ドライバーとクルマと路面とが結ばれる
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
【画像】ドライバーズサルーン BMW M5 E39型と最新のF90型を比較 全69枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
E39型BMW M5は、製造品質もあえて触れたくなるほど高い。スイスの高速列車より重い音を立てて閉まるドアには、二重ガラスが付いている。センターコンソールに隠れるメカニズムを備えた灰皿など、細部に至るまで過剰なほどの設計が施されている。
もっとも、より深さのある灰皿の方が便利だったかもしれない。だが、ヴォルフガング・ライツレが率いたBMWの時代では、望ましい方法ではなかったのだろう。
車内空間は、Mディビジョンの手で一層豊かなものになっている。照明を内蔵したシフトノブに、極めて見やすいメーター類。艶がありソフトでよく伸びる素材が用いられた、ツートンカラーのレザーシート。いかにも1990年代らしい。
ステアリングやシフトノブなど、適度に重くスプリングのような手応えのある操作系の感触が、M5に活発な息吹を与えている。よりドライバーとクルマと路面とが結ばれ、運転に没入できる。現代のMモデルでは、もはや得られない部類の特長だ。
しっかり手のひらでリムを握り、つま先を動かし、自信に満ちた運転をE39型は好む。単に操作するだけでなく、手足をどう動かすか、ということを改めて確認させてくれる。
それを強く表しているのが、MTのギアボックス。より運転を楽しむなら、ダブルクラッチを与えるのが良い。昔ながらの方法でクランクシャフトとドライブシャフトの回転速度を同期させ、シフトダウンを決められる。
レスポンシブなV8と直感的なステアリング
手の動きと同時に、ブレーキとアクセルを踏む力の微妙な調整も必要。アボカドから大きな種を取り出すように、丁寧に。現代の高性能モデルとは違うから、刺すような勢いで操ってはいけない。それが20年前と今との差だろう。
V8エンジンの音響的な存在感は、印象的なまでにデリケート。でも一般的な速度域でも充分に味わえる。4000rpmを超えて回せば、陽気で金属質な咆哮を強く放つ。
エンジンは常にレスポンシブで、最高出力目掛けて柔軟にパワーを膨らましていく。6000rpm以上回転させれば、深く記憶に刻まれる。
2021年の多くの高性能モデルとは異なり、M5のシャシーやステアリングはモードを選ばずとも機能する。誇張された高性能感はない。ボディは大柄に感じられるが、巨大ではない。
サスペンションは、路面が酷く荒れていたり鋭い入力が突然加わらない限り、流暢さを失わない。英国郊外の狭い一般道の舗装でも、見事に受け流してくれる。
ステアリングのレシオは比較的穏やかで、吟味された印象。重み付けがちょうど良く、回す角度に関係なく手応えには一貫性がある。コーナーで負荷が高まっていくと、ボールナット式のステアリングラックらしく、わずかな癖がある。
しかし、操舵の邪魔をするほどではない。穏やかで直感的なレシオ設定で、ホイールベースの長いFRらしい、少しおっとりした挙動が与えられている。バランスも秀逸。見事にタイトで安定した、一体感のある高速移動を味わわせてくれる。
20年が過ぎる今でも感心するまとまり
高速道路は、BMW M5が最高に輝く場面だ。サスペンションは速度が増すほどに雑味が消え、常にしなやかで快適。車重をしっかり支えつつ、コーナーでは引き締まった姿勢制御も実現している。不気味なほどに。
1999年に英国へ上陸した時、超音速旅客機のコンコルドのような印象をドライバーへ与えたに違いない。既に20年が過ぎようとしている今ですら、非常にまとまりが良い。感心せずにはいられない。
今回試乗したE39型のM5は、走行距離がとても短く、コストを惜しまずにBMWが丁寧に維持している個体。市場に流通している平均的なM5とドライビング体験がどの程度異なるのか、とても気になる。
おそらく、かなり大きな違いがあるだろう。いつの日にか、機会が許せば筆者はそれを確かめてみたい。チェダー渓谷の環境が変わらず、ガソリンスタンドが沢山残っているうちに。
BMW M5(E39型/1998~2003年/英国仕様)のスペック
英国価格:5万1907ポンド(新車時)
全長:4783mm
全幅:1801mm
全高:1412mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:5.3秒
燃費:7.2km/L
CO2排出量:−
車両重量:1795kg
パワートレイン:V型8気筒4941cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:400ps/6600rpm
最大トルク:50.9kg-m/3800rpm
ギアボックス:6速マニュアル
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