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出番は来ない方が良い ランドローバー SASローバー ミネルバ・ブラインド 特殊部隊のシリーズ1(2)

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出番は来ない方が良い ランドローバー SASローバー ミネルバ・ブラインド 特殊部隊のシリーズ1(2)

コンゴの戦闘で失われたミネルバ・シリーズ1

今回ご登場願ったミネルバ・シリーズ1 4×4ブラインド・パラシュート偵察車は、シャシー番号36633928。1952年に通常のミネルバ・シリーズ1として、ベルギー・アントワープの工場で完成している。

【画像】特殊部隊のシリーズ1 ランドローバー SASローバー ミネルバ・ブラインド 初代ジープと新型ディフェンダーも 全121枚

3年後にパラシュート連隊で使用するため、4×4ブラインド仕様として改造された。記録によって異なるが、合計で30台から60台が作られたようだ。

ベルギー空挺部隊に属した経験を持つ人物によって、2010年にレストアされている。バズーカやマシンガンはレプリカだが、ドライバー直後の無線機は当時のものだという。

通常のボディでもスチール製で車重は増えていたが、防弾のフロントガラスやラジエターなどで装甲性能が高められ、相当な武器も搭載されていた。2.0L直列4気筒エンジンには、かなりの重荷だっただろう。

資料では、7859台ぶんのノックダウン・キットがベルギーへ届けられており、その中には、今回のランドローバー・シリーズ1 4x4 ゼネラルサービスSASローバー Mk3と同じ、86インチ・シャシーの車両も含まれていた。

ところがミネルバは、契約違反を巡ってランドローバーと対立。最終的にミネルバ側が勝訴するものの、1956年にコンポーネントの供給は打ち切られ、同社は廃業に至った。

完成した4×4ブラインドの大多数は、ベルギー領だったコンゴの戦闘で破壊されるか放棄された。裁判後には、C20という独自モデルも販売されている。だが、ランドローバー・シリーズ1とかなり似ていた。

ローバーの4気筒らしいボロボロというノイズ

2023年にSASローバー Mk3と4×4ブラインドを乗り比べても、DNAの近さが良くわかる。ドアのない非常にシンプルなボディに、致命傷を与える武器が満載されている。フロントに装備されたフラットな装甲板が、ミネルバをシリアスに見せる。

シートは布張り。左側の運転席へ腰掛けると、肉厚なシールドがスカットルから立ち上がっている。その上に、防弾ガラスで作られた半円形のフロントガラスが載る。助手席側は可倒式で、機関銃を前方に向けて発砲できる。

ダッシュボードのメーターは、スピードと燃料、バッテリーの充電量。4速マニュアルとトランスファーのレバーが、中央から突き出ている。

金属製のスターターボタンを押すと、ローバーの直列4気筒らしい、ボロボロというエンジン音が聞こえ始める。クラッチペダルは不自然に軽く、ストロークは短い。シフトレバーは長く、正しいゲートを選ぶには、慣れと正確な操作が求められる。

一般道で4×4ブラインドを運転すると、コメディ映画に紛れたよう。周囲のドライバーは、レプリカの機関銃に驚きを隠さない。しかも操縦性は曖昧で、狙った方向へ走らせるには、ステアリングホイールを左右へ切り続ける必要がある。

これは、SASローバー Mk3でも共通する。43 BR 70という英国陸軍のナンバーで登録された今回のプロトタイプは、1955年11月14日にロンドン西部のフェルサム第21基地車両として納入され、秘密の任務をこなした。

非常に高い走破性に驚かされる

1967年12月13日に退役。グレートブリテン島中部のノッティンガムシャー州ラディントンにある保管所へ送られ、2013年に英国人コレクターが購入している。

2年間の丁寧なレストアを経て、復活を果たした。4×4ブラインドより年式は新しく、ダッシュボードのレイアウトが僅かに異なる。メーターは、速度計と、アンペアと燃料計が一体の2枚だ。とはいえ、それ以外は共通する。

フロントガラスはなく、ドライバーの上半身は露出し、50km/hで走ることすら勇気がいる。ステアリングホイールは、挑戦的なほど曖昧だ。

乗り心地は、車重の重い4×4ブラインドの方が有利に思えるが、SASローバー Mk3の方がホイールベースは長く明確な違いはない。少なくとも、どちらもオンロードでは驚くほどしなやか。

全体的な印象としては、SASローバーの方が洗練度が高い。エンジンノイズは小さく、ボディ剛性も勝っている。

石灰質のオフロードへ挑むと、極めて高い走破性に驚かされる。ミネルバは、ランドローバーが備える能力もしっかり複製している。

黄色いレバーを押し下げて四輪駆動へ切り替え、赤いレバーを引いてローレンジに入れる。細かい砂の浮いた滑りやすい急斜面を難なく登り、下り坂でも安定している。

あやふやなステアリングも、不整地では安心感が高い。ただしセルフセンタリング性は低く、素早く切り戻す必要がある。最大トルクは13.9kg-mと細いものの、キビキビと軽くないボディを先へ進める。

場所を問わず優れた能力を発揮したはず

この2台が現地でどんな戦いへ挑んできたのか、今では想像するしかない。運用履歴は、機密にされている。非力でも機敏に走るから、場所を問わず優れた能力を発揮したことだろう。

少なくとも、不足ない火器を装備し、特殊部隊の頼もしい相棒になったのではないかと思う。こんなクルマの出番は、来ない方が望ましいとしても。

協力:グッドウッド、マーク・ゴールド氏、ジョナサン・ギル氏、ジョン・マストランジェロ氏、 ジュリアン・ショールハイファー氏

ランドローバー・シリーズ1がベースの2台のスペック

ランドローバー・シリーズ1 4x4 ゼネラルサービス SASローバー Mk3(1954~1957年/英国仕様)

英国価格:−ポンド(新車時)/10万ポンド(約1810万円)以下(現在)
生産数:10台
全長:3570mm
全幅:1550mm
全高:−mm
最高速度:−km/h
0-64km/h加速:24.4秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:2134kg
パワートレイン:直列4気筒1997cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:52ps/4000rpm
最大トルク:13.9kg-m/1500rpm
トランスミッション:4速マニュアル(四輪駆動)

ミネルバ・シリーズ1 4×4ブラインド・パラシュート偵察車(1952~1953年/欧州仕様)

英国価格:−ポンド(新車時)/3万ポンド(約543万円)以下(現在)
生産数:30~60台(予想)
全長:3350mm
全幅:1550mm
全高:−mm
最高速度:−km/h
0-64km/h加速:−秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:2284kg
パワートレイン:直列4気筒1997cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:52ps/4000rpm
最大トルク:13.9kg-m/1500rpm
トランスミッション:4速マニュアル(四輪駆動)

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みんなのコメント

1件
  • furima-jirosan
    この画像見て一瞬
    「ラットパトロール」を思い浮かべてしまいました…
    (アチラはジープでしたが)

    今でいう「テクニカル」のはしりともいえる武装車両ですね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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