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20世紀の最高傑作「マクラーレン F1」。伝説を生んだ史上初の1億円カー(1992)【名作スーパーカー型録】

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20世紀の最高傑作「マクラーレン F1」。伝説を生んだ史上初の1億円カー(1992)【名作スーパーカー型録】

McLaren F1

マクラーレン F1

20世紀の最高傑作「マクラーレン F1」。伝説を生んだ史上初の1億円カー(1992)【名作スーパーカー型録】

ブルース・マクラーレンの夢を具現化

1992年5月12日、伝統のF1GPで賑わうモナコの街で、後に20世紀に誕生したスーパースポーツの最高傑作とも評されることになる1台がその存在を明らかにした。「F1」というきわめてシンプルな、しかしながら絶対的な価値をもつネーミングを掲げたこのモデルを発表したのは、1989年にイングランドの地に創立されていたマクラーレン・カーズ・リミテッド社。それは当時のTAG マクラーレン・グループによって設立された、スーパースポーツを生産することを目的とした会社だった。いつの日か自らの名を掲げたオンロードカーを世に送り出したいという夢は、マクラーレンの創始者であり、その夢半ばにして1970年にカンナム・カーのテスト中に事故死した、ブルース・マクラーレンが常に胸中に思い描いていたものだったという。

1億円を超えるも納得の内容

それから20年以上の時を経て、その夢はロン・デニス、ゴードン・マレー、そしてクレイトン・ブラウンといった、マクラーレンの中心的な人物らによって現実へと導かれることになった。マクラーレン・カーズ・リミテッド社は、それを唯一の目的として誕生した自動車メーカーであり、1992年のモナコGPでは、そのプロトタイプとともに53万ポンド(当時のレートで、約1億18000万円)という衝撃的な価格も同時に発表された。しかし、当時センセーショナルな話題として伝わったこの価格も、その実車を見た者には十分すぎるほど納得のいくものだったに違いない。そこにはF1マシンのようなレギュレーションによる制約がない分、さらに進化を遂げたスーパースポーツとしてのデザインやメカニズムが、一切の妥協を許すことなく採り入れられていたからだ。その評価はもちろん現在に至っても変わることはない。

世界初のカーボンモノコックを採用

マクラーレン F1は、ロードカーとしては世界初となるカーボンモノコックを基本構造体に採用したモデルだ。マクラーレンはF1GPの世界においても最も早く、1981年にはカーボンモノコックを導入した、いわばパイオニア的存在。ロードカーのF1は、このモノコックをリヤフェンダーなどと一体成型したセミモノコック構造で、一方フロントにはクラッシュボックスアッシーと、そのサブモールディングが組み合わされ、前方からの衝突時に安全性を確保する仕組みになっている。

シンプルなエクステリアに隠された斬新な機能性

エクステリア・デザインも現代においてもなお魅力的なフィニッシュを見せている。そのボディにはレーシングカーのような派手なエアロパーツは採用されていないものの、リヤには収納時を含めれば3ポジションが設定される可変式のリヤウイングが備わり、ブレーキング時にはライズアップし、エアブレーキとしての機能も果たす。この前後の荷重移動を最小限に抑えようというコンセプトは、後にメルセデス・ベンツ、メルセデス AMGとの3社で共同開発されたSLR マクラーレンなどにも継承されていくことになる。

ブラバム BT46B譲りの強制排気システムを採用

マクラーレン F1は、もちろんアンダーボディによってダウンフォースを得る、いわゆるグランドエフェクトカーだが、その効果をさらに高めるために流れてきたエアを強制排気するための電動ファンを装備していることも大きなトピックスといえる。ちなみにF1GPの世界ではブラハム BT46Bで初採用されたものの、後にレギュレーションによって禁止された。このシステムを当時考案したのもまたゴードン・マレーであった。

F1マシンをも思わせるセンターシート

インテリアは、現代のスーパースポーツと比較すると、シンプルな仕上がりだ。特徴的なのはやはり、ドライバーズシートをセンターに、そしてその左右にパッセンジャーシートをレイアウトするというデザイン。シフトレバーやメーター、あるいはスイッチ類などの違いはあるものの、センターに着座したドライバーは目前に広がるシンメトリーな空間を目にして、あたかもフォーミュラーカーをドライブするかのような感覚が得られる。メーターパネルのセンターには、フルスケールで8200rpmを刻むエンジン回転計が配置され、いかにも走りに徹したスーパースポーツらしい硬派な雰囲気が演出されている。

BMW製の自然吸気式V型12気筒エンジンを搭載

このF1のミッドに縦置き搭載されるエンジンは、BMWの子会社であるM社から供給された「S70/2」型と呼ばれる6064ccのV型12気筒DOHC自然吸気ユニット(名エンジニア、ポール・ロッシュの手によって誕生した名機)。スーパースポーツの世界では当時、フェラーリ F40やブガッティ EB110などターボエンジンが全盛を誇っていたが、マクラーレンは精密の極致ともいえるチューニングを受けて完成された自然吸気エンジンをF1に採用した。ちなみにこのエンジンは補器類を含めても、重量はわずかに260kg。エンジン全長は驚くことに60cmしかない。

注目の最高出力は627psを発揮、レブリミットは7500rpmに設定されていた。カーボン製のトリプルディスククラッチを介して組み合わされるトランスミッションは6速MT。超耐熱合金性のエキゾーストシステムや、遮熱用に使用される22Kの金箔もエンジンルームでの大きな見どころとなっている。前後のサスペンションはいずれもダブルウイッシュボーン形式。ホイールはOZレーシング製の17インチ・マグネシウムで、タイヤはフロントに235/45ZR17、リヤに315/40ZR17サイズのグッドイヤー製イーグルF1を装着した。

ポテンシャルの高さが認められレースの世界へ

実際にF1のデリバリーがスタートしたのは1994年のことになるが、その圧倒的な運動性能は早くからレース関係者の間で大きな話題となる。マクラーレンはそもそもこのF1でレース活動を行う計画は持ち合わせていなかったが、その熱烈な要望に応じて1995年1月にコンペティションモデルの「F1 GTR」を発表する。当時のGT選手権にターゲットを定めたそれは、ミッドのV型12気筒エンジンをモノコックにリジッドマウントしたほか、レギュレーションに沿って、さまざまなモディファイが施された。そして同年のル・マン24時間レースでは総合優勝を果たすなど、その戦闘力の高さはすぐに証明されることになった。またこの年に5台が限定生産された「F1 LM」は、ル・マンでの勝利を記念したモデル。エンジンのパワースペックは668psとスタンダードなF1から大幅に向上し、かつウエイトは約70kgも軽く仕上げられていた。

サーキットへと投じられたF1 GTRは、その後も正常進化を続け、最終的に28台が生産されたが、1997年シーズンを前にマクラーレンは、その最終進化型ともいえるモデルを生み出すために、ホモロゲーションモデルとして、ボディをさらにワイド&ロングなフォルムとした3台の「F1 GT」を製作する。結果F1は、64台のスタンダードモデルとプロトタイプを加えて、106台が生産されたというのがマクラーレンの発表である。

マクラーレンの最新作「スピードテール」の原型

2018年10月に発表された、3シーターコンセプトを久々に復活させたスーパーGT「スピードテール」の限定生産台数が106台とされた理由はここにある。マクラーレン F1、そのスーパースポーツとしてのパフォーマンス、そして歴史的な価値は、これからも永遠に変わることはないだろう。

【SPECIFICATIONS】

マクラーレン F1

発表:1992年

エンジン:60度V型12気筒DOHC48バルブ

総排気量:6064cc

最高出力:461kW(627ps)/7400rpm

最大トルク:650Nm/4000rpm

トランスミッション:6速MT

駆動方式:RWD

車両重量:1138kg

最高速度:391km/h

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

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みんなのコメント

7件
  • (当時のレートで、約1億18000万円)という衝撃的な価格も同時に発表された。

    確かに衝撃的な価格。幾らなのか分からない!
  • マクラーレンF1の記事を見るたびに、つくづく当時のホンダは経営センスが無いと思う。
    最初にマクラーレン側からV12エンジンの打診が有ったが、ホンダは開発コストがかかり過ぎるという理由で断った。
    しかしアスコット/ラファーガ用に直列5気筒エンジンを作るぐらいなら、いっそV12を生産して真ん中で切断し直6の搭載も出来たはずだ。(ポルシェ928のV8⇒944の直4の様に)

    マクラーレンF1供にホンダV12も伝説になれたはず、と思うと実に勿体ない。
    (ルマンに勝てたかどうかは分からないけどさ)


※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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