モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは1994年の全日本GT選手権に参戦した『ランチア・ラリー037』です。
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2024年にスーパーGTは、前身である全日本GT選手権(JGTC)の本格スタートから数えて、30周年という節目を迎えた。
現在でこそ、スーパーGTのGT500クラスもGT300クラスも規定がしっかりと整備され、洗練された車両ばかりが参戦をしている。しかし、JGTCが始まった当初、特に初年度にいたっては、参加台数を集める狙いもあり、さまざまなルーツを持つマシンたちがエントリーしていた。
今回は、そんな初年度の参戦車たちのなかから、銘車というより珍車かもしれない変わったルーツを持つ一台、『ランチア・ラリー037』をご紹介する。
ランチア・ラリー037は、1982年からグループBという規定によって競われていた世界ラリー選手権(WRC)に向け、ランチア・ベータ・モンテカルロというミッドシップカーをベースにして開発されたラリーマシンだ。正式な車名は『ラリー』ではあるものの、エンジンの開発を担当したアバルトの開発コードである“SE037”の037をとって、ランチア・ラリー037と呼ばれている。WRCにおいてラリー037は、主に1985年ころまでランチアの主力車種として戦い続けた。
そして、その9年後、1994年に本格スタートしたJGTCに突如、スポット参戦を果たすことになる。このラリー037がJGTCにエントリーしたのは、富士スピードウェイで開催された第3戦でのことだった。
マシンを持ちこんだのは、ロッソ・コンペティションというチーム。ロッソは、当初こそフェラーリF40での参戦を予定していたものの、その計画が頓挫したことで、ラリー037の投入に至ることになったのだ。
JGTCに投入されたラリー037は、ランチアのワークスカーとしてマルク・アレンのドライブでWRCを戦っていたマシンそのもの。JGTCの規定に合わせてモディファイが施された。ただ、ギヤだけは合うものがなく、最高速が200km/h以下に留まるという有様であった。
そんな状態ではあったものの、総合21番手タイムをマークして予選を通過。決勝でも総合12位、GT1クラス9位で完走し、ポイント獲得を果たした(車両認定が間に合わなかったため、選手権ポイントはつかないと当時は語られていたが、GTA公式サイトでは2点を獲得してランキングされている)。
結局、JGTCへのエントリーは、この1戦のみに終わったラリー037。珍しい車両の参戦例として、マニアックなファンの記憶に刻まれることになった。
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