすいが、センターモニターは相変わらず小さめで、世界の電動車のトレンドからは外れている。押しボタン式のシフトセレクターも同様で、ホンダ式といっていいものだ。
シートは硬めの座り心地で、環境へ配慮したバイオ素材を用いている。電動アジャスト機能付きでサポート性もデザインもよく、申し分ない。
システムを起動してDレンジボタンを押せば走り出すことができる。燃料電池車だからという特別な意識を持つことなく普通に走り出せる。
そして20~30mも動かせば、質感の高い素性のよさが感じ取れる。タイヤは韓国製「クムホ」タイヤで、245/60R18のM+S(マッドアンドスノー)を装着。それでもハーシュやロードノイズは小さく、快適だ。
2010kgという車体重量に合わせ前輪260kpa、後輪240kpaと高めの空気圧設定だが、それでも快適。転がり抵抗も軽減でき燃費にも貢献していそうだ。
EVとして走らせることも可能!
車輪の発生する振動は車体でうまく減衰され、乗員に不快感を与えない。加えて遮音性能が高く、外界の雑音もシャットダウンされるので静かで居心地がいい。
電動モーターで前輪を駆動するFFで、モーターの最高出力は130kW。最大トルク310Nmが発揮され、十分な出力スペックが与えられている。ちなみにメーカーが公表している最高速度は160km/h。これはモーターの最高回転数に起因しているのだろう。
ドライブモードはデフォルトのノーマルの他にスポーツ、ECON、スノーと選択でき、市街地走行はノーマルでのドライバビリティで過不足ない。
燃料電池車の仕組みは、水素燃料タンクから燃料電池スタックに水素を送り、そこで酸素と反応させて発電しモーターに給電する。それが今回のモデルでは17.7kWhのリチウムイオン電池をフロア下に搭載し、外部からも充電することで電気自動車として走らせることもできる点が新しい。
WLTCモードで電気自動車としては約61kmのEV走行が可能で、自宅で100Vあるいは200Vの充電設備があれば、日常的にEVとして使うことができる。また、水素燃料はふたつの円筒型タンクを搭載し、計4.3kgの充填が可能だ。バッテリーと水素タンクが満タンであれば、WLTCモードで621kmという長いレンジで走行可能となる。
水素でもバッテリーでも駆動モーターは同じなので、ドライバビリティにはもちろん変化ない。また、チャージモードを備えていて水素燃料を使い約1時間で駆動バッテリーを満充電にすることもできる。V2H(ビークルから家)やV2L(家電製品)も備えるなど、近年のPHEVやBEVなどの装備に準じていて実用性が大幅に高まっているのである。
水素燃料タンクによりリヤラゲッジスペースが一部影響を受けているが、耐荷重30kgのトノカバーで仕切られフルフラットな荷室を得るなど工夫を凝らしている。
走り、使い勝手、環境性能に優れ、補助金も受ければ一般の人でも購入しやすい。水素のインフラが身近になくても電気自動車として走行できる新しい燃料電池車のあり方を提案している。この新しいパッケージングに魅力を感じる人は多くなりそうだ。
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