人間、歳をとれば誰しも身体的な衰えは進むもの。免許証の返納を考える高齢者とまではいかなくとも、最近クルマの運転がツライ、ヒヤッっとする事が多いと思っている中高年ドライバーも多いのではないだろうか。
今回は、そんなの悩みを解決してくれるかもしれない、中高年ドライバーのためのクルマ選びのポイントにフォーカスしていこう。
「最近、クルマの運転がチョイしんどい…」体の衰えを感じたらチェックすべき愛車選びのポイント3選
文/井澤利昭、写真/トヨタ、日産、ホンダ、写真AC
あればやっぱり安心できる!? 高齢者だけのものではないクルマの安全装備
前走車がいる状況であっても、周辺をハイビームで照らすことができる先進ライト「アダプティブLEDヘッドライトシステム」を装備する日産・ルークスなど、近年は軽自動車でも安全装備が充実してきている(画像は日産ルークス「アダプティブLEDヘッドライトシステム」イメージ画像)
加齢に伴う身体能力低下は人それぞれであるものの、中高年ドライバーともなれば、その衰えがクルマの運転に影響してくることもあるだけに注意が必要だ。
特にとっさの際の反応速度の低下や、視野が狭くなる、夜に見えにくくなるといった視力の衰えなどは、突然割り込んできたクルマへの対応の遅れや、夜間や悪天候時での歩行者の見落としにつながりかねない。
そんな中高年ドライバーの強い味方となってくれるのが、事故を未然に防ぎ、万一の際もその被害を最小限に抑えてくれるクルマの安全装備だ。
レーダーやセンサーで前方の車両や歩行者を検出し、衝突の危険がある場合には警告やブレーキが作動する「自動ブレーキ」や、ハイビーム・ロービームの自動切り替えやハンドル操作に合わせた照射範囲の制御といった、暗い夜道での視界を確保する「先進ライト」などは、テレビのCMや雑誌の記事などでもよく取り上げられる安全装備の代表的なものだ。
これらの安全装備を備えたクルマは、75歳以上の高齢者が運転することを想定した「セーフティ・サポートカー」、通称「サポカー」とも呼ばれ、官民連携しての普及や啓発が進められているだけに、最近ではベーシックなグレードの車種でも多く見られるようになってきた。
事故防止や安全運転に大きく寄与する機能が充実しているこれらのクルマは決して高齢者だけのものではなく、中高年ドライバーにとっても魅力的。愛車選びの候補としても十分視野に入ってくるはずだ。
高速道路を使ったロングドライブにお薦めな、先進的な運転支援システム
Honda SENSING 360に追加された新装備「ハンズオフ機能付高度車線内運転支援機能」は、ドライバーがハンドルから手を放しても、車速や車線内の走行を維持できるよう支援するシステム。高速道路を使ったロングドライブでの負担を軽減してくれる装備だ
若い頃と比べてスタミナがなく、疲れやすいというのも中高年ドライバーの特徴のひとつ。単調な道が続く高速道路を使った長時間のドライブなどでは特に集中が続かず、注意力が散漫になってしまう。
運転に集中していないこのような状態では、渋滞などで前走車が急減速したときや、突然の車線変更で割り込んできたクルマへの対応が遅れ、追突などの事故につながる可能性もありえる。
そんな危険を回避できる機能として注目されているのが、高速道路で先行するクルマに一定の間隔で追従し、渋滞などで前走車が止まった場合も、それに合わせて停止と発進を自動的に行ってくれる「全車速追従クルーズコントロール」や、車線の中央を走るようにハンドルアシストまでしてくれる「車線維持支援装置」といった運転支援システムだ。
これらはあくまで、高速道路での運転の際にドライバーをサポートしてくれる機能ではあるものの、アクセスやブレーキ操作の手間が大幅に軽減されるだけに、中高年ドライバーとってその恩恵はかなり大きい。
一般的なオートクルーズなどと比較してより先進的な機能を持つ運転支援システムは、上位グレードなど一部車種にのみに装備される場合や、対応する車種であってもオプション設定となっていることが多いものの、一度使うとその快適さと便利さの虜になることは間違いない。
乗り降りや運転しやすいクルマに乗り換えれば、中高年ドライバーの悩みも解決!?
ホンダ・N-VANやダイハツ・タントのように、乗り降りの際に邪魔になるセンターピラーがないピラーレスの車種であれば、高齢や体が不自由な家族のいる中高年ドライバーにも安心。(画像はN-VAN)
自分が思っているほど脚が上がっておらず、ちょっとした段差でつまづいてしまうといった足腰の衰えは、思いのほかクルマの乗り降りにも影響するもの。
加齢によって日常的なクルマの乗り降りが億劫になったり、脚がからんで転んでしまうといった危険を感じるようであれば、より乗り降りがしやすいクルマへの乗り換えを視野に入れてもいいだろう。
シートの位置が低いスポーティなモデルなどはやはり乗り降りがしづらいため、足腰に不安があるならミニバンやトールワゴンといったシート位置がある程度高く設定されているモデルがお薦め。
スライドドアや身体を支えてくれるアシストグリップを備えていたり、低床フロアのモデルであればより乗り降りがしやすく、加えて着座位置が高くなることで周辺への視認性も向上するため、安全性もアップするという利点もある。
また、狭い道での走りやすい取り回しの良さも、視力の衰えなどによって距離感が変わってくる中高年ドライバーには重要なポイント。
車格が大きいクルマは周辺の障害物や人などと接触しやすく、狭い駐車場では駐車のための切り返しが多くなるため、小回りの利くコンパクトなクルマのほうが、精神的にも体力的にもラクになる。
とはいえ、子育てが終わり、年金生活の高齢者と比較して経済的にも余裕のある中高年ドライバーのクルマ選びは「自分が本当に乗りたいクルマ」へと乗り換えるチャンスであるともいえる。身体への負担や安全性ももちろん重要ではあるが、「このクルマに乗りたい」という胸のトキメキも加味したうえでベストな選択をしたいものだ。
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無理して他者を巻き込む事故起こしてからじゃ遅い