2019年 国産メーカーが続々参入
2016年ころから、日本のタイヤ市場でもオールシーズンタイヤが一般に認知されるようになってきた。
【画像】ベクター4シーズンズGEN-3 どんなタイヤ?【雪道テスト】 全49枚
選べるほどの種類はなかったが、グッドイヤーのベクター4シーズンズ・ハイブリッドが日本向けのサイズ展開を増やし、この市場の“開墾”を始める。
その後はミシュランが、2019年には多くの国産タイヤメーカーが、日本向けのオールシーズンタイヤを発表。
首都圏で雪が積もらない冬が続いたこともあり、今では量販店のタイヤコーナーに全天候型銘柄の展示スペースを見かける機会が増えた。
今年はとくに面白い。
このカテゴリーの市場を牽引してきたグッドイヤーが、オールシーズンの新製品として「ベクター4シーズンズGEN-3(ジェン・スリー)」を日本導入している。
取材班はこの冬に、正式発表前の新タイヤとして雪のなかを試乗した。
同じ条件で乗り比べ 何が違う?
会場にはこれまでのベクター4シーズンズ・ハイブリッド(以下、既存品)も用意され、同じコースを同じ車種で走り比べることができた。
既存品が一般的なユーザー層を担うのに対し、GEN-3はプレミアム・ゾーンの製品という位置づけだ。違いが分かりやすかったのは定常円での旋回。
既存品では、同じ旋回半径(スロットル一定)で周っていても、増し踏みしていくとクルマが円周から外れて外側に飛び出そうとする。
取材班の技術では、あらぬ方向に進んでいくのをブレーキペダルを頼りに停めるしかなかった。
GEN-3では、増し踏みしていくと既存品の車速を超えて周回できる。
やがて円周から外れるのだが、スロットルペダルを戻せばグリップを回復していき、大回りになる程度で済む。
この差は、非常に大きい。
「怖い」の感覚が“解けて”いく
取材日は日が高くなるにつれて氷雪が解け始め、コースを外れると雪の表面を水膜が覆っているところも。そこまでクルマが飛び出してしまうと、もうコントロールするのは困難。
GEN-3なら円周から外れる挙動を感じ取った際に、スロットルペダルをすっと戻すだけで車速が落ち、進むべきラインを維持することができる。
そんな回避策が1つ手の内にあるだけで、恐怖心・戸惑いばかりの雪道だって自分のペースで運転に集中できるから心強い。
GEN-3は、どこが変わったのだろう。
タイヤの表面を覗くと、トレッド面の中央に細かな切れ込み(サイプ)が無数に刻まれている。これが雪を掴むわけだ。
横方向、斜め方向へと入り交じるサイプの交差点は広がる仕組みになっており、掴んだ雪をタイヤが回転する動きの中でスムーズに排雪する。
ブロックの剛性を高める構造も取り入れ、雪路のハンドリング性能もアップした。耐摩耗・ウェット走行・静粛性を向上する技術も採用されている。
またGEN-3は、高インチ・サイズを揃えるので輸入車ユーザーも選びやすいし、SUV用となる「GEN-3 SUV」もラインナップされた。
ドライバーの視点で見れば、選べるオールシーズンタイヤの顔ぶれが広がったと思えばいい。
オールシーズン市場の動向は?
ヨーロッパ市場におけるオールシーズンタイヤの需要は、2016年から18%の増加を示している。
日本のマーケットに目を移すと、「店頭で大きく伸長しており、2022年上半期の数量前年比は36%増(GfKジャパン調べ)」と好調だ。
国産メーカーのオールシーズンタイヤの多くは現行世代が初代にあたるが、サイズの選択肢は増えつつある。海外勢では、日本ミシュランタイヤが送り出す「クロスクライメート」シリーズが昨年第2世代にモデルチェンジされ、先ごろSUV用も加わったばかり。
また近年の新車市場では、全天候型タイヤをOEM装着する車両も見られるなど、ユーザーは確かに増えている。
オールシーズンを使うドライバーが口を揃えて語るのは「(雪が少ない地域に住んでいるから)冬になっても、このままだよ」という言葉。
本格的な降雪エリアに行くことがない方なら、夏用・冬用の「履き替え」「履き戻し」を考えずに済むし、使っていないタイヤの保管のために家の敷地を奪われることもない。
そうしたメリットは、何事も無駄を省きたい現代人のライフスタイルによく合うと思う。
オールシーズンタイヤを早い時期に購入したユーザーなら、すでに車検の機会などでタイヤ交換を経験しているだろう。彼らはリピーターになったのか、それとも夏・冬タイヤを使い分ける暮らしに戻るのだろうか。
今回はスノーコンディションでのレポートとなったが、このカテゴリーを引っ張ってきたベクター4シーズンズの新製品とあってドライ/ウェットの性能も気になるところ。
「GEN-3」の販売は8月に始まったばかりというから、サマータイヤとしての評価も改めてご報告したい。
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